黒火/オバケなんてないさ
中学生の火神くんの話。
- オバケなんてないさ -
あと2ヶ月したら、中学を卒業する。そんな時期に、俺の前にオバケが現れた。
バスケ以外にやる事の無い俺は、中学バスケ部を退部してから、一人でストバスに行ったり、馬鹿みたいに有り余った体力を持て余して、走りに行ったりするぐらいしか、時間を潰す方法を知らない。一人暮らしもあって、料理を時間をかけて作ってみたりもするけど、それも、一人で食べるご飯は味気ない。
一人でのただいまに、おかえり。いただきますと、ごちそうさま。広い部屋で響く自分の声。毎日ソレの繰り返し、三年生になって、高校受験の事で少々机に向かう事もあったけど、結局はどうにかなって、進学先も無事にある。起伏の無い日々の中で、たまに父からかかってくる電話を待つ。
自分だけじゃない声が携帯越しでも聞こえる。俺のことを俺と認識して、名前を呼んでくれる。心配させたくないから、自然と我慢する事を覚えてしまったのかもしれない。父は、俺にワガママを言うよう仄めかす。一番言いたいワガママは口にしない。一緒に居たいって、思うのは、中学生にもなって、子供っぽいのかどうなのか、わからない。自分みたいに中学生で広いマンションで一人暮らしをしている奴なんて、今まで見た事が無いから。
いつも通りの会話。変わらない優しい声、うんうんっと、ぶっきらぼうに相槌を打ちながらも、恋しい存在。
「うん、じゃぁ、また」っと、切り上げた通話後、目を閉じてソファに携帯を投げ出す。余計に寂しい心を誤摩化すように、外に出た。外はもう暗い時間だったけど、体格もあってか、誰かに引き止められる事もないまま、プラプラと歩いた。
コレからって、イメージが全くない。前向きなような、後ろ向きなような。誰かに聞いてもらいたいような複雑な部分を言葉にできない。英語でも、日本語でも、伝えるのって難しい。ソレ以前に、誰に伝えると言うんだろう。伝える相手も居ない。
溜息とも深呼吸とも取れる曖昧な息を吐いて、着た道を引き返した。
部屋のロックを解除して、当たり前のように、誰も居ない部屋に「ただいま」と、声を掛けた。もちろん返ってくる言葉は無いと油断していた。いや、返ってくる言葉なんて無くて当然なはずなのに、真後ろの少し低い位置から、「おかえりなさい」と、声がした。
ビックリして、振り返ると、水色の頭で、なよっとした男がボンヤリと俺を見上げていた。ビビった俺は、慌てて部屋の中に逃げ込み、鍵を閉めた。バクバクと煩い心臓に手を伸ばす。走ったわけでもないのに、息があがっている。
そっと、扉の覗きから、外を伺う。誰もいない。誰かが何処かに行ったような気配もなかった。怖いなっと思うよりも、何故だか、耳に心地よい声だと思った。オバケだとか幽霊だとか、信じてない。信じたくないが本当だけど。だって、怖い。
心地よい声だと思ったけど、やっぱり、夜になって、ベッドに横になって、目を閉じると、怖くて、ビビってるくせに、ベッドのしただとか、カーテンの裏だとかを怖々とチェックしてしまった。
それが、オバケとの初めての出会い。
オバケは、神出鬼没。突然現れる。幾度か、「ただいま」と、言うと、「おかえりなさい」と、声を掛けてくるだけだった。俺の部屋の中にまでは踏み込んでこないと思っていたのに、ある日、普通に俺の部屋のソファで何か文庫本を読んで寛いでいた事もある。
料理をする前は、居なかったのに、飯が出来て、食卓に並べている頃に、ソファに座っているのに、気付いた。始めは、ビックリして、キッチンに隠れて、流し越しにオバケを伺った。何もかも詰まらなそうな顔をした、そいつは、ボンヤリとした顔で、口を動かした。
何か言ったのかもしれない。でも、俺の耳には聞き取れなかった。
何をするでも無いオバケは、何度も俺の前に現れ、まるで生きているように動いていた。会う回数が増えるのと比例して、オバケが見えている時間が増えたように感じる。実際、時計を逐一見ているわけでもないので、正確な事は分からないが。
俺が飯を食う時は反対側の椅子に座って、俺が食べている顔を見ている事もあった。オバケは、殆ど喋らなかった。喋らなかったと言うか、口は動かしても、殆どが声にならなかった。ただ、おかえりなさい、と、何故か、俺のことを火神くんと、呼んだ。
俺の名前を呼ぶオバケってのも怖いはずなのに、俺はその存在を徐々にだけど受け入れ、慣らされるように俺の生活になじんでしまった。
家に帰ってくれば、おかえりなさいっと、誰かが言ってくれる。それが嬉しい。単純に頭が行かれちまったのかもしれない。寂しさから、空想の友達を作ってしまったのかもしれない。でも、空想の友達のくせに一緒にバスケはしてくれないし、一緒に飯も食ってくれない。それに、相手の名前も知らない。ましてや、オバケだし。
おかえりなさいの言葉も何故だかいつも玄関を開ける俺の後ろから聞こえるのも不思議だ。
触れる事も出来ない存在だけど、確かに、彼は居る。日を追うごとに、見えている時間が増えてきた。オバケは、時々、俺の部屋で生活するようにウロウロしている。彼はもしかしたら、俺の生きてる時間軸ではない存在なのかもしれない。なんて、言うか、パラレルワールド、みたいな。それが、たまたま、リンクしてしまって、オバケとして見えるのかもしれない。
テレビでたまたま聞いた言葉と、あやふやな仮定。オバケはたまに俺のいない場所へ向かって「火神くん」と、呼びかけている事があった。例えば、俺がキッチンに居て、オバケは、ソファで本を読んでいたと思ったら、立ち上がって、寝室の方へ顔を覗かせ、名前を呼ぶ。俺はコッチだけど?っと、思って、寝室を覗きに行くと、オバケが、少しだけ、嬉しそうな、優しそうな目をしてベッドを見ている。
なぁ、お前には何が見えるの?お前からしたら、俺がオバケに見えるの?お前が名前を呼ぶ火神は、俺のことなの?
朝、目を覚ますと、オバケが横で寝ていた。生活になじんだ存在とは言え、こんなにも近くに居るのは初めてだった。しかも、自然とソレを受け入れたような距離感で俺は端に寄って、オバケのスペースを確保して寝ていた。最初、寝ぼけて、オバケに頭を愚図るように擦り付けてたような気がする。触れる事も出来ない奴なのに、隣が温かいような気がして、温かさに手を伸ばしていたように、ボンヤリと覚えている。
起き上がって、まだ、目を閉じている横のオバケの顔を見て、名前を呼びたくなったけど、俺はオバケの名前を知らない。口を開けただけで、何も音にならなかった。
馬鹿みたいだけど、寝ているオバケを避けて、俺は学校へ行く準備をした。飯を食べて、顔を洗って、卒業間近で、授業らしい授業も無く、ダラダラと時間を過ごしているような学校でも、怠けずに行く。
気付いたら、オバケも学校へ行く準備をしたのか、服を着替えていた。そういえば、その服装、俺が進学する学校の制服だなって思った。
「お前って、もしかして、オバケじゃなくて、俺が高校生になって出会う友達かなんか?」
いつも一人で過ごす広い部屋に、対して仲の良い友人も居ない中学のクラス。人付き合いが下手だ。上手く言葉が伝えられないし、バスケは好きだけど、満足に出来てないような日々。好きなだけじゃダメで、空気を読まなくちゃなじめない。変わっている、は、中学生男子には、褒め言葉にならない。
帰国子女で、中学のくせに一人暮らしで、バスケ馬鹿過ぎて皆に煙たがられて、俺、気付いたら全部一人だ。これからも一人だと漠然と考えていたのかもしれない。そんなときに、おかえりと言ってくれるオバケが現れた。
怖いとか、逃げるとかも、せずに俺は、コイツを受け入れてた。
いつも一人の俺が、高校生になって、この部屋に父ではない誰かを入れる事があるのだろうか。隣で寝て、布団を譲る程に仲の良い存在が出来るんだろうか。
オバケは、ボヤリとした眼差しをこちらに向けて、「火神くん」と、俺の名前を呼んだ。しっかりと俺と視線があった。口を動かし、でもやっぱり何も聞こえなかった。
「わりぃ、もう、行かなきゃ」
オバケに話しかけている自分が信じれない。変に笑えて、ぎこちない笑顔が浮かんだ。オバケがソッと、俺の頭に手を伸ばして、頭を撫でる仕草をした。温かみも、重みも無い、触れられない事がもどかしい。でも、確かに頭を撫でられた。俺はグッと言葉を堪えた。そしたら、反動で涙が一つポロリと零れた。
オバケが口を動かして何か言った。俺には、「いってらっしゃい」に、見えた。乱暴に涙を袖口で拭いて、「いってきます」と、返事をした。
その日から、オバケは消えた。
むしろ、俺は、オバケの存在自体忘れた。オバケと過ごした日々なんて、無かった。オバケなんて居なかった。アレは、夢か何かだったのかと思い起こす事も無い。
だって、俺は、オバケとなんて出会ってないから。
高校生になって、またバスケを始めた。一緒になって、バスケに熱くなってくれる仲間と出会えた。俺のことをちゃんと、叱ってくれるし、笑い合える奴ら。練習してたのが、上手く出来たりすると、先輩が頭をグシャグシャと乱暴に撫でてくれる事もある。同学年の奴らが背中を叩く、黒子と、手を合わせる。
一緒の時間を沢山過ごした。俺の閑散とした部屋に、部活のメンバーが着たりする。一人の時間が減った。父に報告する事が増えた。ただ、相槌を打つだけではなく、アレもコレも聞いて欲しい。
たまに、黒子だけが遊びにくる事もある。俺の後ろに付いて玄関をくぐるとき、「ただいま」と、言うと、「おかえりなさい」と、言ってくれる。
優しい声。俺、この声知ってる気がする。何故だか懐かしく思って、嬉しくなって、「おぅ」と、返事をした。
end.
上手に文章に出来ません。いずれ、火神くんの部屋で行動する未来の黒子と、中学生の火神くんが同じ時間軸に存在していたとしたら・・・?って、話。
- オバケなんてないさ -
あと2ヶ月したら、中学を卒業する。そんな時期に、俺の前にオバケが現れた。
バスケ以外にやる事の無い俺は、中学バスケ部を退部してから、一人でストバスに行ったり、馬鹿みたいに有り余った体力を持て余して、走りに行ったりするぐらいしか、時間を潰す方法を知らない。一人暮らしもあって、料理を時間をかけて作ってみたりもするけど、それも、一人で食べるご飯は味気ない。
一人でのただいまに、おかえり。いただきますと、ごちそうさま。広い部屋で響く自分の声。毎日ソレの繰り返し、三年生になって、高校受験の事で少々机に向かう事もあったけど、結局はどうにかなって、進学先も無事にある。起伏の無い日々の中で、たまに父からかかってくる電話を待つ。
自分だけじゃない声が携帯越しでも聞こえる。俺のことを俺と認識して、名前を呼んでくれる。心配させたくないから、自然と我慢する事を覚えてしまったのかもしれない。父は、俺にワガママを言うよう仄めかす。一番言いたいワガママは口にしない。一緒に居たいって、思うのは、中学生にもなって、子供っぽいのかどうなのか、わからない。自分みたいに中学生で広いマンションで一人暮らしをしている奴なんて、今まで見た事が無いから。
いつも通りの会話。変わらない優しい声、うんうんっと、ぶっきらぼうに相槌を打ちながらも、恋しい存在。
「うん、じゃぁ、また」っと、切り上げた通話後、目を閉じてソファに携帯を投げ出す。余計に寂しい心を誤摩化すように、外に出た。外はもう暗い時間だったけど、体格もあってか、誰かに引き止められる事もないまま、プラプラと歩いた。
コレからって、イメージが全くない。前向きなような、後ろ向きなような。誰かに聞いてもらいたいような複雑な部分を言葉にできない。英語でも、日本語でも、伝えるのって難しい。ソレ以前に、誰に伝えると言うんだろう。伝える相手も居ない。
溜息とも深呼吸とも取れる曖昧な息を吐いて、着た道を引き返した。
部屋のロックを解除して、当たり前のように、誰も居ない部屋に「ただいま」と、声を掛けた。もちろん返ってくる言葉は無いと油断していた。いや、返ってくる言葉なんて無くて当然なはずなのに、真後ろの少し低い位置から、「おかえりなさい」と、声がした。
ビックリして、振り返ると、水色の頭で、なよっとした男がボンヤリと俺を見上げていた。ビビった俺は、慌てて部屋の中に逃げ込み、鍵を閉めた。バクバクと煩い心臓に手を伸ばす。走ったわけでもないのに、息があがっている。
そっと、扉の覗きから、外を伺う。誰もいない。誰かが何処かに行ったような気配もなかった。怖いなっと思うよりも、何故だか、耳に心地よい声だと思った。オバケだとか幽霊だとか、信じてない。信じたくないが本当だけど。だって、怖い。
心地よい声だと思ったけど、やっぱり、夜になって、ベッドに横になって、目を閉じると、怖くて、ビビってるくせに、ベッドのしただとか、カーテンの裏だとかを怖々とチェックしてしまった。
それが、オバケとの初めての出会い。
オバケは、神出鬼没。突然現れる。幾度か、「ただいま」と、言うと、「おかえりなさい」と、声を掛けてくるだけだった。俺の部屋の中にまでは踏み込んでこないと思っていたのに、ある日、普通に俺の部屋のソファで何か文庫本を読んで寛いでいた事もある。
料理をする前は、居なかったのに、飯が出来て、食卓に並べている頃に、ソファに座っているのに、気付いた。始めは、ビックリして、キッチンに隠れて、流し越しにオバケを伺った。何もかも詰まらなそうな顔をした、そいつは、ボンヤリとした顔で、口を動かした。
何か言ったのかもしれない。でも、俺の耳には聞き取れなかった。
何をするでも無いオバケは、何度も俺の前に現れ、まるで生きているように動いていた。会う回数が増えるのと比例して、オバケが見えている時間が増えたように感じる。実際、時計を逐一見ているわけでもないので、正確な事は分からないが。
俺が飯を食う時は反対側の椅子に座って、俺が食べている顔を見ている事もあった。オバケは、殆ど喋らなかった。喋らなかったと言うか、口は動かしても、殆どが声にならなかった。ただ、おかえりなさい、と、何故か、俺のことを火神くんと、呼んだ。
俺の名前を呼ぶオバケってのも怖いはずなのに、俺はその存在を徐々にだけど受け入れ、慣らされるように俺の生活になじんでしまった。
家に帰ってくれば、おかえりなさいっと、誰かが言ってくれる。それが嬉しい。単純に頭が行かれちまったのかもしれない。寂しさから、空想の友達を作ってしまったのかもしれない。でも、空想の友達のくせに一緒にバスケはしてくれないし、一緒に飯も食ってくれない。それに、相手の名前も知らない。ましてや、オバケだし。
おかえりなさいの言葉も何故だかいつも玄関を開ける俺の後ろから聞こえるのも不思議だ。
触れる事も出来ない存在だけど、確かに、彼は居る。日を追うごとに、見えている時間が増えてきた。オバケは、時々、俺の部屋で生活するようにウロウロしている。彼はもしかしたら、俺の生きてる時間軸ではない存在なのかもしれない。なんて、言うか、パラレルワールド、みたいな。それが、たまたま、リンクしてしまって、オバケとして見えるのかもしれない。
テレビでたまたま聞いた言葉と、あやふやな仮定。オバケはたまに俺のいない場所へ向かって「火神くん」と、呼びかけている事があった。例えば、俺がキッチンに居て、オバケは、ソファで本を読んでいたと思ったら、立ち上がって、寝室の方へ顔を覗かせ、名前を呼ぶ。俺はコッチだけど?っと、思って、寝室を覗きに行くと、オバケが、少しだけ、嬉しそうな、優しそうな目をしてベッドを見ている。
なぁ、お前には何が見えるの?お前からしたら、俺がオバケに見えるの?お前が名前を呼ぶ火神は、俺のことなの?
朝、目を覚ますと、オバケが横で寝ていた。生活になじんだ存在とは言え、こんなにも近くに居るのは初めてだった。しかも、自然とソレを受け入れたような距離感で俺は端に寄って、オバケのスペースを確保して寝ていた。最初、寝ぼけて、オバケに頭を愚図るように擦り付けてたような気がする。触れる事も出来ない奴なのに、隣が温かいような気がして、温かさに手を伸ばしていたように、ボンヤリと覚えている。
起き上がって、まだ、目を閉じている横のオバケの顔を見て、名前を呼びたくなったけど、俺はオバケの名前を知らない。口を開けただけで、何も音にならなかった。
馬鹿みたいだけど、寝ているオバケを避けて、俺は学校へ行く準備をした。飯を食べて、顔を洗って、卒業間近で、授業らしい授業も無く、ダラダラと時間を過ごしているような学校でも、怠けずに行く。
気付いたら、オバケも学校へ行く準備をしたのか、服を着替えていた。そういえば、その服装、俺が進学する学校の制服だなって思った。
「お前って、もしかして、オバケじゃなくて、俺が高校生になって出会う友達かなんか?」
いつも一人で過ごす広い部屋に、対して仲の良い友人も居ない中学のクラス。人付き合いが下手だ。上手く言葉が伝えられないし、バスケは好きだけど、満足に出来てないような日々。好きなだけじゃダメで、空気を読まなくちゃなじめない。変わっている、は、中学生男子には、褒め言葉にならない。
帰国子女で、中学のくせに一人暮らしで、バスケ馬鹿過ぎて皆に煙たがられて、俺、気付いたら全部一人だ。これからも一人だと漠然と考えていたのかもしれない。そんなときに、おかえりと言ってくれるオバケが現れた。
怖いとか、逃げるとかも、せずに俺は、コイツを受け入れてた。
いつも一人の俺が、高校生になって、この部屋に父ではない誰かを入れる事があるのだろうか。隣で寝て、布団を譲る程に仲の良い存在が出来るんだろうか。
オバケは、ボヤリとした眼差しをこちらに向けて、「火神くん」と、俺の名前を呼んだ。しっかりと俺と視線があった。口を動かし、でもやっぱり何も聞こえなかった。
「わりぃ、もう、行かなきゃ」
オバケに話しかけている自分が信じれない。変に笑えて、ぎこちない笑顔が浮かんだ。オバケがソッと、俺の頭に手を伸ばして、頭を撫でる仕草をした。温かみも、重みも無い、触れられない事がもどかしい。でも、確かに頭を撫でられた。俺はグッと言葉を堪えた。そしたら、反動で涙が一つポロリと零れた。
オバケが口を動かして何か言った。俺には、「いってらっしゃい」に、見えた。乱暴に涙を袖口で拭いて、「いってきます」と、返事をした。
その日から、オバケは消えた。
むしろ、俺は、オバケの存在自体忘れた。オバケと過ごした日々なんて、無かった。オバケなんて居なかった。アレは、夢か何かだったのかと思い起こす事も無い。
だって、俺は、オバケとなんて出会ってないから。
高校生になって、またバスケを始めた。一緒になって、バスケに熱くなってくれる仲間と出会えた。俺のことをちゃんと、叱ってくれるし、笑い合える奴ら。練習してたのが、上手く出来たりすると、先輩が頭をグシャグシャと乱暴に撫でてくれる事もある。同学年の奴らが背中を叩く、黒子と、手を合わせる。
一緒の時間を沢山過ごした。俺の閑散とした部屋に、部活のメンバーが着たりする。一人の時間が減った。父に報告する事が増えた。ただ、相槌を打つだけではなく、アレもコレも聞いて欲しい。
たまに、黒子だけが遊びにくる事もある。俺の後ろに付いて玄関をくぐるとき、「ただいま」と、言うと、「おかえりなさい」と、言ってくれる。
優しい声。俺、この声知ってる気がする。何故だか懐かしく思って、嬉しくなって、「おぅ」と、返事をした。
end.
上手に文章に出来ません。いずれ、火神くんの部屋で行動する未来の黒子と、中学生の火神くんが同じ時間軸に存在していたとしたら・・・?って、話。
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