青火/花火
一日一火神くん。
青火で、花火見に行く二人。
7/21分。
- 花火 -
「火神くん、青峰君と花火見に行くらしいですね」
なんでこいつが、俺と青峰の行くところを知ってるんだろう?と、考えて、言葉が出てこなかった。
部活に向かう途中の道で黒子を見かけたから「おはよう」と、声をかけて、挨拶の返事でなく、開口一番に言われた。
「あー、まぁ、花火行くよ。今夜××で祭りあるだろ。本当は暑いし、露天の飯って祭りって感じで美味しいけど、ちょっと高いから沢山食べれないから、俺ん家で飯食ってから行く」
なんで知ってんだ?っと、一緒に疑問も投げると、黒子は「僕には優秀な情報口がありましてね。それに、浮かれた青峰君からも直接言われました。”今夜は花火の前に火神ん家で飯食ってから行くから、バスケしたいって、ダダ捏ねても家に帰すように”と」
「なんだ、直接聞いたんなら、わざわざ俺に聞かなくても」
「いえ、僕は、君に一言言っておこうと思いまして」
「・・・?なんだよ?」
海外と日本で花火の作法でも違いがあるのだろうか?打ち上げられた花火を見てキレイって、感じるぐらいしか花火の楽しみ方は知らない。首をかしげて、黒子との次の言葉を待つ。
「オオカミには気をつけろ、ですよ」
「は?オオカミ?」
「・・・君に例えは通じませんでしたかね。直球で言うなら、帰り道の青峰君ですよ。送り狼ってやつです」
「花火終ったら青峰も俺ん家に帰るんだけど?」
「じゃぁ、帰り狼でイイです。君は、オオカミ青峰を家に招くということを十分に注意してくださいね」
黒子の言うことは、時々すごく難しい。俺は、オオカミ・・・・っと、重々しく口にし、言われたことをよくわからないなりに呑みこんでみた。
青峰って、オオカミだったんだな。どうやったら人間がオオカミになれるんだろうなぁ。っと、考えても答えは出てこないし、今夜本人に聞いてみればいいかっと、俺は、すぐに、今からやる部活の事に頭を切り替えた。
夕方になり、青峰も部活を終え、いったん家に帰り、着替え等を済ませた後に、俺の家にやってきた。慣れたもので、迎え入れた俺の家の住人みたいに、普通に手洗いうがいをして、キッチンにやってきた。
「旨そうな匂い・・・今日、何食わしてくれんの?」と、俺の肩越しに、火にかけている鍋の中を覗いてくる。「夏野菜のスープと、焼きそば。お祭りで食べれないから、祭りっぽいの食べようと思って、焼きそばだぞ。あと、サラダ冷蔵庫に冷えてるから持ってって。お茶も。」
「へいへい」と、俺の指示通りに、青峰がキッチンとリビングを行き来する。よそったスープ皿も持って行き、最後に俺が焼きそばを持って、リビングへ。
指示の無いグラスや、箸もキチッと並んでいる。「ありがとな」「ん、」と、やり取りをして、ご飯を食べる。
「おかわり有るぞ」と、言えば、「ん、おかわり」と、皿が寄せられるので、「暑さで食欲とかやられてないな、よしよし」と、言うと「親か!」と、言われた。
俺の飯をうまいうまいと食べてくれる姿は、とても嬉しいし、誰かと一緒に食べるのも楽しい。うまいなっと、焼きそばを口に入れた時に、黒子の言葉を思い出した。ごくりと飲み込んでから、
「なぁ、お前ってオオカミになれんの?」
それとも、オオカミの物まねが得意とか??、遠吠えを真似る青峰を想像する。まぁ、野性っぽい雰囲気のこいつには似合ってるかも。
「は?なれるわけねぇだろ。俺は人間だぞ」
「だよな。そうだよなぁー」
頭の中に、まだ、あおーんっと、遠吠えをする青峰が居るが、おかしな考えに自分でも笑ってしまう。だよなぁっと、話題はすぐに別のものに変わっていった。
食事が終わり、片付けも終わったので、そろそろ祭りへ向かうかっということになった。陽は落ち着いて、日差しも少しだけ暑さを緩めたころ、サンダルをひっかけて近くの祭りへ歩く。
自然と、「今日も暑かったなぁー」っと、先ほどまでクーラーのついた部屋に居たのを恋しく思った。
青峰も首に掛けたタオルで汗をぬぐいながら、「夏だしな。ついたら冷たいものでも買おうぜ。それぐらいは入るだろ?」
「バカだな。入るに決まってる。逆にお前の方が、入んないんじゃねぇの?焼きそばメチャクチャ食ってたし」
「大丈夫だよ、別腹、別腹。なんなら、焼きとうもろこしとか食いたいけど、そんな小遣いもないしなぁ」
尻ポケットに入っている財布の中身を考えると、確かにっと、思った。夕食を食べてきたので、飯分は浮いたとしても、色々買い食いしていたら、なかなか高くつく。
「まぁ、冷たいの食べて、綺麗な花火見てクーラーある部屋に帰ろうぜ」
「だなー」
会場に到着し、かき氷を買った。赤色と青色の。食べながら、花火を見る場所を探す、暑いから溶けるのも早い。このあたりかなっと、腰を下ろし、プラスチックの容器の中を見ると、結構溶けてしまっていた。慌てて食べると、頭が痛く、しかめられた顔にお互いに笑い合って、涼んだところで花火がドーンっと打ちあがった。
夜空にパッと明るく咲く火の花。周りの観客も、キレイー!っと、空を見上げる。
「キレイだな」っと、横目に見ると、何故か、俺を見ていた青峰と目が合う。
「花火見ろよ」
「バカ、お前なんか見てないわ」
「へー」っと、返して、次々に上がる花火を見上げた。
派手に打ちあがった花火も、儚く消えていき、最後の花火がゆらゆらと消えて行った。
「終わったなぁ」と、周りも一斉にぞろぞろと、再度出店の方へ向かうもの、帰り道をたどるものと道がごった返し、波に乗るように、俺たちは帰り道へと、足を向けた。
「キレイだったな」ポツリと、青峰が言った。
「おう」
「来年は、浴衣とか着て来いよ」
「面倒だし、着かたもわかんねぇ」
「俺も」
歩いていくうちに、まばらに人が減っていき、もう、角を曲がれば俺の家の所に来たところで、引き留められた。
「青峰?」と、声をかけ、どうしたんだ?と、声をかけると、「目、つぶって」と言われたので、目をつぶると、近づく気配に、キスされるのかなっと、考えていると、汗をかいた前髪にされた。
いくら待っても、唇にされることはなく。
「えっ」と、思い、目を開けると、俺の手を握ったまま、ひどく照れている青峰を目にした。ウソだろこの流れで。そう思って、自分の手を握ったままの青峰を、手を引いて引き寄せ、空いた手で青峰の顔を固定し、チュッと、唇のキスを落としてやった。
「なっ!?」っと、驚いて状況が読めていない青峰が、目を真ん丸にあけて、呆けている。遅れて照れ始めた。今ここが明るい場所だったら、赤くなった顔が見えたのかなぁっと、考えて、「家に帰ろう。シャワー浴びたい」と、言った。
「えっ、えっ、しゃ、シャワー?!」
「お前も汗かいただろ」
あわあわと、変に照れている青峰を引っ張り、家に帰った。
翌日、また部活へ行く途中で黒子にあった。
「おはよ、黒子!」
「おはようございます、昨日は大丈夫でしたか?」と、聞かれたので、
「花火見て、でこにキスされたから、口にキスしてやった」
「そうですか、無事で何よりです。しかし、オオカミどころか、子犬でしたか」
「へー、青峰、子犬にはなれんのか?オオカミは無理って言ってたけど」
「・・・・いえ、大丈夫です。オオカミとか子犬とかは無視していただいて」
「・・・?そうか?」
「それより、今日も部活暑そうですね、水分しっかり取らなくちゃ、ですね」
「だな、頑張ろうぜ」っと、黒子と、手を合わせた。
end.
初心峰
青火で、花火見に行く二人。
7/21分。
- 花火 -
「火神くん、青峰君と花火見に行くらしいですね」
なんでこいつが、俺と青峰の行くところを知ってるんだろう?と、考えて、言葉が出てこなかった。
部活に向かう途中の道で黒子を見かけたから「おはよう」と、声をかけて、挨拶の返事でなく、開口一番に言われた。
「あー、まぁ、花火行くよ。今夜××で祭りあるだろ。本当は暑いし、露天の飯って祭りって感じで美味しいけど、ちょっと高いから沢山食べれないから、俺ん家で飯食ってから行く」
なんで知ってんだ?っと、一緒に疑問も投げると、黒子は「僕には優秀な情報口がありましてね。それに、浮かれた青峰君からも直接言われました。”今夜は花火の前に火神ん家で飯食ってから行くから、バスケしたいって、ダダ捏ねても家に帰すように”と」
「なんだ、直接聞いたんなら、わざわざ俺に聞かなくても」
「いえ、僕は、君に一言言っておこうと思いまして」
「・・・?なんだよ?」
海外と日本で花火の作法でも違いがあるのだろうか?打ち上げられた花火を見てキレイって、感じるぐらいしか花火の楽しみ方は知らない。首をかしげて、黒子との次の言葉を待つ。
「オオカミには気をつけろ、ですよ」
「は?オオカミ?」
「・・・君に例えは通じませんでしたかね。直球で言うなら、帰り道の青峰君ですよ。送り狼ってやつです」
「花火終ったら青峰も俺ん家に帰るんだけど?」
「じゃぁ、帰り狼でイイです。君は、オオカミ青峰を家に招くということを十分に注意してくださいね」
黒子の言うことは、時々すごく難しい。俺は、オオカミ・・・・っと、重々しく口にし、言われたことをよくわからないなりに呑みこんでみた。
青峰って、オオカミだったんだな。どうやったら人間がオオカミになれるんだろうなぁ。っと、考えても答えは出てこないし、今夜本人に聞いてみればいいかっと、俺は、すぐに、今からやる部活の事に頭を切り替えた。
夕方になり、青峰も部活を終え、いったん家に帰り、着替え等を済ませた後に、俺の家にやってきた。慣れたもので、迎え入れた俺の家の住人みたいに、普通に手洗いうがいをして、キッチンにやってきた。
「旨そうな匂い・・・今日、何食わしてくれんの?」と、俺の肩越しに、火にかけている鍋の中を覗いてくる。「夏野菜のスープと、焼きそば。お祭りで食べれないから、祭りっぽいの食べようと思って、焼きそばだぞ。あと、サラダ冷蔵庫に冷えてるから持ってって。お茶も。」
「へいへい」と、俺の指示通りに、青峰がキッチンとリビングを行き来する。よそったスープ皿も持って行き、最後に俺が焼きそばを持って、リビングへ。
指示の無いグラスや、箸もキチッと並んでいる。「ありがとな」「ん、」と、やり取りをして、ご飯を食べる。
「おかわり有るぞ」と、言えば、「ん、おかわり」と、皿が寄せられるので、「暑さで食欲とかやられてないな、よしよし」と、言うと「親か!」と、言われた。
俺の飯をうまいうまいと食べてくれる姿は、とても嬉しいし、誰かと一緒に食べるのも楽しい。うまいなっと、焼きそばを口に入れた時に、黒子の言葉を思い出した。ごくりと飲み込んでから、
「なぁ、お前ってオオカミになれんの?」
それとも、オオカミの物まねが得意とか??、遠吠えを真似る青峰を想像する。まぁ、野性っぽい雰囲気のこいつには似合ってるかも。
「は?なれるわけねぇだろ。俺は人間だぞ」
「だよな。そうだよなぁー」
頭の中に、まだ、あおーんっと、遠吠えをする青峰が居るが、おかしな考えに自分でも笑ってしまう。だよなぁっと、話題はすぐに別のものに変わっていった。
食事が終わり、片付けも終わったので、そろそろ祭りへ向かうかっということになった。陽は落ち着いて、日差しも少しだけ暑さを緩めたころ、サンダルをひっかけて近くの祭りへ歩く。
自然と、「今日も暑かったなぁー」っと、先ほどまでクーラーのついた部屋に居たのを恋しく思った。
青峰も首に掛けたタオルで汗をぬぐいながら、「夏だしな。ついたら冷たいものでも買おうぜ。それぐらいは入るだろ?」
「バカだな。入るに決まってる。逆にお前の方が、入んないんじゃねぇの?焼きそばメチャクチャ食ってたし」
「大丈夫だよ、別腹、別腹。なんなら、焼きとうもろこしとか食いたいけど、そんな小遣いもないしなぁ」
尻ポケットに入っている財布の中身を考えると、確かにっと、思った。夕食を食べてきたので、飯分は浮いたとしても、色々買い食いしていたら、なかなか高くつく。
「まぁ、冷たいの食べて、綺麗な花火見てクーラーある部屋に帰ろうぜ」
「だなー」
会場に到着し、かき氷を買った。赤色と青色の。食べながら、花火を見る場所を探す、暑いから溶けるのも早い。このあたりかなっと、腰を下ろし、プラスチックの容器の中を見ると、結構溶けてしまっていた。慌てて食べると、頭が痛く、しかめられた顔にお互いに笑い合って、涼んだところで花火がドーンっと打ちあがった。
夜空にパッと明るく咲く火の花。周りの観客も、キレイー!っと、空を見上げる。
「キレイだな」っと、横目に見ると、何故か、俺を見ていた青峰と目が合う。
「花火見ろよ」
「バカ、お前なんか見てないわ」
「へー」っと、返して、次々に上がる花火を見上げた。
派手に打ちあがった花火も、儚く消えていき、最後の花火がゆらゆらと消えて行った。
「終わったなぁ」と、周りも一斉にぞろぞろと、再度出店の方へ向かうもの、帰り道をたどるものと道がごった返し、波に乗るように、俺たちは帰り道へと、足を向けた。
「キレイだったな」ポツリと、青峰が言った。
「おう」
「来年は、浴衣とか着て来いよ」
「面倒だし、着かたもわかんねぇ」
「俺も」
歩いていくうちに、まばらに人が減っていき、もう、角を曲がれば俺の家の所に来たところで、引き留められた。
「青峰?」と、声をかけ、どうしたんだ?と、声をかけると、「目、つぶって」と言われたので、目をつぶると、近づく気配に、キスされるのかなっと、考えていると、汗をかいた前髪にされた。
いくら待っても、唇にされることはなく。
「えっ」と、思い、目を開けると、俺の手を握ったまま、ひどく照れている青峰を目にした。ウソだろこの流れで。そう思って、自分の手を握ったままの青峰を、手を引いて引き寄せ、空いた手で青峰の顔を固定し、チュッと、唇のキスを落としてやった。
「なっ!?」っと、驚いて状況が読めていない青峰が、目を真ん丸にあけて、呆けている。遅れて照れ始めた。今ここが明るい場所だったら、赤くなった顔が見えたのかなぁっと、考えて、「家に帰ろう。シャワー浴びたい」と、言った。
「えっ、えっ、しゃ、シャワー?!」
「お前も汗かいただろ」
あわあわと、変に照れている青峰を引っ張り、家に帰った。
翌日、また部活へ行く途中で黒子にあった。
「おはよ、黒子!」
「おはようございます、昨日は大丈夫でしたか?」と、聞かれたので、
「花火見て、でこにキスされたから、口にキスしてやった」
「そうですか、無事で何よりです。しかし、オオカミどころか、子犬でしたか」
「へー、青峰、子犬にはなれんのか?オオカミは無理って言ってたけど」
「・・・・いえ、大丈夫です。オオカミとか子犬とかは無視していただいて」
「・・・?そうか?」
「それより、今日も部活暑そうですね、水分しっかり取らなくちゃ、ですね」
「だな、頑張ろうぜ」っと、黒子と、手を合わせた。
end.
初心峰
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緑火/避暑地
一日一火神くん。
緑火で、避暑地に行く二人。
場所名は書いてませんが、土地の感覚とかないので、自分の行ったことのあるところです。
7/20分。
- 避暑地 -
緑間が暑すぎるのだよっと、電話をしてきた。
『明日、朝6時10分に××駅集合なのだよ』
急な約束の取付け方に、驚いた。折角の夏休みに入ったというのに、連日の猛暑で、部活は休みが続く。涼しい室内で筋トレぐらいしかできない。ストバスなんて行っても、熱中症で倒れてしまいそうだし、とても怖い状態。
体調を悪くして長くバスケが出来ないことや、自分でもこんな暑い中に集中して運動すればぶっ倒れるだろうことは、容易に想像がついた。
そろそろ、身体も鈍ってくるだろうなぁっと、考えているところに、恋人である緑間からの電話だった。
俺たちは、付き合っている割に、お互いに一番はバスケという考えで、あまり恋人らしい時間はそう過ごしていない。一緒に居る時も殆どが、他の連中を交えてのバスケの時間が多い。
そもそも、恋人とはどういったものなのか、俺には想像もつかないし、緑間からの告白も「お前のことが気になってムカつくのだよ」っと、喧嘩したいのか?っと思うような言葉で、最初は告白とは思ってもみなかったぐらいだ。
とりあえずは、俺も、ストイックな緑間の事が、好きだし、もともと、物静かで落ち着きがあり、一緒に居て楽なので、一緒に過ごすの気に入ってる。何より、顔もキレイだ。
黒子に言われたけど、俺は結構面食いらしい。
「氷室さんも、アレックスさんも顔立ちがとてもキレイですよね。君、面食いですよね」
「・・・?そうか?おれ、お前の顔も好きだぜ?」
「・・・っ、火神くん、君って人は・・・」
頬を少し染めて、ジロリと見あげられた顔は、綺麗だった。
「黒子って、目が真ん丸だし、イケメンじゃね?」
「・・・・そうですか、ありがとうございます。緑間君も大変でしょうね」
はぁっと、ワザとらしく溜息をついてみせた黒子に、俺は一言も緑間と恋人になったなんて報告してないのに、こいつには何故かバレていた。そして、旧来からの友人である緑間をたいそう憐れんで、俺によくわからない忠告をした。
「緑間君の顔を褒めない事」
なんでだろうなぁ・・・。忠告を受けてから初めて緑間と顔を合わせる。
ほぼ始発の電車に乗り、約束の場所をめざし、俺は電車に乗っている。電話が切れた後、注意事項と持ち物の書いたメールが届いたので、俺は、いそいそと、準備をし、風呂に入りストレッチをし、明日の早起きの為に、すぐに眠りについた。
目覚ましの鳴る時間に、キッチリ眼を覚まし、朝ごはんもしっかりと食べて、緑間に言われた通りに、キャップをかぶり、靴を履いて家を出た。
この所、バスケの時以外は、暑いのでサンダルで出歩くことが多かったので、靴と指定しているということは、歩き回るか、何か運動みたいなことが予定されているのかもしれない。
背負ったリュックの中には、連絡された通り、タオルと、着替えも入っていたので、何があるかわからないが、とても楽しみだ。久々に緑間の顔も見れる事だ。朝早く眠いよりも、ワクワクが勝って、俺の足取りは軽い。
早朝なのに、すでに日差しは熱く、汗をかいていても、気にならない。
時間より、少し早く集合場所についたが、緑間は既に待っていた。
「おはよう、待たせたか?わりぃ」と、声をかけると、「いや、時間通りだ。行くぞ」と、歩き始めたので、遅れないように後を付いていく。
迷いなく進んでいく緑間も、小ぶりのリュックを背負い、日除けの帽子をかぶっている。
普段あまり乗らないホームへの改札で、先に手配してあったのか、財布から硬い切符を取り出し、手渡された。
「今日も熱いな、どこ行くんだ?」
チケットの上部には、向かう先の駅名が書いてあるが、見たことのない所だった。得と印刷されているので、セット割りみたいな感じかな?っと考えていると、「往復分と、向こうでのバス料金がセットになっているから、無くさずに管理するのだよ」
「わぁってるよ、チケットありがとな。あとでお金払う」
「行くのだよ」
スッと、改札をくぐり、ホームを下りていくと、ちょうど乗る電車が停車していた。この駅がスタートだと教えてくれて、早朝と言うこともあるのか、夏休みにしては人もまばらで、椅子も空いていたので、二人並んで座ることができた。
隣り合ったお互いのあいた距離感。
「今から、一時間半ほど電車に乗って、乗り換えをして、そのあと、バスに乗って目的地に着く。お前は寝ていてもいいぞ」
と、言われた。「お前は行ったことあるのか?」と、問うと、「ないのだよ」と、返ってきた。
ふーんっと、返事をしたら、ちょうど、電車が動き出し、揺られ揺られ、外の景色を見たり、外を見るふりをして緑間の顔を盗み見た。もともと、お互い口数の多い方じゃないので、黙って電車での時間を過ごした。途中の駅で人が乗り込んできて、椅子が埋まってきたので、初め開いていた距離感が埋まったのには、少しドキドキした。
「もう少しこっちへ来るのだよ」と、引き寄せられて、ぶつかる肩が冷房が効いている車内で少し熱く感じた。
目的の駅で乗り換えをして、バスに乗ってと、順調に進んでいく。全く見たことのない駅名と、周りの風景。緑が多く、家よりも気の方が多いようだ。同じ所へ向かう人たちも、同じような格好をしている。
持ってきたペットボトルのお茶を飲み、車内から出た時の熱風と、移動中に上がった日差しが暑く肌を焼く。でも、都会よりは、暑くないように感じる。バスに乗っている間、目的地の紹介がされる。どうやら滝がある所らしい。
バス停で、ぞろぞろと人がおり、数件のお土産屋と、食事処、それから、奥に宿泊施設が一軒と、他は自然ばかりの所、子供が遊べる自然教室なんかもあると、看板が立ててある。年期が入っていて色あせた看板や、旗が立っている。
緑間は、帰りのバスの時間を見て、「15時には戻りのバス乗るぞ」と、教えてくれた。
日差しが茂った葉で仄かにやさしく、日陰も多い。何より、横に流れる川があるせいか、涼しく感じる。ハイキングして風景を楽しみながらいくつもの滝を見て、マイナスイオンを浴びる人気の場所らしい。
バス停から10分ほど歩くと土産屋の横でサツマイモのタイヤキみたいなものを販売していたので、上る前に軽く腹に入れ、入山料を払う。入口にこの川に生息するオオサンショウウオのちょっとした施設があり、水の中にゆったりと動くそいつ等を見た。
水槽を覗き込みながら「何処に目がついてんのかわかんねぇな」と、言うと、笑われた。
案内板を見て、水分は多くとるように言われて、歩き出す。
整備された道の横に川が流れていて、大小のさまざまな滝を見る。もはや滝なのか?っと思うような小さなものもあったが、どれも、キラキラと綺麗で、涼しい。30分も歩いてないが幾つも滝を見て、特に大きな滝で足を止めて涼む。何人かも足を止めて涼んでいる。
見上げていると、水しぶきがかかったと、緑間がメガネをふいている。横に並んでみていた俺は、「お前顔綺麗だよな」と、声に出していた。
少しムッとした表情が俺を見る。「見るな」と、大きな手が顔を覆うように伸ばされて、実際ボールみたいに掴まれた。照れている顔も見たいのに。それと、いくら涼しいとはいえ、汗をかいているのを掴まれている。「やめろよ」と、払いのけると、「行くぞ」と、歩き出す。
もっと、顔が見たいなぁっと、思いながら、目の前の背中を見る。
沢山の人と擦れ違い挨拶をして登って行く。途中、休憩所で、持ってきたおにぎりを食べる。ゴミをキッチリカバンに詰めて、脇に設置された川の水が出る水道で顔を洗う。とても冷たくて気持ちいい。
また眼鏡を外し、タオルで顔をふいている緑間を見る。水分もこまめに取り、風景を楽しみながら登って行く。バスケとは違う満足感。登りきったことから達成感。
下るのは、上るときより少し早足になった。基本的にずっと、緑間の背中を見て過ごしたし、会話も少なかった。山を下り、バス停近くの宿泊施設が、泊まらなくても、温泉に入れるらしいので、汗を流しに入った。
眼鏡を外し、目が見えない緑間を先導し、見えないのをイイことに、じっくりと相手の顔を見た。
「やっぱ、いい顔してんな」
「・・・お前は、俺の顔だけが好きなのか?」と、不満なのか、それとも、見えなくて目を細めているからなのか、睨むように俺を見てくるの。
「いや、顔も好きだけど、お前自体好きだぞ」
「・・・そうか」
温泉だからじゃなく、赤くなった顔を隠すように、「熱いのだ、冷たい所に連れていけ」と、伸ばされた手を握り、水ぶろまで誘導した。
とてもイイ夏の思い出が出来た。
end.
ダラダラと、意味なく長くなって、最後駆け足で端折りまくって、変な感じになっちゃいましたが、緑間君の顔が好きな火神くん好きです。
緑火で、避暑地に行く二人。
場所名は書いてませんが、土地の感覚とかないので、自分の行ったことのあるところです。
7/20分。
- 避暑地 -
緑間が暑すぎるのだよっと、電話をしてきた。
『明日、朝6時10分に××駅集合なのだよ』
急な約束の取付け方に、驚いた。折角の夏休みに入ったというのに、連日の猛暑で、部活は休みが続く。涼しい室内で筋トレぐらいしかできない。ストバスなんて行っても、熱中症で倒れてしまいそうだし、とても怖い状態。
体調を悪くして長くバスケが出来ないことや、自分でもこんな暑い中に集中して運動すればぶっ倒れるだろうことは、容易に想像がついた。
そろそろ、身体も鈍ってくるだろうなぁっと、考えているところに、恋人である緑間からの電話だった。
俺たちは、付き合っている割に、お互いに一番はバスケという考えで、あまり恋人らしい時間はそう過ごしていない。一緒に居る時も殆どが、他の連中を交えてのバスケの時間が多い。
そもそも、恋人とはどういったものなのか、俺には想像もつかないし、緑間からの告白も「お前のことが気になってムカつくのだよ」っと、喧嘩したいのか?っと思うような言葉で、最初は告白とは思ってもみなかったぐらいだ。
とりあえずは、俺も、ストイックな緑間の事が、好きだし、もともと、物静かで落ち着きがあり、一緒に居て楽なので、一緒に過ごすの気に入ってる。何より、顔もキレイだ。
黒子に言われたけど、俺は結構面食いらしい。
「氷室さんも、アレックスさんも顔立ちがとてもキレイですよね。君、面食いですよね」
「・・・?そうか?おれ、お前の顔も好きだぜ?」
「・・・っ、火神くん、君って人は・・・」
頬を少し染めて、ジロリと見あげられた顔は、綺麗だった。
「黒子って、目が真ん丸だし、イケメンじゃね?」
「・・・・そうですか、ありがとうございます。緑間君も大変でしょうね」
はぁっと、ワザとらしく溜息をついてみせた黒子に、俺は一言も緑間と恋人になったなんて報告してないのに、こいつには何故かバレていた。そして、旧来からの友人である緑間をたいそう憐れんで、俺によくわからない忠告をした。
「緑間君の顔を褒めない事」
なんでだろうなぁ・・・。忠告を受けてから初めて緑間と顔を合わせる。
ほぼ始発の電車に乗り、約束の場所をめざし、俺は電車に乗っている。電話が切れた後、注意事項と持ち物の書いたメールが届いたので、俺は、いそいそと、準備をし、風呂に入りストレッチをし、明日の早起きの為に、すぐに眠りについた。
目覚ましの鳴る時間に、キッチリ眼を覚まし、朝ごはんもしっかりと食べて、緑間に言われた通りに、キャップをかぶり、靴を履いて家を出た。
この所、バスケの時以外は、暑いのでサンダルで出歩くことが多かったので、靴と指定しているということは、歩き回るか、何か運動みたいなことが予定されているのかもしれない。
背負ったリュックの中には、連絡された通り、タオルと、着替えも入っていたので、何があるかわからないが、とても楽しみだ。久々に緑間の顔も見れる事だ。朝早く眠いよりも、ワクワクが勝って、俺の足取りは軽い。
早朝なのに、すでに日差しは熱く、汗をかいていても、気にならない。
時間より、少し早く集合場所についたが、緑間は既に待っていた。
「おはよう、待たせたか?わりぃ」と、声をかけると、「いや、時間通りだ。行くぞ」と、歩き始めたので、遅れないように後を付いていく。
迷いなく進んでいく緑間も、小ぶりのリュックを背負い、日除けの帽子をかぶっている。
普段あまり乗らないホームへの改札で、先に手配してあったのか、財布から硬い切符を取り出し、手渡された。
「今日も熱いな、どこ行くんだ?」
チケットの上部には、向かう先の駅名が書いてあるが、見たことのない所だった。得と印刷されているので、セット割りみたいな感じかな?っと考えていると、「往復分と、向こうでのバス料金がセットになっているから、無くさずに管理するのだよ」
「わぁってるよ、チケットありがとな。あとでお金払う」
「行くのだよ」
スッと、改札をくぐり、ホームを下りていくと、ちょうど乗る電車が停車していた。この駅がスタートだと教えてくれて、早朝と言うこともあるのか、夏休みにしては人もまばらで、椅子も空いていたので、二人並んで座ることができた。
隣り合ったお互いのあいた距離感。
「今から、一時間半ほど電車に乗って、乗り換えをして、そのあと、バスに乗って目的地に着く。お前は寝ていてもいいぞ」
と、言われた。「お前は行ったことあるのか?」と、問うと、「ないのだよ」と、返ってきた。
ふーんっと、返事をしたら、ちょうど、電車が動き出し、揺られ揺られ、外の景色を見たり、外を見るふりをして緑間の顔を盗み見た。もともと、お互い口数の多い方じゃないので、黙って電車での時間を過ごした。途中の駅で人が乗り込んできて、椅子が埋まってきたので、初め開いていた距離感が埋まったのには、少しドキドキした。
「もう少しこっちへ来るのだよ」と、引き寄せられて、ぶつかる肩が冷房が効いている車内で少し熱く感じた。
目的の駅で乗り換えをして、バスに乗ってと、順調に進んでいく。全く見たことのない駅名と、周りの風景。緑が多く、家よりも気の方が多いようだ。同じ所へ向かう人たちも、同じような格好をしている。
持ってきたペットボトルのお茶を飲み、車内から出た時の熱風と、移動中に上がった日差しが暑く肌を焼く。でも、都会よりは、暑くないように感じる。バスに乗っている間、目的地の紹介がされる。どうやら滝がある所らしい。
バス停で、ぞろぞろと人がおり、数件のお土産屋と、食事処、それから、奥に宿泊施設が一軒と、他は自然ばかりの所、子供が遊べる自然教室なんかもあると、看板が立ててある。年期が入っていて色あせた看板や、旗が立っている。
緑間は、帰りのバスの時間を見て、「15時には戻りのバス乗るぞ」と、教えてくれた。
日差しが茂った葉で仄かにやさしく、日陰も多い。何より、横に流れる川があるせいか、涼しく感じる。ハイキングして風景を楽しみながらいくつもの滝を見て、マイナスイオンを浴びる人気の場所らしい。
バス停から10分ほど歩くと土産屋の横でサツマイモのタイヤキみたいなものを販売していたので、上る前に軽く腹に入れ、入山料を払う。入口にこの川に生息するオオサンショウウオのちょっとした施設があり、水の中にゆったりと動くそいつ等を見た。
水槽を覗き込みながら「何処に目がついてんのかわかんねぇな」と、言うと、笑われた。
案内板を見て、水分は多くとるように言われて、歩き出す。
整備された道の横に川が流れていて、大小のさまざまな滝を見る。もはや滝なのか?っと思うような小さなものもあったが、どれも、キラキラと綺麗で、涼しい。30分も歩いてないが幾つも滝を見て、特に大きな滝で足を止めて涼む。何人かも足を止めて涼んでいる。
見上げていると、水しぶきがかかったと、緑間がメガネをふいている。横に並んでみていた俺は、「お前顔綺麗だよな」と、声に出していた。
少しムッとした表情が俺を見る。「見るな」と、大きな手が顔を覆うように伸ばされて、実際ボールみたいに掴まれた。照れている顔も見たいのに。それと、いくら涼しいとはいえ、汗をかいているのを掴まれている。「やめろよ」と、払いのけると、「行くぞ」と、歩き出す。
もっと、顔が見たいなぁっと、思いながら、目の前の背中を見る。
沢山の人と擦れ違い挨拶をして登って行く。途中、休憩所で、持ってきたおにぎりを食べる。ゴミをキッチリカバンに詰めて、脇に設置された川の水が出る水道で顔を洗う。とても冷たくて気持ちいい。
また眼鏡を外し、タオルで顔をふいている緑間を見る。水分もこまめに取り、風景を楽しみながら登って行く。バスケとは違う満足感。登りきったことから達成感。
下るのは、上るときより少し早足になった。基本的にずっと、緑間の背中を見て過ごしたし、会話も少なかった。山を下り、バス停近くの宿泊施設が、泊まらなくても、温泉に入れるらしいので、汗を流しに入った。
眼鏡を外し、目が見えない緑間を先導し、見えないのをイイことに、じっくりと相手の顔を見た。
「やっぱ、いい顔してんな」
「・・・お前は、俺の顔だけが好きなのか?」と、不満なのか、それとも、見えなくて目を細めているからなのか、睨むように俺を見てくるの。
「いや、顔も好きだけど、お前自体好きだぞ」
「・・・そうか」
温泉だからじゃなく、赤くなった顔を隠すように、「熱いのだ、冷たい所に連れていけ」と、伸ばされた手を握り、水ぶろまで誘導した。
とてもイイ夏の思い出が出来た。
end.
ダラダラと、意味なく長くなって、最後駆け足で端折りまくって、変な感じになっちゃいましたが、緑間君の顔が好きな火神くん好きです。
黄火/お洒落
一日一火神くん。
黄火で、お買いものデートする二人。
7/19分。
- お洒落 -
火神っちは、持ってるものはイイのに、適当に黒っぽく地味な色の服を選びがちだ。
もっともっと、お洒落をしてほしい。俺の恋人、こんなにも魅力的ですよって、出来る限りのアピールをしていきたい。もっともっと見てほしい。
街を歩いていると、もちろん俺を振り返る人はいるけど、隣に居る彼にだって、振り返っても良いレベルの俺が惚れた人なんだから。
とある情報網から(出所はお察しの通り)、俺は、火神っちが明後日部活の無いフリーの休日という情報を入手したので、早速、電話を入れる。時刻は19時。夏休みに入って一日部活づけだとしても、このぐらいの時間には、家にいるだろう。
コールが続けば続くほど、明後日には会えるんだ!って喜びで胸が幸せで膨らみそうだ。
『もしもし、黄瀬?』
「あっ、もしもし!俺っす。今大丈夫?」
『おう、飯作り終わったところ』
「えー、今日の夕食は?」
『茄子とベーコンのパスタ、サラダと野菜スープ』
「えー、俺も食べたいっす」
『今度な』と、今後のいつか有る話をすると、心がくすぐったい。へへへっと、笑いつつ、『で?用件なに?』
「そだそだ。明後日、お休みなんだって?桃っちが黒子っち誘おうかなって言ってたっす。火神っちもでしょ?!俺と遊ぼうよぉ」
『バスケか?』
「もぉー・・・デートしよ。お買いものデート」
バスケ馬鹿だなぁ。でも、そんな所も可愛くていいっす。真っ直ぐ大好きです!!って感じで。俺もバスケ好きだし、でも、恋人なんだからデートだって、したいでしょ。
OKと返事をもらい、明細は後でまたメールすると、夕食を食べる相手のことを考え、短く切り上げた。約束は取付けた。明後日9時に駅で待ち合わせ楽しみだ。ウキウキと、携帯のスケジュール帳に「デート」と入力し、調子に乗ってハートマークまで付けたぐらいだ。
「楽しみだね」と、絵文字一杯のメールを送ると、「おう」としか、返ってこなかった。温度差ー!っと、思いつつも、それも彼らしい。ニヨニヨ緩む顔を撫でながら、明後日が待ち遠しい。
最後に「デートだからお洒落して来てね」と、送っておいた。
デート当日。約束の時間に集合場所を見れば、すでに彼は来ていた。
普段、無地のTシャツだけだったりするのを考えても、今日はチェックのシャツを上に羽織っている。うーん、もっと華やかな色も彼には会うと思うんだけど、今日も黒っぽい色。季節的にももっと爽やかな色とか良いと思うんだけどなぁ。
「火神っち!」
壁際に立っていた彼に声をかけると、俺の方を見て、ニコッと笑い「黄瀬!時間通りだな」
「待たせちゃいました?」
「いや、今来たとこ」
「そ?・・・じゃぁ、行こっか。俺、この辺よく買い物来るから、火神っちの服一緒に見たい」
「え、俺の服?お前が何か欲しいんじゃねぇの?」
「いいからいいから。ささっ、行きましょ」
とりあえず、学生にも優しい値段設定で、かつ、あまり装飾性はないけど、チャラチャラ着づらいのは好きじゃないだろうしっと、チョイスしたお店に手を引いて連れて行く。
無難だけど、大量生産の無個性なものと違って、やぼったくならないぐらいの所。
一つ二つと手に取り、彼の体に合わせる。バスケ以外では基本無口な彼は、着せ替え人形のように、頼めば頼むだけ試着をしてくれた。背が高いし、筋肉質だから、この色は上に持ってくると重たくなるよなぁっとか、どの色が好き?と、聞いたりしながら。
試着室に服と一緒に押し込んで、出てきた彼は、少し照れている。うわっ、可愛い。店員がやってきて、あれこれ言われると余計に恥ずかしいみたいだったので、僕らだけで大丈夫ですと、断りを入れ、店の端から端まで。
納得のいくものが見つからなければ、次の店へ。途中、「お前は買い物いいのか?」と言われて、こんなにも好きな人を着飾る楽しみをしてるんだから、満足っす。
「大丈夫、めちゃくちゃ楽しいっすよぉ。火神っち、最高のモデルさん」
何軒も梯子し、気に入りの一枚を見つけた。本当は、アレもコレも、似合うものは俺が全部買ってあげたいけど、相手に気を使わせたいわけじゃないし、俺もモデルの仕事してるとしても、一般的な学生。
「ありがとな」と、ショップの袋を掲げて笑う彼に、「どーいたしまして。今度ソレ着てデート行こうね」と、返すと、「そうだな」と、照れながら言ってくれた。
午前中に買い物を終えることができ、お昼どうしようかなっと、考えながらスタート地点の駅の方へ一緒に歩く。すれ違う人が、俺を見て振り返ったりする。
「しっかし、アレっす。俺、火神っちがカッコいいし可愛いから、もっと俺の恋人を見てくれー!自慢だー!って、見せびらかしたい気持ちもあったんすけど、今日、色んな店の試着室でカーテン空けた時に、近くにいた人とか店員さんが、火神っち見て” かっこいー ”とか言ってるの見ると、誇らしくもあり、ムカついちゃって・・・これは俺だけのなんだー!って」
「何恥ずかしいこと考えてんだよ」
「俺も素敵だけど、恋人も素敵ですよって、見せびらかしたい気持ちが昨日まであったんですけど、今は、めちゃくちゃ、火神っちを独り占めしたいっす」
自分で、自分の気持ちの変動にぶぅぶぅ文句を言うと、バカな奴っと、彼が笑う。
「そんなん、俺はお前何時もカッコいいし、歩いてれば女の子が振り返るし、ムカつくって思うよ」
「へっ!?そうなんすか!?えー、可愛い。火神っち、俺は女の子より火神っちが大好きだから、安心して!!!わー、もぉー、そんな可愛くてどうすんの、死んじゃう。ずるい!」
「可愛くないし、ずるくねぇよ」
「ね、今から火神っちの家行って良いっすか?独り占めしたい」
「・・・・別に良いけど・・・」
「やったぁ!お家デートしましょ。そうと決まれば、早く!!」
どさくさに紛れて、彼の手を引っ張る。握った手が、戸惑いつつ握り返されることに、愛しさが募る。どこまで好きになればいいんだよ、全くもぉっと、振り返った彼は、照れて横を向いた。
何それ、やっぱずるいっすよ。家帰ったら抱きしめて、キスする!よし、きまり!早く彼の家に行かなければ、外でも抱きしめてしまいそうだ。
今は、繋いだ手だけで、我慢しなくては。
end.
黄火で、お買いものデートする二人。
7/19分。
- お洒落 -
火神っちは、持ってるものはイイのに、適当に黒っぽく地味な色の服を選びがちだ。
もっともっと、お洒落をしてほしい。俺の恋人、こんなにも魅力的ですよって、出来る限りのアピールをしていきたい。もっともっと見てほしい。
街を歩いていると、もちろん俺を振り返る人はいるけど、隣に居る彼にだって、振り返っても良いレベルの俺が惚れた人なんだから。
とある情報網から(出所はお察しの通り)、俺は、火神っちが明後日部活の無いフリーの休日という情報を入手したので、早速、電話を入れる。時刻は19時。夏休みに入って一日部活づけだとしても、このぐらいの時間には、家にいるだろう。
コールが続けば続くほど、明後日には会えるんだ!って喜びで胸が幸せで膨らみそうだ。
『もしもし、黄瀬?』
「あっ、もしもし!俺っす。今大丈夫?」
『おう、飯作り終わったところ』
「えー、今日の夕食は?」
『茄子とベーコンのパスタ、サラダと野菜スープ』
「えー、俺も食べたいっす」
『今度な』と、今後のいつか有る話をすると、心がくすぐったい。へへへっと、笑いつつ、『で?用件なに?』
「そだそだ。明後日、お休みなんだって?桃っちが黒子っち誘おうかなって言ってたっす。火神っちもでしょ?!俺と遊ぼうよぉ」
『バスケか?』
「もぉー・・・デートしよ。お買いものデート」
バスケ馬鹿だなぁ。でも、そんな所も可愛くていいっす。真っ直ぐ大好きです!!って感じで。俺もバスケ好きだし、でも、恋人なんだからデートだって、したいでしょ。
OKと返事をもらい、明細は後でまたメールすると、夕食を食べる相手のことを考え、短く切り上げた。約束は取付けた。明後日9時に駅で待ち合わせ楽しみだ。ウキウキと、携帯のスケジュール帳に「デート」と入力し、調子に乗ってハートマークまで付けたぐらいだ。
「楽しみだね」と、絵文字一杯のメールを送ると、「おう」としか、返ってこなかった。温度差ー!っと、思いつつも、それも彼らしい。ニヨニヨ緩む顔を撫でながら、明後日が待ち遠しい。
最後に「デートだからお洒落して来てね」と、送っておいた。
デート当日。約束の時間に集合場所を見れば、すでに彼は来ていた。
普段、無地のTシャツだけだったりするのを考えても、今日はチェックのシャツを上に羽織っている。うーん、もっと華やかな色も彼には会うと思うんだけど、今日も黒っぽい色。季節的にももっと爽やかな色とか良いと思うんだけどなぁ。
「火神っち!」
壁際に立っていた彼に声をかけると、俺の方を見て、ニコッと笑い「黄瀬!時間通りだな」
「待たせちゃいました?」
「いや、今来たとこ」
「そ?・・・じゃぁ、行こっか。俺、この辺よく買い物来るから、火神っちの服一緒に見たい」
「え、俺の服?お前が何か欲しいんじゃねぇの?」
「いいからいいから。ささっ、行きましょ」
とりあえず、学生にも優しい値段設定で、かつ、あまり装飾性はないけど、チャラチャラ着づらいのは好きじゃないだろうしっと、チョイスしたお店に手を引いて連れて行く。
無難だけど、大量生産の無個性なものと違って、やぼったくならないぐらいの所。
一つ二つと手に取り、彼の体に合わせる。バスケ以外では基本無口な彼は、着せ替え人形のように、頼めば頼むだけ試着をしてくれた。背が高いし、筋肉質だから、この色は上に持ってくると重たくなるよなぁっとか、どの色が好き?と、聞いたりしながら。
試着室に服と一緒に押し込んで、出てきた彼は、少し照れている。うわっ、可愛い。店員がやってきて、あれこれ言われると余計に恥ずかしいみたいだったので、僕らだけで大丈夫ですと、断りを入れ、店の端から端まで。
納得のいくものが見つからなければ、次の店へ。途中、「お前は買い物いいのか?」と言われて、こんなにも好きな人を着飾る楽しみをしてるんだから、満足っす。
「大丈夫、めちゃくちゃ楽しいっすよぉ。火神っち、最高のモデルさん」
何軒も梯子し、気に入りの一枚を見つけた。本当は、アレもコレも、似合うものは俺が全部買ってあげたいけど、相手に気を使わせたいわけじゃないし、俺もモデルの仕事してるとしても、一般的な学生。
「ありがとな」と、ショップの袋を掲げて笑う彼に、「どーいたしまして。今度ソレ着てデート行こうね」と、返すと、「そうだな」と、照れながら言ってくれた。
午前中に買い物を終えることができ、お昼どうしようかなっと、考えながらスタート地点の駅の方へ一緒に歩く。すれ違う人が、俺を見て振り返ったりする。
「しっかし、アレっす。俺、火神っちがカッコいいし可愛いから、もっと俺の恋人を見てくれー!自慢だー!って、見せびらかしたい気持ちもあったんすけど、今日、色んな店の試着室でカーテン空けた時に、近くにいた人とか店員さんが、火神っち見て” かっこいー ”とか言ってるの見ると、誇らしくもあり、ムカついちゃって・・・これは俺だけのなんだー!って」
「何恥ずかしいこと考えてんだよ」
「俺も素敵だけど、恋人も素敵ですよって、見せびらかしたい気持ちが昨日まであったんですけど、今は、めちゃくちゃ、火神っちを独り占めしたいっす」
自分で、自分の気持ちの変動にぶぅぶぅ文句を言うと、バカな奴っと、彼が笑う。
「そんなん、俺はお前何時もカッコいいし、歩いてれば女の子が振り返るし、ムカつくって思うよ」
「へっ!?そうなんすか!?えー、可愛い。火神っち、俺は女の子より火神っちが大好きだから、安心して!!!わー、もぉー、そんな可愛くてどうすんの、死んじゃう。ずるい!」
「可愛くないし、ずるくねぇよ」
「ね、今から火神っちの家行って良いっすか?独り占めしたい」
「・・・・別に良いけど・・・」
「やったぁ!お家デートしましょ。そうと決まれば、早く!!」
どさくさに紛れて、彼の手を引っ張る。握った手が、戸惑いつつ握り返されることに、愛しさが募る。どこまで好きになればいいんだよ、全くもぉっと、振り返った彼は、照れて横を向いた。
何それ、やっぱずるいっすよ。家帰ったら抱きしめて、キスする!よし、きまり!早く彼の家に行かなければ、外でも抱きしめてしまいそうだ。
今は、繋いだ手だけで、我慢しなくては。
end.
黒火/夏を過ごす
一日一火神くん。
黒火で、かき氷を食べる二人。
7/18分。
- かき氷 -
「最近のかき氷って凄いんですよ?」
食べることにあまり興味の無さそうな奴の言葉が始まりだった。
バスケをプレイしているときの真剣な顔、読書をしている集中してる顔、それから、俺と向き合うときの嬉しそうな顔・・・とにかく沢山のこいつの顔を見てきたと思っていた。
自分しか知らない顔も見たと思ってたけど、今日のはまた違った。
悪戯っ子というか、生意気そうな「知ってますか?」と、自慢の表情も混じった顔。
「どう、凄いんだよ??」
「それがですね、ふわっふわなんですよ」
俺の部屋でダラダラとしていたので、俺はバスケ雑誌を眺めながら床に寝転んでいた。それを覗き込むように黒子が身を乗り出してくる。
「へー」っと、気の無い返事の俺に、少しムッと顔をゆがめ、チュッと、軽いキスをされた。掠めるようなソレ。
「火神くんの唇みたいに、ふわっふわ、ですよ」
普段よりもテンションの高い黒子は、言ってやりました!っと、言うように自慢げだ。
「へー、へー、そうかよ」
目の前の唇を人差し指と親指でつまんでやると、また少しムッと顔をゆがめた。俺の手をわざと丁寧に外しにかかり、ダラダラとした触れ合いを楽しんでいる黒子。変な奴。
「今日は、機嫌が良いんだな」と、声をかけると、「バスケは今日は休みですが、その分、君を独占してます」
こいつの、実は独占欲の強いところ、不思議と好きだ。
前髪越しに、チュッチュっと、おでこにキスを降らせてくる。あまりにくすぐったくて、甘い雰囲気に耐えられなくなった俺は、「かき氷でも食べに行くか」と、提案をした。
ジリジリと、肌を焼く暑さに、首に掛けたタオルが早速、濡れ始めた。帽子をかぶってはきたが、それが意味ないぐらいに、日差しが強い。
「この近くに、とても美味しいかき氷が食べれるお店を見つけたんです。君と行きたいと思って、我慢していました」
「我慢って、ふわっふわって、知ってんじゃねーの?」
相手の唇を指差して問うと、「店の前で食べている人の言葉です」と。正直な奴。
「ふわっふわじゃなかったら、どうすんだよ」
「ふわっふわじゃなくても、君と一緒にかき氷を食べた夏らしい思い出が増えるので、どちらでもイイです」
「・・・・お前、ときどき、スゴイよな」
意味が分からないと言いたげな顔が見上げてくる。俺は暑さだけでない頬の赤みを誤魔化すように極力顔をそむけた。
「あ、ココです。果汁のシロップらしいです。お祭りで食べるかき氷とは違うんだそうですよ」
「へー、お前はどれにする?」
「・・・桃、ですかね」
「ふーん。じゃぁ、俺は、シークアーサー味!」
お願いしますっと、お店の中で注文を入れる。日焼けして、タオルを頭に巻いたお兄さんが、「はいはい、桃と、シークアーサーねぇー!」っと、元気に応え、二人とも料金を手渡し、端っこの空いている席に座った。
店内は、それほど広くなく、4人座れるテーブルが二つと、カウンター席が6つ。俺たちはカウンター席に。
時間が昼時だったからか、店には、女性二人組の客しかいなかった。「僕が見た時は、店の外にも溢れるほどのお客さんでしたよ。タイミングが良かったです」と、店内を見回して、黒子の一言を聞いたタイミングで、かき氷が運ばれてきた。
「はやっ」と、二人で顔を見合わせて、笑う。「桃の方~」と店員の声に黒子が手を上げ、「じゃぁ、シークアーサーは君ね」と、俺の前にも山盛りのかき氷が置かれる。
「すげぇ」と声を上げて、溶けないうちに「いただきます」
口に入れた瞬間、スッと溶けるように舌になじむ氷。サッパリと、甘すぎない、味がおいしく、爽やかな心地でチラリと隣を見ると「ふわっふわです」と、目をぱちぱちとさせた黒子が居て、笑ってしまった。
「おまえ、自分で聞いたって言ったくせに信じてなかったのかよ」
「・・・だって、かき氷なんて、祭りのざらざらのしか食べたことないです。シロップもべたっとした甘さじゃなくて、とても美味しいです」
「だなっ」と、笑いかけると、「君のも食べてみたいです」と、スプーンを伸ばすので、少し黒子の方へ押しやってやる。
一口分掬い取り、口に入れた瞬間、「んっ、・・・これも美味しいです。すごい、ふわっふわ」
分かりづらいが、感動している顔に、嬉しい気持ちが広がる。
「火神くんも、どうぞ」と、寄せられた桃のかき氷を一口。口の中に、柔らかな桃の味と匂いが立つ。ふんわりと、軟しい味。
「おいしいな」
「ですね」
と、溶けるのが速いかき氷を、パクパクと口に入れていく。
出てくるのも一瞬だったが、食べ終わるのも一瞬。器の下に溜まった溶けた水さえ、愛おしく美味しい。外の熱さを忘れさせる、美味しいかき氷だった。
「ごちそうさま」
帰り道、また肌を焼く日差しに曝される。家に帰ったら、昼飯を食べよう、するっと、そうめんなんか良いかもしれない。薬味をたっぷりかけて。
「折角冷えても熱いな、昼は、そうめんでイイか?」と、隣を見やると、俺を見ていた黒子と目が合う。とても真剣な表情で「火神くん、舌、見せてください」と、言うので、ベッと、舌を出して見せてやる。
「・・・やっぱり・・・・」
ひどくガッカリした声に、どうしたんだ?と、尋ねれば、「お祭りのかき氷だったら、舌が赤とか青とか、緑とか・・・とにかく色がすごいので、キスして、色が移るか・・・みたいな、楽しそうなこと出来るでしょ?」と。
・・・・こいつは何を言っているんだ?黒子は時々、俺にわからないことを言う。
「どこが楽しいのかわかんねぇけど、祭りの氷も食べればいいだろ?」
「!、じゃぁ、7月の終わりにあるお祭りに一緒に行きましょうね」
「わかった、約束な」
「はい、約束です。あ、その前に、今の美味しい味のキスさせてください」
「ばかっ、まだ外だぞ!」
「ふふふっ、そうですね」
ニヤニヤと笑う黒子が憎らしくも、俺も早く帰って、キスしたいなって思った。その前に、流した汗分の水分がとりたい。麦茶味のキスになるかもしれない。
end.
黒火で、かき氷を食べる二人。
7/18分。
- かき氷 -
「最近のかき氷って凄いんですよ?」
食べることにあまり興味の無さそうな奴の言葉が始まりだった。
バスケをプレイしているときの真剣な顔、読書をしている集中してる顔、それから、俺と向き合うときの嬉しそうな顔・・・とにかく沢山のこいつの顔を見てきたと思っていた。
自分しか知らない顔も見たと思ってたけど、今日のはまた違った。
悪戯っ子というか、生意気そうな「知ってますか?」と、自慢の表情も混じった顔。
「どう、凄いんだよ??」
「それがですね、ふわっふわなんですよ」
俺の部屋でダラダラとしていたので、俺はバスケ雑誌を眺めながら床に寝転んでいた。それを覗き込むように黒子が身を乗り出してくる。
「へー」っと、気の無い返事の俺に、少しムッと顔をゆがめ、チュッと、軽いキスをされた。掠めるようなソレ。
「火神くんの唇みたいに、ふわっふわ、ですよ」
普段よりもテンションの高い黒子は、言ってやりました!っと、言うように自慢げだ。
「へー、へー、そうかよ」
目の前の唇を人差し指と親指でつまんでやると、また少しムッと顔をゆがめた。俺の手をわざと丁寧に外しにかかり、ダラダラとした触れ合いを楽しんでいる黒子。変な奴。
「今日は、機嫌が良いんだな」と、声をかけると、「バスケは今日は休みですが、その分、君を独占してます」
こいつの、実は独占欲の強いところ、不思議と好きだ。
前髪越しに、チュッチュっと、おでこにキスを降らせてくる。あまりにくすぐったくて、甘い雰囲気に耐えられなくなった俺は、「かき氷でも食べに行くか」と、提案をした。
ジリジリと、肌を焼く暑さに、首に掛けたタオルが早速、濡れ始めた。帽子をかぶってはきたが、それが意味ないぐらいに、日差しが強い。
「この近くに、とても美味しいかき氷が食べれるお店を見つけたんです。君と行きたいと思って、我慢していました」
「我慢って、ふわっふわって、知ってんじゃねーの?」
相手の唇を指差して問うと、「店の前で食べている人の言葉です」と。正直な奴。
「ふわっふわじゃなかったら、どうすんだよ」
「ふわっふわじゃなくても、君と一緒にかき氷を食べた夏らしい思い出が増えるので、どちらでもイイです」
「・・・・お前、ときどき、スゴイよな」
意味が分からないと言いたげな顔が見上げてくる。俺は暑さだけでない頬の赤みを誤魔化すように極力顔をそむけた。
「あ、ココです。果汁のシロップらしいです。お祭りで食べるかき氷とは違うんだそうですよ」
「へー、お前はどれにする?」
「・・・桃、ですかね」
「ふーん。じゃぁ、俺は、シークアーサー味!」
お願いしますっと、お店の中で注文を入れる。日焼けして、タオルを頭に巻いたお兄さんが、「はいはい、桃と、シークアーサーねぇー!」っと、元気に応え、二人とも料金を手渡し、端っこの空いている席に座った。
店内は、それほど広くなく、4人座れるテーブルが二つと、カウンター席が6つ。俺たちはカウンター席に。
時間が昼時だったからか、店には、女性二人組の客しかいなかった。「僕が見た時は、店の外にも溢れるほどのお客さんでしたよ。タイミングが良かったです」と、店内を見回して、黒子の一言を聞いたタイミングで、かき氷が運ばれてきた。
「はやっ」と、二人で顔を見合わせて、笑う。「桃の方~」と店員の声に黒子が手を上げ、「じゃぁ、シークアーサーは君ね」と、俺の前にも山盛りのかき氷が置かれる。
「すげぇ」と声を上げて、溶けないうちに「いただきます」
口に入れた瞬間、スッと溶けるように舌になじむ氷。サッパリと、甘すぎない、味がおいしく、爽やかな心地でチラリと隣を見ると「ふわっふわです」と、目をぱちぱちとさせた黒子が居て、笑ってしまった。
「おまえ、自分で聞いたって言ったくせに信じてなかったのかよ」
「・・・だって、かき氷なんて、祭りのざらざらのしか食べたことないです。シロップもべたっとした甘さじゃなくて、とても美味しいです」
「だなっ」と、笑いかけると、「君のも食べてみたいです」と、スプーンを伸ばすので、少し黒子の方へ押しやってやる。
一口分掬い取り、口に入れた瞬間、「んっ、・・・これも美味しいです。すごい、ふわっふわ」
分かりづらいが、感動している顔に、嬉しい気持ちが広がる。
「火神くんも、どうぞ」と、寄せられた桃のかき氷を一口。口の中に、柔らかな桃の味と匂いが立つ。ふんわりと、軟しい味。
「おいしいな」
「ですね」
と、溶けるのが速いかき氷を、パクパクと口に入れていく。
出てくるのも一瞬だったが、食べ終わるのも一瞬。器の下に溜まった溶けた水さえ、愛おしく美味しい。外の熱さを忘れさせる、美味しいかき氷だった。
「ごちそうさま」
帰り道、また肌を焼く日差しに曝される。家に帰ったら、昼飯を食べよう、するっと、そうめんなんか良いかもしれない。薬味をたっぷりかけて。
「折角冷えても熱いな、昼は、そうめんでイイか?」と、隣を見やると、俺を見ていた黒子と目が合う。とても真剣な表情で「火神くん、舌、見せてください」と、言うので、ベッと、舌を出して見せてやる。
「・・・やっぱり・・・・」
ひどくガッカリした声に、どうしたんだ?と、尋ねれば、「お祭りのかき氷だったら、舌が赤とか青とか、緑とか・・・とにかく色がすごいので、キスして、色が移るか・・・みたいな、楽しそうなこと出来るでしょ?」と。
・・・・こいつは何を言っているんだ?黒子は時々、俺にわからないことを言う。
「どこが楽しいのかわかんねぇけど、祭りの氷も食べればいいだろ?」
「!、じゃぁ、7月の終わりにあるお祭りに一緒に行きましょうね」
「わかった、約束な」
「はい、約束です。あ、その前に、今の美味しい味のキスさせてください」
「ばかっ、まだ外だぞ!」
「ふふふっ、そうですね」
ニヤニヤと笑う黒子が憎らしくも、俺も早く帰って、キスしたいなって思った。その前に、流した汗分の水分がとりたい。麦茶味のキスになるかもしれない。
end.
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