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黒火/僕の名前は

2号が見てる。



- 僕の名前は -


 初めまして、僕の名前は、「テツヤ2号」。高校バスケ部にて、まさにマスコット的キャラの位置づけ。だけど、僕には、ちょっとした不満がある。
 それは、名前に”2号”と、付く所だ。僕に似ている人間が居る。目が似ていると、皆が言うので、自分の顔はあまりマジマジと見た事がないが、目の前の人間が僕の顔に似ているという事だろうか?
 クルリとした瞳で見上げてみるも、目の前の相手は表情を変えずに「ご飯ですか?」と、問うてくる。別にご飯のつもりで見上げたわけではないけど、それは良い申し出だっと、「ワンっ!」と、一声鳴いた。
 僕用の皿にザラリと、ドッグフードが入れられる。それを、カリカリ言わせながら口に入れつつ、チラリと黒子の方を見た。
 時々、雰囲気も似ていると言われるけど、僕にはどうだっていい。散歩をして、バスケットする皆を応援して、たまにボールで遊んで、日の当たりの良い所で昼寝をして、お腹いっぱいご飯を食べて、夜はぐっすり寝れれば。
 「2号〜?」っと、皆が呼ぶ。僕の事は、テツヤと読んで欲しい。でも、テツヤは1号である彼の名前だ。所詮、僕なんて、二番手。生まれたのが先だからって・・・。僕から見て、テツヤ1号は、どこかボーッとしていて、表情が読めない。
 皆から、「黒子」と、呼ばれているんだから、「テツヤ」の座は僕に譲ってくれても良いと思う。

 それとはかわって、部内で彼の相棒と言われる「火神くん」は、なかなかに面白い。
 彼は、どうやら、僕だけじゃなく、僕が属する犬という種類が苦手らしい。人間に属していても人間が苦手な人間も居るぐらいだ、別の生き物である僕の事が少々苦手だろうと、目を瞑ろう。それに、彼は、僕の面倒をビビりながらも見てくれる事が多いので、寛大な僕は彼を許そうと思う。
 休みの日にやってきて、ご飯に散歩、そして、バスケの練習を見せてくれる。ありがとう!っと、飛びつくと、泣きながら走り出すので、追いかけっこか!?っと、俺も走る。なかなか良い運動が出来る。
 あまり表情を変えない黒子が、僕を抱えて、火神くんを追いかける事もある。振り回されるのは嫌いだが、その時の彼は楽しそうに笑っている事がある。よくわからないが、黒子は火神くんの態度が面白いんだともう。
 僕が仲間の印に、ペロリと舐めてやると、ぎゃぁぎゃぁ言ってハシャグ火神くん。それを見てる黒子の顔が、僕は割と好きだ。僕がご飯を食べて幸せそうな顔も、多分こんな顔なのかもしれない。

 そんな、火神くんの様子が最近、何処か変だ。

 別に、僕の事が大好きになったわけではない。やっぱり、ヒィヒィ言って、走り出すし、舐めれば目に涙を溜めている。散歩には連れて行ってくれるが、リードの距離が遠い。そして、すれ違う犬に道端に寄って、道を譲る。
 ご飯もたっぷりとくれて、少しだけ慣れたのか、軽く背中を撫でてくれる。温かい彼の手が僕は好きだ。それは、いつも通りの彼の態度だ。
 だけど、僕の事を「テツヤ」と、恥ずかしそうに呼ぶ。それも、決まって僕と一緒の時だけ。普段は、皆と一緒で、「二号」と、呼ぶのに。ついに僕を、本物のテツヤとして、彼は認めてくれたのだろうか?
 首を傾げて、火神くんの方を見ると、頬を両手でギューッと、押しつぶして、一人で照れている。俺の顔を見るように、しゃがみ込んだ火神くんの顔が近い。「テツヤ」と、また呼ばれたので、「ワンっ」と返事をしたら、驚いて、後ろに尻餅をついてしまった。
 「うぉっ」と、短く叫んだ彼が、転がって、たまたま手を広げて、その姿が、僕を抱き上げる時の人間の素振りに似ていたので、僕は、抱っこか!?っと、飛びつく。目を白黒させた火神くんが「わっ、わっ、やめっ・・・て、テツヤ!」と、声を上げる。
 やめろと言うけど、火神くんの手は僕を振り払おうとはしていない。単にビビっているだけかもしれないケド。コレ幸いと、普段、舐めてやれない分、顔中舐めてやった。
 「テツヤ・・・て、てつ・・・・2号、やめて」と、弱々しい声。
 なんだか、黒子の気持ちが分かった気がした。へっへっと、息をして、僕の事を撫でてくれと、大きな手に、頭をすりつける。
 そこへ、「2号!」と、急に呼ばれた。サッと顔を上げると、1号、もとい、黒子の登場だ。涙目の火神くんは、「黒子ぉ〜」と、情けない声を出して、完全に、逃げ腰。
 僕たちの横に、しゃがんで、僕の脇腹に手を入れる。ひょいっと、簡単に持ち上げられて、黒子の手の中に収まる。黒子の上着のポケットから、たまにもらえるササミジャーキーの匂いがして、尻尾を振る。
 見上げた先の黒子は、僕へ目を向けず、ジッと、火神くんを見ている。そして、そっと、小さな声で、「僕の事、テツヤって、呼んでくれても良いですよ」と、言った。
 顔を真っ赤にさせて、火神くんがモゴモゴと、口の中で何かを言う。ニヤリと笑って、「大我」と、言った黒子はスゴく嬉しそうな顔をしていた。それとは、反対に、火神くんは、より顔を赤くさせて小さく「んだよぉ」と、言って、「テツヤ」と、言った。
 僕は、「ワンっ!」と、元気よく返事をして、同時に、「はい」と、返事をした黒子の声と重なった。ソレを見た、火神くんは、とても可笑しそうに顔をほころばせて、「テツヤぁ〜」と、語尾を、長く言ってから、「2号」と、続ける。
 「なんですか、もう・・・」と、口を尖らせるけど、黒子も笑って、僕を撫でてくれた。



end.
2号で、テツヤ呼びの練習、カワイすぎか!
だけど、私が書くと、全く可愛くない。

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