忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

古キョン/夕方とお祭り

二人でお祭りに行く話。
キョンくんが見た目にそぐわず大食いだと良いなって思います。
高校生のときの食欲はホントすごい。


ざわつくのは、ここに集まる大勢の声だけじゃない。


- 夕方とお祭り -


まずは、焼きそばを食べた。

太陽がジットリと沈んでいくのを目を細めてみた。
丁度そのときに、焼きそばの屋台と焦げた美味しい匂いが鼻をくすぐったので、
「おい、アレ」っと指をさしたら横で同様に沈む夕日を見ていた古泉が「はい」と通った声で返事をした。
一パック400円の安い味、でも、今日と言う日は格別に美味く感じる。
祭りの浮き足立った雰囲気に飲まれて地上1センチの所を浮いてるような気分だ。
軽い足取りで、焼きそばを手にした古泉からパックを受け取る。
さんきゅ、手の中に熱い温度。
「僕は、アレを買ってきますので、そこの花壇の所が運良く開いてるので場所を取っておいてください」
そういって、たこ焼きの列に並んだヤツの言われた通り、花壇のコンクリートの所に腰を下ろした。
匂いに誘われるように輪ゴムを外して、割り箸を割った所で、
こっちへ来るまで待ってやるかっと、パックを膝の上に乗せた。
程なくして、たこ焼きを手にした古泉が歩いてきた。
そう言えば、こいつ、今日は普段の大人っぽい格好じゃなくて甚平なんだな。
俺は平凡の王道、Tシャツにジーパンだ。
ジーパンを見るでもなく下を向いた所で、
「お待たせしました。先に食べてくださってもかまわないのに、ありがとうございます。」
横に腰を下ろして本当に嬉しそうな顔をするので「食うぞ」っと目をそらした。
「はい、頂いてください。」
いただきます、二人の小さな声が重なる。
空腹だったんだ、口に含んだ焼きそばのソースの味がより胃を刺激して普段より早いペースで口に入れた。
「美味しいですか?」
「あぁ、うまいよ。家とは違う味だ。」
「お家の味と言うのも魅力的ですよね。」
「そうかい、そのうち遊びにこいよ、飯ぐらい食いにこれば良い。妹も喜ぶ」
古泉は妹の事を想像したのか、慈愛に満ちた目で俺を見てきた。
・・・・なんなんだ、今日は久しぶりに二人で遊びにきた(デートとは絶対に言わないでくれ)けど、この態度は何だ。
手にしていた焼きそばを古泉の方に、「半分食え」っと押し付けた。
かわりに渡されたたこ焼きパック。
爪楊枝をさして口に入れた。うん、これも美味い。
「次、何処行きますか?」
「あー、チョコバナナ食いたい。」
「えぇ、いいですよ。」
そう言って、慌てて最後の焼きそばを古泉はかき込んだ。
急いで食べなくても良いのに。「青のりついてる」っと口端を拭ってやると「おや、お母さんみたいですね」って言ったので1発殴って立ち上がった。

「チョコレイト味でよろしいですか?」
「あぁ、チョコたっぷりかかってるヤツな。」
「わかりました。待っててくださいね。おいしい匂いしたからって何処かに行かないように。」
「ガキ扱いすんな。」っと軽くローキック。
笑顔を崩さずに古泉は女子供の多い列に並んだ。
戻ってきた古泉は両手に一本ずつのチョコバナナを持っていた。
はいっとピンクのチョコがかかった方を寄越してきた。
違うだろっと一睨みしたら口端を上げて「コチラでしたね。」っとノーマルの色合いのバナナを渡してくれた。
「いただきます。」
パク付くとチョコとバナナの組合わさった味がする。
これを考えた人はホント頭がいいっと上機嫌に古泉を見たら人をジロジロと見ていたので少し引いた。
なんなんだ、こいつ。本日二度目の同じ疑問。
古泉も浮かれているんだろうか。
「なんでピンクの買ってきたんだ?」
あぐっとバナナに齧り付いた古泉が、それはですねっともったいぶるように話を始めた。

要約すると、一つ前の客がカップルで彼氏が彼女にピンクのチョコバナナを買っていたので、買ってきたらしい。
お前は俺に何を求めてんだよ。
彼女ってなんだよ、バカにしやがってっと思ったので古泉の手首を掴んで引き寄せてピンクのチョコバナナを一口かじった。

「次は何を食べましょうか?」
「そうだな、わらび餅食べたいな、あと、どっかのサークルがさっきサーターアンダギー売ってたな、アレも美味そうだ。あと、フライドポテトも食べたいし、最後にはかき氷は絶対だな。」
古泉は笑って、「それでは、順番に行きましょう。」っと俺の手を引いた。
「おい、手!」
「いいじゃないですか、お祭りですよ、誰も見ていません。」
今日の飲み食い代は全額古泉持ちなので、しかたないっと自分に言い聞かせて引かれるままに歩いた。


「ふー、だいぶ腹もふくれてきた。」
言った通り少しふくれた腹を撫で擦ると古泉が嬉しそうな笑顔を向けてきた。
「あなた、見かけによらず大食いですよね。」
「まだまだ成長期だからな、お前の身長だって抜いちゃうかもな。」
「それは阻止したいですね。」
「なら、お前もよく食べて寝れば良い。」
「えぇ、そうします。じゃぁ、最後にかき氷行きましょうか。」
「おうっ。俺、ブルーハワイがイイ。」
「わかりました、あちらで待っていてくださいね。」っと今日何度も聞いたセリフを聞いてから、人の少ない場所へ移動して、
列に加わった古泉を少し離れた所で見ていた。
そこへ、キレイな浴衣姿の女の子が二人古泉に近づき、何かを話している。
頭を少し下げた古泉は変わらずかき氷の列にならって足を進めた。

古泉は青いかき氷と赤いかき氷を手にして戻ってきた。
「ナンパされてやんのー」っと冷やかしを含んだ声をあげる。
嫌みなのか、嫉妬なのかわからない中途半端な気持ちが渦巻いていて、
さっきまでの満腹から来る幸せが縮こまってしまった。
「見られてましたか、でも、断りましたよ。僕にはキョンくんが居ますから。」
手渡された青いかき氷。
スプーンとストッローが混ざったモノでかき氷の上の方を崩した。
口に入れると夏の暑さを一瞬忘れさす冷たさが広がった。
「僕はイチゴ味ですよ。」
しゃくしゃくっと氷が鳴いた。祭りの終わりを感じて寂しさも口の中に広がった。
「美味しいですか?」
「あぁ、ブルーハワイなんて抽象的な名前だけど、これが一番好きだ、色もキレイだし。」
「キレイな水色ですね。あ、舌が青くなってますよ?」
ニコニコと古泉が笑った。
「お前のも普段より赤い。」っと言った所で古泉の手を掴んで俺は歩き出した。
まだ、カップの中には半分程、こおりが残っている状態。

「・・・・どうしたんですか?」
祭りの賑わいから離れた頃、古泉が声をかけてきたので下を向いて立ち止まった。
キョンくん?っと顔を覗き込まれた所を狙ってキスをした。
ビックリした表情をしたが、すぐに俺に答えるようにキスは長く続いた。
外で人目も気にせずに身体が勝手に動いた。
むしろ、自分自身が信じれないぐらいだ。
頬を撫でられ、古泉の顔が離れていく。
「どうしたんですか?」
「ナンパなんかされてんじゃねぇよ。今日は俺と来たのに。」
古泉の意思が有ろうと、相手が好意を持って古泉に話しかけた、防ぎようの無い事はわかっている。
理不尽な事を言っているのは解る、折角、俺を喜ばそうと沢山食い物を買ってくれた事も。
でも、でも、今日は。
「俺と、デートだろ、バカ。」っとポロっと口に出た。
あっ、と思ったときには遅い。古泉は今日一番の笑顔。
と言うか、緩んだ笑顔で俺の方を見ている。

気恥ずかしくなって、赤いかき氷を引ったくり、かわりに青いかき氷を押し付けた。
触れた指先は氷に熱を奪われて冷たかった。
PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード

カウンター

プロフィール

HN
ナオ太。
連絡先
kuroyagi_yuubin☆yahoo.co.jp
(☆→@に変更)

リンク