box。

- パパ、僕、バパ -


古泉が、「温かいです」とか何とか言って俺の中から退こうとしない。
横向きに並んで後から抱きしめられる。
首元の匂いを嗅がれて、汗臭いのにって考えちゃう俺。
「いいから、抜け。片付けしてからくつろげ、ハゲ」
「僕、ハゲじゃないですよ？」
くすりと笑って、何故か髪の毛を撫でられた。
俺はお前の頭がはげるって言ってるんだ、俺の事じゃないよっと意味を持たせて睨みつけてやると「おやおや」とたいして気にした素振りもない古泉がゆっくりと身体をはなした。
もう、抜けきってふにゃふにゃのそいつがズルリと抜ける。
滑りのために塗ったベビーオイルと激しい擦れででた腸液が糸を引いて俺の太ももにたれた。
さっきまで塞がれてた所が抜けたせいでケツ穴がキュッと小さく疼いた。
もうそんな体力も残ってない程にヤッたのに案外俺も元気だな。
後へ寝返りを打つと胡座をかいた古泉が使用済みのコンドームを外して口を縛った。
俺と目のあったそいつはニヤニヤと笑って、
「キョンくん、次は生で入れさせてくれたり・・・・？」
なわけ、ねぇよ。却下だ却下。
「無理だ、駄目だ」
「でも、別に病気持ってる訳じゃないですし」
コイツの頭は数式だのとかは沢山入ってるんだろうが、てんで駄目だ。バカだな。
古泉が病気もってようがなかろうが、俺が持ってたら共倒れしちまうだろ。
それに、腹痛くなったりするし、衛生的に絶対やらなきゃ駄目だっつーの。
「嫌だよ」
「妊娠する訳でもないじゃないですか」
・・・・・俺が妊娠したらこえぇよ。
そんなことが起こったらハルヒが変な事を願ったのが明確だな。
何処で育つんだよ。俺の穴は子供専用じゃないんだよ。
実際は排泄器官だよ、そんな所で卵子と精子がこんにちわしても嫌だろ。
10ヶ月も出すもん出さないで生きれるはずがない。
バカだ、本気でバカだ。
「妊娠しないけどよ、そりゃ、出てきたソイツらは可哀想だけどよ」
と、ティッシュに拭われたりコンドームとともに捨てられた精子を指差し、俺は続けた。
「可哀想だよな、出てくるだけで役に立たなくてよ」
吐き捨てるように言ったセリフ、と同時に降ってきた水。
見上げると目に一杯涙を溜めた古泉が居た。
「ちょっ、古泉、どうしたんだよ！？」
手元に転がってたタオルで顔を乱暴に拭いてやった。

「落ち着いたか？」
俺の腹に顔を寄せた古泉の髪の毛を優しくといた。
サラリと流れる髪、肌の上を撫でる古泉の呼吸。
「ホント、どうしたんだよ、いきなり・・・・」
ため息が零れそうになったのをなんとか押さえた。
「あなた、赤ちゃんを抱いた事ありますか？」
「・・・ん、まぁ、抱き上げた事はないけど俺には妹が居るからな」
「そうでしたね、赤ちゃんって、ふにゃふにゃなんですよ、首だってグラグラしちゃって安定しないし。でもね、とても温かな存在なんです」
「そして、あなたは僕たちのお母さんです」
「は？」
「母は強く不安定な赤ちゃんを抱きとめれるんです、そして、温め返す事も出来るんです」
「・・・・俺がお母さんってキャラかよ」
くくくっと笑って揺れる腹に耳を当て、古泉は話した。
「お母さんじゃなくて、お父さんでも良いです。僕だけじゃなく、朝比奈さんや長門さん、そして凉宮さんもあなたに甘えているんです。」
「そーか、そーか。よしよし、いつきくん。でもよ、母親と寝る息子はいねぇーぞ？」
「では、やはりお父さんで」
「それはもっとヤバい気がするな」
バカにする訳でも、茶化す訳でもなく言った事に古泉は一瞬真剣な顔をして、俺をぐっと抱きしめた。
顔が胸の上に押さえつけられるような強い抱擁だった。
「お父さん、孫の顔見せてあげれなくてごめんなさい」
「不謹慎だな」
「あなたは無いんですか？」
「何が」
「懺悔ですかね」
「息子に何を懺悔すんだよ」
「じゃぁ、今度は僕がお父さんです、どうぞ」
「・・・・変わり身はえぇな」
「いいから、ほら、息子早く」
「注文多いな」
さぁさぁとせがむ親父らしくない古泉が迫る、や、別に親父じゃないけど。

「じゃぁ、お父さん、俺生まれてきたかったな」

それを聞いた古泉はまた泣きやがった、面倒なヤツだ。
でも、俺は強くソイツを抱きしめてやった。



end.