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古キョン/小さな事です。

古泉くん視点。
未来設定、27歳ぐらい。
キョンくん結婚経験あり、子連れです、妄想爆発です。
苦手な方は逃げてっ。
おまえなぁ……
いつもと変わらず彼は呆れていた


- 小さな事です -


金曜日の夜に彼の家にやってきた、約束はしていない。仕事終わりでまだ9時を少し回ったところだ
ピンポーンと軽い音を鳴らせば家主が鍵を開けて出てきた
住まいは一軒家、せまい住宅地。キレイなクリーム色が彼の自慢らしい
「こんばんは」
外の暗がりに目を細めた彼は「あぁ、おまえか」っと対して喜んでいない声を上げた
空気が読めない振りをして敷地に足を踏み入れる
「何度も言いますが、誰が来たのか確認した方がよろしいかと」
「こんな時間にいきなりココに来るのは、お前ぐらいだ」
「そんな、泥棒や強盗だっていきなりですよ?」
言うと彼は、ふんっと鼻息で会話を蹴散らして廊下の先に行ってしまうので、おじゃましますと、行儀よく靴を並べた
「おー」
間抜けな返事だ、でも、無視されずにすんだ。とりあえず潜入は成功


今日は朝起きた瞬間からすごく人恋しかった、隣にいない温もりを求め手を伸ばした
するりとシーツの上を滑るだけで虚しくなった、一人暮らしの荒れた室内にはやはり自分一人しかいなかった
だらだらと起き出して、きっちりと仕事をこなして、自分の家ではない。彼の家の方へ足を向けた
もう、あのぎゃーぎゃーと突っかかってくる子供がいてもイイから彼に会いたかった


子供に罪はない
まだ小学生にも届かない、だけどいっちょ前に大人ぶってみたりする。目が母親にそっくりで弾けるように笑うかわいい男の子だ
彼は子連れの妻をもうけ金を工面して家を建てた。僕らは学生時代から恋人でなく、それ以上でもそれ以下でもない曖昧でぼんやりした関係性を続けていた時だ
彼とは結婚するしないでモメた、僕の知らないところで彼が女性と付き合い結婚すると聞いた時に腹が立った
彼女でも彼氏でもないくせに偉そうに、どうしてっと独占欲ギラギラの目で彼を見て僕は泣いた
そりゃ格好悪かっただろう。自分のプライドも捨ててすがりついた
ごめんと言って優しく頭を撫でてくれた彼は、もう、一人の女性のものになったんだと理解し、同時に、わかった
僕は彼を手放したくないほどに好きなんだと

そして、モメた熱も収まる前に彼の妻となった女性はあっけなく蒸発した
結婚し、新居が建つ前に。それじゃ夕飯の買い出ししてくるねっと簡単に出て行って未だに帰ってこない
きっと彼女は知っていたんだろう。彼がとても優しい人間で、自分が居なくなっても子供の面倒を見てくれると
彼女の思惑通りに彼は文句も言わずに自分の子でもない子供と一緒に一軒家に越して暮らしはじめ、僕はまた彼との曖昧な関係を再開した

子供の前では彼に対する恋心を奥にしまい、彼と二人の時にしか出さない欲望
でも、何となく感じているんだろう。純粋で無垢だが僕を見る目が語っている
とらないで、お父さんを連れていかないで。なんて残酷で真っ直ぐな視線で自分を見つめてくるときがある
あの子は知っているんだろうか、彼は君が一番好きなんだと。気にかけて大事にしたいと思っていることを
蒸発した妻よりも質悪いのは、この子なのかもしれない
だからなのか、僕は子供を名前で呼んであげたことがない


「あれ、あの子は?」
「…?あー、あいつはお隣さんの家だよ、何でも明日の朝一から水族館に行くんだとよ。隣と仲良しなんだよ、あいつ。社交的でさ」
子の嬉しそうな顔でも思い出したのか幸せそうに笑う彼に、そうですかと気のない返事、リビングで騒ぐのはテレビの中の人間だけだった
「なんだ、遊びたかったのか?」
冷やかさないでください、彼だけに会うことを願ったのも事実、でも少しだけ、あの子供と遊んでもイイと思ってたのも事実
イヤだと何処かで思っていても、彼の好きなものは受け入れたいと思う自分が勝つ
「あー、では、あの子の代わりに俺を泊めてください」
「どういう理屈だよ。まぁ、いいけど…」
返事を聞く前にテレビの前に座り込む、溜息までは行かないけど息を吐いたのが聞こえた
彼はなんだかんだ言っても俺を追い出したりはしないと優しさにつけ込んだ
「おまえ、飯食ったか?」
「まだです、お腹すきました」
「はいはい」
話しかけられ甘えた声を出してみる。怠そうにしながらも僕を甘やかす
「カレーですか?」
隣のキッチンに向かった彼を追いかけ彼の後ろをついて歩いた、鼻をひくつかせるよりも感じるスパイスの食欲を刺激する匂い
「昨日の残りだけどな」
蓋を開けて火をつけた彼の背後に立った僕の顔を横目で見て、鼻をつままれる
「うちのカレー、激甘だから。隠し味は蜂蜜と野菜ジュースな」
「…前は激辛だったのに」
ついでに言えば俺の知っていた彼のカレーの隠し味は蜂蜜なんてもんじゃなかった。インスタントコーヒーを入れていたはず
コクがあって美味かった
少しの間、だんまりをした俺をどう思ったのかわからない
なんだか、急に寂しくなった。この人の中心は一緒に暮らす子供なんだなっとわかっていたはずなのに。彼の身体に腕を回して背中に顔を擦り付けた
「…今度来るなら連絡しろ。辛いのも作っといてやるから」
「はい」
弱い声が零れて情けなかったけど次の機会をくれた彼はやはり優しくて嬉しかった

カレーは非常に甘かった
甘ったるくてカレーのなんたるかを否定したような味だった
「わっ、なんですかコレ。辛くないカレーはカレーじゃ……」
「おまえなぁ。…文句あるなら食うな」
伸びてきた手が皿を取り上げようとしたので回避し、慌てて頬張った
すぐに水も口に入れて胃の中に流し込んだ
「…ごちそうさま、おとうさん」
子供をまねして御馳走様というと「おまえなぁ」っと呆れていた
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