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黒火「それはとても美しい」

写真家 黒子くん×被写体 火神くん
※ モブ視点と、切り替えでちょっとだけ黒子君視点です。

パロです。苦手な方はスルーしてください。





ー それはとても美しい ー


 その写真集を手に取ったのは偶然だった。
 時間潰しに訪れた本屋で友人が先日、ネットで見た動物の写真集が可愛かった、なんて、オススメしていたのを思い出して珍しくマンガ雑誌でなく写真集のコーナーに立ち寄っただけだった。
 オススメだと言っていたのはコレだったっけ?
 ボンヤリとした記憶の中で次々に本を手に取っていく。可愛らしい動物の写真に添えられた詩が、少々気恥ずかしい。友達の朗らかな笑顔を思い浮かべて、確かにアイツならこう言ったモノ好きそうだなっと、少しだけ笑った。
 一通り動物の写真を見て、見るものと一緒に移動していったら被写体が動物から人間に変わっていた。
 最新のモノなのか平積されてたソレ。適当に取った写真集はモノクロの表紙で、鍛えられた男性の首から腰あたりをトリミングしたシンプルなモノ。
 タイトルも手書き文字で「K」と書いてあった。
 紙に鉛筆でサラッと書いた文字をそのまま使っているのか、よく見ると文字のエッジがギザギザと薄く擦れている。服装は着飾る風でもなく、黒のTシャツにジーンズ姿。首元に細いチェーンでリングを通したネックレスと、左手薬指のリング。

 1ページめくってみると、そこにも手書きの文字で「愛しいKへ」と書いてあった。

 日常を切り取った中の写真が載っている。被写体はすべて同一の人物だろう。顔を正面から取ったモノはない。
 ギリギリぼやけた焦点で伏せられた長い睫が画面端に映っているモノがあった。三角座りのポーズで膝を抱えた男性が緩く笑っているようにも、泣いているようにも見える。
 殆どが首から下だけ、たまに後ろ姿。すべて白黒の世界で彼が変わった髪色をしている事が少しだけ伺える。鍛えられて、身長もありそうな身体。
 自分が何故この写真集に興味を持ったのかわからない。写真にも興味があるような人間でもない。ただの時間潰しでやってきただけなのに、真剣に見ているのに気がついた。1枚のページを見るのにもかなり時間をかけて見てしまっている。表情が見えないってだけで、この写真がどういう意味で撮られているのか、気になって仕方がない。隅々まで見てしまう。
 ハッとしたついでに、腕時計を見ると既に待ち合わせの時間が近いことに驚いて、だけど、写真集を購入してから僕は集合場所へと走った。


 用事を済ませてから大事に抱えていた写真集を開いた。1ページ目の「愛しいKへ」の文字を指でなぞっていた。
 本屋で目にした時も見た最初の方の数ページを、またじっくりと眺めた。髪の毛がツートンで染められてるのか毛足が濃い色の男性。大きな手で料理を作っているカットや、日常をスナップした中で、バスケをしている写真が特に多い。
 大きな手、足で自在にボールを操っている。写真から息づかいさえ聞こえてきそうだ。バスケをしている時は、表紙で見た二つの指輪はソッとタオルにくるまれて一時的に避難している写真が載っていた。
 すべてが大切に切り取られた瞬間なんだと感じた。知らずにこぼれた溜息。ドキドキしながら、奥付ページを見る。著者の所に、”黒子”とだけ、書かれていた。略歴などもなく簡単に今まで出した写真集のタイトルが綴られている。
 ページの右端に、二つのリングの写真が載っていた。それは、チェーンがついた指輪と、薬指にはめられていた指輪のセットではなく、薬指にはめられた指輪と同じデザインで、一回り小さな指輪が並んでいた。

「ペアリング・・・」

 自然と言葉がこぼれていた。
 どのページを見ていても、感情があまり見えない作者の表情が見えたように感じた。名前も黒子と書いてあるだけ。愛しいKというのが、たぶん、この作品の中の人物だろう。と、言うことは、黒子は、女性なのかな?
 作者の気配は作品の中に見えない。見えるのは、写真の中の男性の感情だけ。殆どが笑っている用に見えるのに、時々寂しさが見え隠れする。
 黒子が、恋人の彼の写真を撮り続けた写真集なんだろうか?
 写真集を見終わった余韻のまま、ほかの作品も見たくて、すぐにパソコンを立ち上げて、通販サイトを開いた。ついでに黒子についても調べる。

 黒子は男とも女とも噂されているらしい。
 被写体が男性で、どの写真集にも「愛しいKへ」と文字が添えられているらしい。単純に考えて恋人との見解が多い。それから、恋人が男性なら、黒子は女性説が大半を占めているのも世間一般的なことを考えればわからなくもない。
 だけど、今回の写真集が発売したことで、黒子は男性説が急増しているらしいこともわかった。
 すべては、奥付の二つのリングを見ただけの憶測でしかない。女性にしてはリングのサイズが大きいのではないか?との意見。
 作品を見ても性別はわからない。すべてが靄の中にいる黒子。わかることは、黒子がとてもKを愛していることだけ。
 とても美しい写真集を、もう一度開いた。

 僕も愛しいと思える存在がほしいなっと、思った。



ーーーーーー


「おはよう黒子」

 声をかけられてベッドからモゾモゾと顔を出す。重たい瞼をあけると、火神君に写真を撮られた。
 勝手に撮らないでくれと、抗議の視線を向けると、「起こるなよ」と、横に腰掛けた彼が僕の髪を柔らかな手つきで撫で上げた。
 さらりと滑った手が頬へ滑る。頬に堅いツルリとした感触がふれた。

「また夜更かしして本読んでたんだろ?」
「・・・・」
「なんか言えよ」
「お腹すきました」

 僕の返答は彼のお気に召したようで、フッと唇を上げて嬉しそうに笑った。そのまま、ワシャワシャと乱暴に頭を撫でられる。

「飯作ったから、早く顔洗ってこい」

 はーいと、返事をして、僕は彼の置いていったデジカメを少しいじった。画面には半目のだらしなくボンヤリと気の抜けた僕の顔が写っていた。



end.
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