box。

トボケた態度をとればいいと思った
跡部さんが試合をしていた
打ち返したボールがどこに飛んでくるのか知っているような動き、
柔らかな手首の振りで力強い打球
俺だけじゃない、周りの人の目を無意識で集めてしまう人


- 泣いちゃいそうよ -


｢好きです｣と、言った
試合前に持ってろと渡されたジャージを渡すときに何気なく
試合の圧迫感と告白の緊張感で握りしめたそれはクシャクシャになっていた
顔を洗いたいというので流し場に二人でいた
頬の上をスルリと滑る滴を見た
首にかけた清潔なタオルは眩しいぐらいの青色
長い睫毛に縁取られた瞳が俺を見据える
断られたら冗談だと言えばいい
嫌われたらイヤだ
好きと同時に追い抜きたい目標だから
たとえ告白を断られても一緒にいたい
せめて彼が卒業する来年までは…
怖じ気付いて足が震え、耳を塞ぎたくなった
でも、そんな俺とは反対に堂々とした彼はマイペースに水と汗をふき取って、こう言った

｢俺も好きだ｣

……………は？
とっさに反応できない間抜け顔の俺とニヤリと口端をあげた彼
断られることばかり想像してた、想定外のことに動揺からか
普段あまり流さない涙がぽろりと落ちた
跡部さんは一瞬驚いた顔を見せたものの俺の手元のジャージを取り上げて
俺の頭にかぶせ、息がかかるほど距離を縮め
｢嬉し泣きとは可愛いが、他の奴らに見られるのはイヤだ。無防備なのは俺だけの前にしろ｣
と、ジャージを引き寄せてキスをした
俺は｢この涙は嬉し泣きなんかじゃない!｣っと言ってやりたかったのに
キスされた驚きで、またもぽろりと涙が零れた



end.
日吉は俺のもの!って感じの跡部さん好きです(笑)