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黒火/夏を過ごす

一日一火神くん。
黒火で、かき氷を食べる二人。
7/18分。




- かき氷 -


「最近のかき氷って凄いんですよ?」

食べることにあまり興味の無さそうな奴の言葉が始まりだった。
バスケをプレイしているときの真剣な顔、読書をしている集中してる顔、それから、俺と向き合うときの嬉しそうな顔・・・とにかく沢山のこいつの顔を見てきたと思っていた。
自分しか知らない顔も見たと思ってたけど、今日のはまた違った。
悪戯っ子というか、生意気そうな「知ってますか?」と、自慢の表情も混じった顔。

「どう、凄いんだよ??」

「それがですね、ふわっふわなんですよ」
俺の部屋でダラダラとしていたので、俺はバスケ雑誌を眺めながら床に寝転んでいた。それを覗き込むように黒子が身を乗り出してくる。
「へー」っと、気の無い返事の俺に、少しムッと顔をゆがめ、チュッと、軽いキスをされた。掠めるようなソレ。
「火神くんの唇みたいに、ふわっふわ、ですよ」
普段よりもテンションの高い黒子は、言ってやりました!っと、言うように自慢げだ。
「へー、へー、そうかよ」
目の前の唇を人差し指と親指でつまんでやると、また少しムッと顔をゆがめた。俺の手をわざと丁寧に外しにかかり、ダラダラとした触れ合いを楽しんでいる黒子。変な奴。
「今日は、機嫌が良いんだな」と、声をかけると、「バスケは今日は休みですが、その分、君を独占してます」
こいつの、実は独占欲の強いところ、不思議と好きだ。
前髪越しに、チュッチュっと、おでこにキスを降らせてくる。あまりにくすぐったくて、甘い雰囲気に耐えられなくなった俺は、「かき氷でも食べに行くか」と、提案をした。


ジリジリと、肌を焼く暑さに、首に掛けたタオルが早速、濡れ始めた。帽子をかぶってはきたが、それが意味ないぐらいに、日差しが強い。
「この近くに、とても美味しいかき氷が食べれるお店を見つけたんです。君と行きたいと思って、我慢していました」
「我慢って、ふわっふわって、知ってんじゃねーの?」
相手の唇を指差して問うと、「店の前で食べている人の言葉です」と。正直な奴。
「ふわっふわじゃなかったら、どうすんだよ」
「ふわっふわじゃなくても、君と一緒にかき氷を食べた夏らしい思い出が増えるので、どちらでもイイです」
「・・・・お前、ときどき、スゴイよな」
意味が分からないと言いたげな顔が見上げてくる。俺は暑さだけでない頬の赤みを誤魔化すように極力顔をそむけた。

「あ、ココです。果汁のシロップらしいです。お祭りで食べるかき氷とは違うんだそうですよ」
「へー、お前はどれにする?」
「・・・桃、ですかね」
「ふーん。じゃぁ、俺は、シークアーサー味!」
お願いしますっと、お店の中で注文を入れる。日焼けして、タオルを頭に巻いたお兄さんが、「はいはい、桃と、シークアーサーねぇー!」っと、元気に応え、二人とも料金を手渡し、端っこの空いている席に座った。
店内は、それほど広くなく、4人座れるテーブルが二つと、カウンター席が6つ。俺たちはカウンター席に。
時間が昼時だったからか、店には、女性二人組の客しかいなかった。「僕が見た時は、店の外にも溢れるほどのお客さんでしたよ。タイミングが良かったです」と、店内を見回して、黒子の一言を聞いたタイミングで、かき氷が運ばれてきた。
「はやっ」と、二人で顔を見合わせて、笑う。「桃の方~」と店員の声に黒子が手を上げ、「じゃぁ、シークアーサーは君ね」と、俺の前にも山盛りのかき氷が置かれる。
「すげぇ」と声を上げて、溶けないうちに「いただきます」
口に入れた瞬間、スッと溶けるように舌になじむ氷。サッパリと、甘すぎない、味がおいしく、爽やかな心地でチラリと隣を見ると「ふわっふわです」と、目をぱちぱちとさせた黒子が居て、笑ってしまった。
「おまえ、自分で聞いたって言ったくせに信じてなかったのかよ」
「・・・だって、かき氷なんて、祭りのざらざらのしか食べたことないです。シロップもべたっとした甘さじゃなくて、とても美味しいです」
「だなっ」と、笑いかけると、「君のも食べてみたいです」と、スプーンを伸ばすので、少し黒子の方へ押しやってやる。
一口分掬い取り、口に入れた瞬間、「んっ、・・・これも美味しいです。すごい、ふわっふわ」
分かりづらいが、感動している顔に、嬉しい気持ちが広がる。
「火神くんも、どうぞ」と、寄せられた桃のかき氷を一口。口の中に、柔らかな桃の味と匂いが立つ。ふんわりと、軟しい味。
「おいしいな」
「ですね」
と、溶けるのが速いかき氷を、パクパクと口に入れていく。
出てくるのも一瞬だったが、食べ終わるのも一瞬。器の下に溜まった溶けた水さえ、愛おしく美味しい。外の熱さを忘れさせる、美味しいかき氷だった。
「ごちそうさま」


帰り道、また肌を焼く日差しに曝される。家に帰ったら、昼飯を食べよう、するっと、そうめんなんか良いかもしれない。薬味をたっぷりかけて。
「折角冷えても熱いな、昼は、そうめんでイイか?」と、隣を見やると、俺を見ていた黒子と目が合う。とても真剣な表情で「火神くん、舌、見せてください」と、言うので、ベッと、舌を出して見せてやる。
「・・・やっぱり・・・・」
ひどくガッカリした声に、どうしたんだ?と、尋ねれば、「お祭りのかき氷だったら、舌が赤とか青とか、緑とか・・・とにかく色がすごいので、キスして、色が移るか・・・みたいな、楽しそうなこと出来るでしょ?」と。
・・・・こいつは何を言っているんだ?黒子は時々、俺にわからないことを言う。
「どこが楽しいのかわかんねぇけど、祭りの氷も食べればいいだろ?」
「!、じゃぁ、7月の終わりにあるお祭りに一緒に行きましょうね」
「わかった、約束な」
「はい、約束です。あ、その前に、今の美味しい味のキスさせてください」
「ばかっ、まだ外だぞ!」
「ふふふっ、そうですね」
ニヤニヤと笑う黒子が憎らしくも、俺も早く帰って、キスしたいなって思った。その前に、流した汗分の水分がとりたい。麦茶味のキスになるかもしれない。



end.
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