黒火「悲しい嘘」
黒子君がロボットパロです。バスケしてない。
中学生火神くんの話です。
苦手な方はスルーしてください。
カプ色は強くありません。
- 悲しい嘘 -
父が俺にロボットを買い与えた。
「一人より二人だ」と、言って、これで少しは安心だっと、続けた彼の考えていることなんて、俺には全く分からないまま。父のことは、とても大好きで大切な人だけど、本当に俺には分からないことだらけだし、わかりたいと思ってもわからないことが大半だ。
中学生の一人暮らし。バカみたい。本の物語でも、もっと現実味のある設定を考えそうなのに、俺はソレをやってる。一人というのには、語弊があるのかもしれない。父が買ってくれたロボットは、人間と本物そっくりで、どこから見ても人間にしか見えない。ロボットは一人とカウントしてもイイのだろうか?
もしそうならば、俺は二人暮らしに属するのかもしれない。家族とも言い切れない、見た目は人間で温かみもあるけど、それは結局は作り物で、作られた体温で、そもそも、実際の人間とも距離の撮れない俺がソイツに触れることはほとんどない。
一緒に住んでいるロボットの名前は、黒子テツヤと言う。ロボットと初めて会ったのは、父が仕事の都合で日本では一緒に住めないと俺に伝えたレストランで出会った。
そいつは、人間みたいなつくりのくせに、殆ど表情も変えず、ニコリともせずに俺に名を名乗った。丁寧な言葉遣いと、頭を下げた仕草。どこから見ても人間。だけど、違う。愛想のない奴だなっと思った。
日本語よりも英語の方がスラスラと話せる俺に、日本語で話しかけてくる。どこまでプログラムされているんだろう?彼の性格や内面、すべてが作り物で、愛想がよいとしても、それもまた作り笑いなんだろうかと思ったら、無表情こそが、逆に彼らしいようにも思えた。
「一人より二人だ、これで少しは安心だ」
そう、父は言った。
俺は全く、安心ではなかった。中学生。まだ十代前半の俺。いきがっても大人とは言えない。大人は何歳からなんだろう?
何才だったら父は、俺一人でも安心なんだろう? 少しは安心っというけど、他の埋められていない不安な部分はどのぐらいの大きさなんだろうか。自分の思い描く不安の大きさとの差異はどのぐらいなのだろう。
わからないことだらけだ。隣の席に腰を下ろしたロボットの顔を伺う。つるりとした肌。ガラス玉みたいな目ん玉。柔らかく口角が上がることもない。くるりと俺の方を見たソイツは、「これからよろしくお願いします」と、また頭を下げた。
「ロボットの操作や設定は既にプログラムされているし、彼は何かを食べることもない。あ、たまに充電が必要だけど2か月に一度ぐらいだし、水にぬれたからって壊れることもないから安心してくれ」
本当に人間みたいだろう?
確かにソイツは人間みたいだ。普通にしゃべるし、普通に動くし、呼吸もしているみたいだ。人間の振りをしたロボットでしかない。元から無口な性格なのか、話しかけてくるようなこともほとんどない。
一緒に暮らしたからと言って、俺がソイツを気に掛けることもないし、ソイツのために何かをすることもほとんどない。初めこそ、何か食べるのかな?っと、ご飯を用意したところ、「僕はロボットなので、何かを食べることはありませんのでお気遣いなく」と、言った。
一人より二人だと、言った父を思い描く。二人食卓に居たとしても、一人でだけが食べる食卓は味気ない。
一つだけ良いことがあるとすれば、ソイツはバスケを一緒にしてくれた。学校で部活にも所属できない浮いた存在の俺。日本語がうまくなく、日本語以外だとしても上手に思ったことを言えない。ましてや、中学生の日本人が英語で話しかけても殆ど伝わることなんてない。
伝えられない、知ってもらえない。話せたとしても相手のことを全部理解できないのに、話も満足にできない俺に世間は残酷だ。話しかけられても言葉がスッと出てこない。思ったことが言葉にしたくても、なんて言えばいいのかわからないのだから、話すことも減った。
だから、言葉もあまり必要ない体を動かすバスケを一緒にしてくれる存在は貴重だった。あまり上手なプレイヤーではなくとも、ともに何かをしてくれるのは嬉しかった。会話は途切れるけど、ボールは俺の手元に飛んでくるし、俺の手元からソイツへ。
ソイツの下手くそなシュートに久しぶりに笑ったりもした。
それから、俺は、飯は食べないとしても風呂に入ることは進めた。汗はかくことはしないが、汚れはするだろう。学校へ行っている間はソイツが何をしているのかは知らない。たまに洗濯物が畳んであったりはする。ロボットならば、家に帰ってきたら飯ぐらい作ってくれていてもいいのに、家事はあまり得意ではないらしい。
たまにかかってくる父からの電話に「彼との生活はどうだ?」と、聞かれる。「順調だよ」
心配の掛けたくない俺は、そう、口にすることが精いっぱいだ。本当は、上手くいっていない。一人より二人だというのなら、もう一人は父が良い。一人で俺を育てようとしてくれてるから、仕事をしているんだ。俺がわがままを言って、父に迷惑はかけたくない。
このごろ料理が楽しいことを父に伝える。何が作れるようになっただとか、たわいない話。ちゃんとご飯を食べているよ。心配しないで。俺は一人でも大丈夫だ。電話から聞こえる父は、必要なものが有ったら、すぐに言えよと、声をかけてくれる。
声だけじゃなく、ココに居てほしいな。
電話をし終わった俺を、ソイツがやっぱり無表情で俺を見ていた。ジッと見られることに、俺の口にしなかった気持ちが見えてしまっているように感じて居心地が悪い。
「火神くん」と、ソイツは俺を呼ぶ。
「お前は、なんで俺と一緒にいるの? 買われたから?」
ロボットの所有者にしたがっているだけなんだろう。ソイツは日々、何を思って、何を感じて・・・そもそも、何かを考えたりするのかはわからないが、ロボットは何にしたがっているのだろう。
プログラムされた指示から俺と一緒に暮らすことしか、ないのかもしれない。俺がバスケをしたいなっと、気まぐれに誘うときに一緒にバスケをしに行くときは、誘われた行為が、彼への指示となって、突き動かされるんだろうか。
「僕は、黒子テツヤと名前があるロボットです。君と暮らすために存在しています」
彼はもしかしたら、もっとたくさんの言葉を知っているのかもしれない。俺があまり言葉を知らないから、簡単な言葉で伝えようとしてくれてるのだろうか。ロボットの知能はどれぐらいなんだろう。メモリーに詰め込まれただけ賢くなれるのだろうか?
「火神くんを守る存在です」
「・・・何から守ってくれるんだ?」
「寂しさ」
ポツリと言われた言葉とともに、ソイツは近づいてきて俺の背に手をまわした。ギュッと抱きしめられて、急に泣けてきた。俺の心臓の音を聞くように胸元に耳を押さえつけたソイツが、大丈夫ですよっとでも言うように背を撫でる。
作られた温もりだけど、こんなにも、安心する。ポロポロと零れる涙でソイツの髪や服が濡れる。ロボットは一緒には泣いてくれない。抱きしめてくれているので、表情は見えないが、やっぱり、彼は無表情なのだろう。
同情などでもない、ただ俺の寂しさに寄り添うだけの存在、なのかもしれない。
紛らわして、偽物で誤魔化した寂しさ。零れる涙は本物で、俺は、自分が寂しくて仕方がないんだと思った。一人で暮らし始めて初めて強く実感した。不在の父。顔も何か月も見ていない。頼る相手も、話し相手もいない一人の家で、口はあまり聞かないが黒子が居ることが、安心した。
そういえば、学校から帰ってきたときに、かならず「おかえり」と、声をかけてくれてたなっと、思った。
「一人より二人だ、これで少しは安心だ」と、言った父。俺の寂しさに寄り添うロボット。誰ひとり、俺の心は理解できないし、俺も誰の心も理解できない。偽物でもイイ。抱きしめてくれる奴が居ることが幸せだ。それは、一時的に誤魔化した、偽りの安心だとしても、俺はもう少し、自分で自分をだまし続けることにした。
「黒子、ありがと」と、口にすると、俺を見上げたソイツの表情が少しだけ和らいだように見えた。
ロボットだからって、すべてが万能ではない。アレもコレもやってくれることもない。たまに俺の投げかけた言葉に返事をして、一緒に居てくれるだけ。それから、たまに抱きしめられる。黒子テツヤはそう言う奴。
「お前、バスケは好きなの?」と、聞けば、「好きですよ」と返された。
それもまた、作られた好き、なんだろうか。わからないまま、俺は、「じゃ、今日も少し付き合えよ」と、黒子と共に外へ出た。
end.
中学生火神くんの話です。
苦手な方はスルーしてください。
カプ色は強くありません。
- 悲しい嘘 -
父が俺にロボットを買い与えた。
「一人より二人だ」と、言って、これで少しは安心だっと、続けた彼の考えていることなんて、俺には全く分からないまま。父のことは、とても大好きで大切な人だけど、本当に俺には分からないことだらけだし、わかりたいと思ってもわからないことが大半だ。
中学生の一人暮らし。バカみたい。本の物語でも、もっと現実味のある設定を考えそうなのに、俺はソレをやってる。一人というのには、語弊があるのかもしれない。父が買ってくれたロボットは、人間と本物そっくりで、どこから見ても人間にしか見えない。ロボットは一人とカウントしてもイイのだろうか?
もしそうならば、俺は二人暮らしに属するのかもしれない。家族とも言い切れない、見た目は人間で温かみもあるけど、それは結局は作り物で、作られた体温で、そもそも、実際の人間とも距離の撮れない俺がソイツに触れることはほとんどない。
一緒に住んでいるロボットの名前は、黒子テツヤと言う。ロボットと初めて会ったのは、父が仕事の都合で日本では一緒に住めないと俺に伝えたレストランで出会った。
そいつは、人間みたいなつくりのくせに、殆ど表情も変えず、ニコリともせずに俺に名を名乗った。丁寧な言葉遣いと、頭を下げた仕草。どこから見ても人間。だけど、違う。愛想のない奴だなっと思った。
日本語よりも英語の方がスラスラと話せる俺に、日本語で話しかけてくる。どこまでプログラムされているんだろう?彼の性格や内面、すべてが作り物で、愛想がよいとしても、それもまた作り笑いなんだろうかと思ったら、無表情こそが、逆に彼らしいようにも思えた。
「一人より二人だ、これで少しは安心だ」
そう、父は言った。
俺は全く、安心ではなかった。中学生。まだ十代前半の俺。いきがっても大人とは言えない。大人は何歳からなんだろう?
何才だったら父は、俺一人でも安心なんだろう? 少しは安心っというけど、他の埋められていない不安な部分はどのぐらいの大きさなんだろうか。自分の思い描く不安の大きさとの差異はどのぐらいなのだろう。
わからないことだらけだ。隣の席に腰を下ろしたロボットの顔を伺う。つるりとした肌。ガラス玉みたいな目ん玉。柔らかく口角が上がることもない。くるりと俺の方を見たソイツは、「これからよろしくお願いします」と、また頭を下げた。
「ロボットの操作や設定は既にプログラムされているし、彼は何かを食べることもない。あ、たまに充電が必要だけど2か月に一度ぐらいだし、水にぬれたからって壊れることもないから安心してくれ」
本当に人間みたいだろう?
確かにソイツは人間みたいだ。普通にしゃべるし、普通に動くし、呼吸もしているみたいだ。人間の振りをしたロボットでしかない。元から無口な性格なのか、話しかけてくるようなこともほとんどない。
一緒に暮らしたからと言って、俺がソイツを気に掛けることもないし、ソイツのために何かをすることもほとんどない。初めこそ、何か食べるのかな?っと、ご飯を用意したところ、「僕はロボットなので、何かを食べることはありませんのでお気遣いなく」と、言った。
一人より二人だと、言った父を思い描く。二人食卓に居たとしても、一人でだけが食べる食卓は味気ない。
一つだけ良いことがあるとすれば、ソイツはバスケを一緒にしてくれた。学校で部活にも所属できない浮いた存在の俺。日本語がうまくなく、日本語以外だとしても上手に思ったことを言えない。ましてや、中学生の日本人が英語で話しかけても殆ど伝わることなんてない。
伝えられない、知ってもらえない。話せたとしても相手のことを全部理解できないのに、話も満足にできない俺に世間は残酷だ。話しかけられても言葉がスッと出てこない。思ったことが言葉にしたくても、なんて言えばいいのかわからないのだから、話すことも減った。
だから、言葉もあまり必要ない体を動かすバスケを一緒にしてくれる存在は貴重だった。あまり上手なプレイヤーではなくとも、ともに何かをしてくれるのは嬉しかった。会話は途切れるけど、ボールは俺の手元に飛んでくるし、俺の手元からソイツへ。
ソイツの下手くそなシュートに久しぶりに笑ったりもした。
それから、俺は、飯は食べないとしても風呂に入ることは進めた。汗はかくことはしないが、汚れはするだろう。学校へ行っている間はソイツが何をしているのかは知らない。たまに洗濯物が畳んであったりはする。ロボットならば、家に帰ってきたら飯ぐらい作ってくれていてもいいのに、家事はあまり得意ではないらしい。
たまにかかってくる父からの電話に「彼との生活はどうだ?」と、聞かれる。「順調だよ」
心配の掛けたくない俺は、そう、口にすることが精いっぱいだ。本当は、上手くいっていない。一人より二人だというのなら、もう一人は父が良い。一人で俺を育てようとしてくれてるから、仕事をしているんだ。俺がわがままを言って、父に迷惑はかけたくない。
このごろ料理が楽しいことを父に伝える。何が作れるようになっただとか、たわいない話。ちゃんとご飯を食べているよ。心配しないで。俺は一人でも大丈夫だ。電話から聞こえる父は、必要なものが有ったら、すぐに言えよと、声をかけてくれる。
声だけじゃなく、ココに居てほしいな。
電話をし終わった俺を、ソイツがやっぱり無表情で俺を見ていた。ジッと見られることに、俺の口にしなかった気持ちが見えてしまっているように感じて居心地が悪い。
「火神くん」と、ソイツは俺を呼ぶ。
「お前は、なんで俺と一緒にいるの? 買われたから?」
ロボットの所有者にしたがっているだけなんだろう。ソイツは日々、何を思って、何を感じて・・・そもそも、何かを考えたりするのかはわからないが、ロボットは何にしたがっているのだろう。
プログラムされた指示から俺と一緒に暮らすことしか、ないのかもしれない。俺がバスケをしたいなっと、気まぐれに誘うときに一緒にバスケをしに行くときは、誘われた行為が、彼への指示となって、突き動かされるんだろうか。
「僕は、黒子テツヤと名前があるロボットです。君と暮らすために存在しています」
彼はもしかしたら、もっとたくさんの言葉を知っているのかもしれない。俺があまり言葉を知らないから、簡単な言葉で伝えようとしてくれてるのだろうか。ロボットの知能はどれぐらいなんだろう。メモリーに詰め込まれただけ賢くなれるのだろうか?
「火神くんを守る存在です」
「・・・何から守ってくれるんだ?」
「寂しさ」
ポツリと言われた言葉とともに、ソイツは近づいてきて俺の背に手をまわした。ギュッと抱きしめられて、急に泣けてきた。俺の心臓の音を聞くように胸元に耳を押さえつけたソイツが、大丈夫ですよっとでも言うように背を撫でる。
作られた温もりだけど、こんなにも、安心する。ポロポロと零れる涙でソイツの髪や服が濡れる。ロボットは一緒には泣いてくれない。抱きしめてくれているので、表情は見えないが、やっぱり、彼は無表情なのだろう。
同情などでもない、ただ俺の寂しさに寄り添うだけの存在、なのかもしれない。
紛らわして、偽物で誤魔化した寂しさ。零れる涙は本物で、俺は、自分が寂しくて仕方がないんだと思った。一人で暮らし始めて初めて強く実感した。不在の父。顔も何か月も見ていない。頼る相手も、話し相手もいない一人の家で、口はあまり聞かないが黒子が居ることが、安心した。
そういえば、学校から帰ってきたときに、かならず「おかえり」と、声をかけてくれてたなっと、思った。
「一人より二人だ、これで少しは安心だ」と、言った父。俺の寂しさに寄り添うロボット。誰ひとり、俺の心は理解できないし、俺も誰の心も理解できない。偽物でもイイ。抱きしめてくれる奴が居ることが幸せだ。それは、一時的に誤魔化した、偽りの安心だとしても、俺はもう少し、自分で自分をだまし続けることにした。
「黒子、ありがと」と、口にすると、俺を見上げたソイツの表情が少しだけ和らいだように見えた。
ロボットだからって、すべてが万能ではない。アレもコレもやってくれることもない。たまに俺の投げかけた言葉に返事をして、一緒に居てくれるだけ。それから、たまに抱きしめられる。黒子テツヤはそう言う奴。
「お前、バスケは好きなの?」と、聞けば、「好きですよ」と返された。
それもまた、作られた好き、なんだろうか。わからないまま、俺は、「じゃ、今日も少し付き合えよ」と、黒子と共に外へ出た。
end.
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