哲御/どこまでもついていきます2
前の、哲御「どこまでもついていきます」の、続きみたいなもの。
哲御むずかしいよぉ~。
ー どこまでもついていきます2 ー
先日、哲さんとアダルトグッズの店に足を運んだ。何処へ行くかも告げられず、気軽に付いていった、あの時の自分に戻れるのなら忠告をしてやってから、ぐっと引き締めた精神で再度望みたい・・・いや、あんな恐ろしい場所には二度と行きたくないわっと、考え直して早々に心の中で白旗を上げた。
なんて、逃げ腰の状態の俺だけど、その日に言われた哲さんの気持ちを思い出す。男だから、したくて当たり前。俺が淡泊だから、ずっと我慢してたのかな?
口数の少ない彼のことを考え、お互いに野球漬けの日々で、性欲なんて二の次だと思っていたのは俺だけだったのかもしれない。俺のペースに合わせてくれてたのか?
それとも、真面目な彼にアダルトな店を紹介するようなユーモア(哲さんに悪い友人なんて居ないと思うのであえて、ユーモアと表記する)のある友人に唆されたか。
正直なところ、自分は、性的なものに関心がないタイプなんだと思っている。タイプなんて、曖昧な表現なのは、自分がその手のモノを前向きに欲していないせいか、実感がわかない。世間一般的にオナニーはするが、なんというか、機械的に?事務的に、だ。何となく仕方なくやっているようなモノだ。
普通は好きな女の子のことを考えたり、本や映像なんかをオカズにしてやるのは知っている。けど、自分は、何となく、最近してないなって、程度に性器を適当にイジっていたから、よくわからない。これは、多感な時期に気軽にオナニーできない寮生活をしていたからじゃないかと考えにたどり着いて、それとなく倉持に聞いてみた。
聞く相手を間違えたと思うよりも先に、このモヤモヤを解決したい一心だった。ホント俺はバカだった。あの時は得意分野ではない未知の世界へ踏み入れ混乱してたんだ。だから、悪いのは俺じゃない。
スマフォを片手にメッセージのアプリを立ち上げる、そして、まるで、「今日の昼飯、何?」っとでも聞くようにメッセージを投げかけた。
高校の時、オナニーどうしてた?みたいなことを聞いかけたはずだ。もう、履歴も消し去った今、細かくは覚えていない。だから、混乱していたんだ。
倉持は、俺に「はぁ!?」と、切れ気味に返事を返してきた。こちらが至って真面目であることが、何とか伝わり(俺はあの時、何をどう説明してたんだろう・・・)、相談相手は、どうやら、言葉を変に受け取ったらしく、当時のオカズだよっと、画像を送ってきた。
一応は、選んだんだと思われるが、可愛らしい女性が上手に手足を使って局部を隠した画像が送られてきた。びっくりした俺は、スマフォを投げた。運良くクッションの上だったので、壊れはしなかったが、恐る恐る手に取り、もう一度画面を見た。
ご丁寧に、画像の後に続くメッセージは、これで好きに楽しめよっと続けられていた。笑い声も書いてあったので、確実に、からかわれたんだと思う。
でも、違う、俺は当時オナニーなんて出来なかったから、彼らも同じような状況で俺同様に淡泊で、性的なモノに興味がないって返答が欲しかった。でも、違ったということがよくわかった。
俺が普通ではなかったことを目の当たりにした。
寮生活の彼らが隠れて性欲を発散させていたとすれば、実家から通っていた当時の哲さんは、わりと過激に・・・!?と、いらぬことを想像して、真面目な彼がそんなはずは!!!っと、自分自身に言い聞かせた。
自分はいったい、哲さんにどんなイメージを持っているのかわからないが、自分が淡泊で、かつ、性的なモノに免疫がないことがわかった。
倉持とのやりとりもそうだが、実は、先日のアダルトショップでのことを何度も悪夢として体験していた。あの時、商品を買う際に卑しく笑った店員の顔が恐ろしい。台の上でガタガタと揺れていた小さな玩具も恐い。それを、哲さんが持っている事実も、目を覚ました自分は恐いのだと何度目か夢にうなされて、起きたときにわかった。
何をそんなに自分はビビっているのだろう。
何かトラウマでもあるのかと思ったけど、考えたって、全く思い当たる節がない。これは単純に慣れが足りないだけだと適当に答えを出した。
俺は哲さんが好きだ。彼が求めてくれることに対して、とても嬉しい。たとえ、その求めていることが自分の理解できない未知の恐怖のことでも、出来ることなら応えたい。というか、彼が欲しいのなら、我慢してでも応えたいと思ってるぐらいに好き・・・だ。
本人に面と向かって言えはしないけど。
何はともあれ、俺は心に誓った。哲さんが進むというなら、俺はついていく。どこまでだって。彼と一緒なら大丈夫だと、自分を奮い立たせた。
慣れていないのなら、慣れればいい。単純だ。よしっと、気合いを入れて、俺は哲さんがいつ、アダルトショップで買った、ゴムやローションが使いたいと言っても驚かないようにしようと、考えた。
まずは慣れだ。
そして、今に至る。俺は、大学の友人にアダルトビデオを借りてきた。
男なら貸し借りも普通と、知っていた。部室でDVDを回しているのを何度か見ていたので、恥ずかしながら、俺にも貸して欲しいとお願いしたら、二つ返事で貸してくれた。
俺の肩に腕を回したDVDの持ち主は、演技がかった言い方で、「お前もやっぱり男だったんだな」と、笑った。
周りの奴らも口々に「そうそう、いつも遠巻きにしててさ・・・淡泊なのか、はたまた、すげぇマニアックな趣味なのかと思ったよ」と、言われ、笑う事しかできなかったが、バカにされるの覚悟で、「か、軽めのを貸してくれ」と、伝えたら、なにを勘違いしたのか、「お前は、純情な初物系が好きなんだな」と、言われた。
初物とかどうだって良い。俺が見れる軽めのモノであれば。
人に借りる案より先に、一人ネットで検索して適当に見るのも考えたが、正直、どんなモノがヒットしてくるのか恐くて検索できなかった。ネットはどんなものでも見れる。逆に言えば、見たくないモノも見えてしまうから。
友人に貸してくれと言うのは照れたが、誰かに貸し出すとしたら、スゴい性癖のモノは回ってこないだろうと踏んで、恥ずかしいのを耐えて声をかけた。
やっと借りてきたDVDは、近くの本屋のビニール袋に包まれている。適当に見繕ったっと、受け取った2枚のDVD。それを家に持ち帰り、そっと、パソコンで再生する。
勉強机にパソコンを置いて、いつもだったら、野球の試合を見たりしてるのになぁっと思った。クリックして画面に映し出された絵に軽くのけぞる。イスがギシリと音を立てた。最初から心臓がバクバク言っている。これはイヤホンを耳に付けたから余計に、そう感じるのだろうか?
映像は、黒髪ロングの女性が短いスカートを翻し歩いているのが映し出された。カメラに向かって、日常っぽく過ごしている所から始まって、何故か、風呂に入って質問をされている映像が流れた。何処ぞのホテルだろうか、大きな白い浴場に、泡をたっぷりと浮かべた風呂だ。まだ、大丈夫だ、これなら見えてないし。
徐々にエッチな質問と、ワザト挑発するような視線を向けてくる女性に、そろそろ、そろそろなのか?と、落ち着かない。出来ることなら画面を止めたいが、哲さんの為に慣れなきゃ・・・っと、言い聞かせ、何とか、画面を見ている。
身体が熱い。欲情からのモノよりも恥ずかしさから、身体が熱い。しかも、哲さんの為っと、思ったときに、彼もこういったDVDを見てオナニーをしているのかと思ったら、スゴく恥ずかしくなった。
画面の中の女性が、次のカットではベッドに下着姿で横になっていた。誘うようにシーツの上で身体をくねらせている。哲さんは、どういうのが好みなんだろう・・・。女性を見ながら頭では彼のことばかり考えている。
どんな風に、どんなことを言うんだろう?
女性がゆっくり脱がされていき、乳房が見えるところで恥ずかしくなって、目を閉じた。ぎゅうっと、身体をこわばらせて、音声だけが耳に届く。男優が「初めて?」と、聞く声が、何故だか、哲さんの声で「初めて?」と、再生された。
おっ、俺のバカ!俺のバカ!!
恥ずかしがりながらも、そっと、ジーンズ越しの性器が少し張りつめていた。身体中が熱い。
哲さんのことで頭がいっぱいだ。耳からは、イヤラシい声や音が聞こえる中、俺は汗ばんだ手で、そっと、ジーンズ越しに、ソコに触れた。ふぅっと、吐き出した息はとても熱く、いつも事務的に片づけている行為とは全く違う熱をはらんでいることに気づいた。頭がぼぅっとするのに、哲さんのことばかり思い浮かべてしまう。
彼はどんな風にオナニーするんだろう・・・。
「て、つさん・・・・」
か細く、消え入りそうな声で彼の名前を口にしてしまった。そこで、「なんだ?」と、低い声が聞こえた気がした。
心臓が飛び出るほど驚いた。嘘だと思いたかったが、信じがたい事に、振り返ると、哲さんが立っていた。
「ふひゅっ!!」
驚きに、変な声が出た。目を大きく見開いて、しっかりと彼を見た。自分の見間違えでないことは確かだ。真剣な顔をして、哲さんが俺に一歩近づいた。
「お楽しみ中か?」
イヤホンをしている俺には彼がなんと言ったのかはわからなかったが、机と彼に挟まれる形で、顔を近づけられる。仰け反るようにして逃げたら、引っ張られたイヤホンのコードが抜けてしまった。
「うっそ・・・・!!」
なんで、ここに?!何が起こった?夢?これはいつもうなされる夢の延長なのだろうか?
混乱して動かない頭で考えるも答えは出ない。
身体中熱くし、逃げられない俺は、悲鳴のような声を上げたかったが、その声は、彼の口で塞がれて、DVDの女性の喘ぎ声だけが部屋に響いた。
触れたところから、これが夢ではないことは確実だった。お互いに厚い唇が触れたから。
end.
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