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クリ御/絵姿女房

昔話の絵姿女房みたいな話が書きたくて撃沈しました。
あの話、可愛くって好きですv








ー 絵姿女房 ー


 沢村が、いつもの突拍子のない提案をしてきた。風呂に入って後は就寝まで自由時間の時に俺の部屋にやってきたと思ったら、
「御幸一也!写真をくれ」
「・・・・突然やってきて何なんだ?」
 眉をひそめる俺とは反対に、沢村は晴れ晴れとした顔をして自分の発言に大変納得した顔をしている。
「あー、わりぃんだけど、話が読めないのですが?」
 またトンでもないことを思いついたか?っと、身構えた。苛立ったときにでも八つ当たりする用の写真だろうか?
「俺、御幸が好きみたい何です!」
「はぁ?!」
 身構えたつもりでも、やはり沢村は俺の斜め上を行く男だ。吃驚している俺により追い打ちをかけるように、「だって、降谷だって、おまえの写真持ってるしずりぃ」と、言った。
 ますます話が分からない。なんで降谷が俺の写真持ってんだよ??っと、混乱しながら、「もう少し詳しく頼むわ」と。

 どうやら、話を要約するに、降谷は俺が前に雑誌に載ったときの切り抜きを持っていたらしい。それを大事そうに持っていたと。
 そして、沢村は、どういう意味でなのかはわからないが、俺のことが好きらしい。あえて、そこからは目を反らしていこうと思う。
 話を伝い終えて、満足そうに、ふんっと、鼻を鳴らした沢村の鼻をつまんでやる。
「うわっ」と、短い悲鳴を上げる沢村をなんだかんだと言いくるめて部屋から追い出した。
 時計を見ればそろそろ寝る時間だ。俺は、はぁっと、大きく溜息を吐いてから布団に潜り込んだ。

 翌日、朝食の時に、降谷が俺が呼ばなくても近くに座ってきたので、コレ幸いと、話しかける。
「おい、降谷。おまえ俺の乗ってた雑誌持ってるだって?そういうの、恥ずかしいから、あんま周りに見せびらかすなよ」
 嫌がらせかぁ~っと、からかいを含めて言ってやると、至ってまじめな顔をして、「いえ、僕、御幸先輩のことが好きで・・・」と、突然の告白。
「えっ」と、驚いた声と、横から倉持が味噌汁で盛大にむせた声がする。たまたま近くにいたノリが「だ、大丈夫か!?」と声をかけている。
 春市が、付近を取りに行ってくれて、俺もあまりの噎せ方に背中をなでてやった。
「げほっげほっ、お、おい、くっ・・・降谷、それはどういう意味だ!?」
「そのまんまの意味ですけど?」
 何を聞き返してるんだ?って顔するな、降谷。理解ができなくて、ノリと倉持が思考停止して固まってる。
「雑誌を見て、この人しかないって思ったんです・・・」
 頬を少し赤くしながらの降谷の告白に俺も思考を止めてしまいたいのに、何処から聞きつけた沢村が「待て!!!俺だって御幸一也のこと好きだ!」と、声を張り上げてきた。
 それを見ていて、面白がった先輩方も、「あ、俺も御幸のこと好きだよ」と、明らかに引っかき回すようなことを言ってくる。
 ホント、性格の良い人たちばっかりだよ。
 純さんが、「モテモテだな、だけど、男限定で」なんて、言うもんだから頭が痛い。
「じょ、女子が良いです!」と、俺の悲痛な叫びが食堂に響いた。

 練習中、投手と俺は近い存在だ。ぎゃぁぎゃぁ言ってくる沢村は、クリス先輩の指導の元、少しは静かになっているが、目の前の降谷は、告白して吹っ切れたのか隠しもせず俺の方を投手だからだけではない熱い目で見てくる。
 気を使ったクリス先輩が、ソッと耳打ちしてくれる。
「今日は、あの二人とも、身が入らないみたいだし、おまえと距離を取らせた方がいいだろう」
「・・・・すみません、変なことになって」
 心の底から、申し訳ないのと、自分がそうしたくてなったことでないので、どうしようもない。ただ、大好きな野球に支障を来しているこの状態が嬉しくない。
 ションボリとしていると、クリス先輩が「気にするな」
っと、頭を撫でてくれた。
 あこがれの先輩の優しい態度に男だけどクラッとくる。目を見開いて先輩の方を見ると、「ど、どうしたんだ御幸・・・その、照れるぞ」と、先輩は顔を逸らした。
 なんだか一緒になって照れていると、丹波さんに「遊んでいるなよ」と、声をかけられた。
「すみません!」と、違う練習へと移動する。

「ノリィ~」と、俺は安全地帯に逃げ込んだ。

 ノリはとても優しい。だから当分ここは安全なはず。
白州と一緒に音楽の会話をしていたらしい。二人で自動販売機のベンチにいた。
 俺は疲れはてて、グデッと座り込んでノリに凭れて休息した。白州が、「大変だな、御幸も」
「モテモテだね」と、、ノリも同調する。
 ホントもう、やめてくれ。沢村と降谷、今すぐ消えてなくなれ。俺が泣く真似をすると、「大丈夫」と、背中を軽くたたいてくれた。
 ほっとして、今日のことを思い返す。
 今日一日は長かった。今はすでに自由時間だが、まず降谷の所へいって、雑誌を取り上げにいったが、「イヤです、宝物なのでだめです」の、一点張り。
 写真の張本人がいやがってるのに、頑固な奴。「そんなことより、告白のお返事、もらえますか」と、逆に迫られた。
 無駄に押しが強い。俺はビビって、倉持の所へ行った。ひゃはっと、一緒に笑い飛ばしてほしかった。現実逃避のためだ。
 そしたら、頭痛の元がもう一人居ることを忘れていた俺は、易々と敵の陣地へと足を踏み入れていた。
「あっ、御幸一也、俺の球を「受けない!」と、会話にかぶせるように答えてやった。倉持が「お、モテ男が来た」と、バカにしてくる。増子先輩が気を落としている俺に、「プリンならあるぞ」と声をかけてくれたが、先輩の好物を奪うわけには行かない。
「ありがとうございます、今日はやめておきます」
「御幸一也、俺の愛を受けろ」と、沢村が俺の腕をつかんできた。
「ヤダよ・・・」
 疲れきった俺は、低い声で短く返事をした。愛って何だよ、バカか。あ、バカだったわこいつ。
 ひゃはっと、倉持が笑って、俺も笑って流してやりたかったが、意地悪な先輩が後ろに忍び寄っているとは気づかなかった。
 沢村が掴んでいる手とは反対の手を捕まれ、驚いて振り返ると、亮さんが俺の手を持っていた。
「じゃぁ、俺の愛を受け取る?」と、ニヤリと笑った亮さん。もう、マジで頭痛がする。
 煽るように純さんが「モテる男は違うなぁ~」と、言い、全く興味なさそうに、哲さんが「御幸、一局どいうだ」と、声をかけてくる。
 哲さんまだ帰っていなかったんですねっと、言葉を言うよりも早く俺はこの場から退散した。
 俺の素早い動きに、反応が遅れた沢村が「待て、御幸~!」と、叫んでいる。「うるさい!」と亮さんと倉持の声が聞こえたから一発技をかけられているはずだっと、ノリの所まで逃げてきたのだ。

「もうさ、御幸が雲の上の人と付き合えばいいんじゃない?」
 普段は静かで、あまり思ったことを口にしないノリが、小さな声で俺に言ってきた。
「雲の上の人?」
「もう、太刀打ちできない!って感じの人と付き合えば、あの二人ももう無理だって、諦めるだろうし。それに、今日の練習が中断されたとき、すごく凹んでたから。問題は早々に打破しなくちゃ」
 それに、俺も投げる練習中断されるの困るしっと困り顔で、へへへっと、笑った。
「そうだな、嘘でも付き合ってますって、言うだけでも良いだろ。それに、案だけ熱烈なんだから、一度振られても立ち上がってくるだろ」
 あの二人は色恋に対しては鈍感で図太そうだもんなっと、白州が言ってのける。色恋いって、言ってしまえる白州なにもの・・・!
「良い提案だな」
「じゃぁ、誰が適任かな。この際、早期解決のために相手は見時仮名人物かな・・・」っと、三人の会議が始まった。

 翌朝、目が覚めて朝練の前に顔を洗いに向かう。解決策を考えてある今となっては俺の足取りは軽い。
「御幸、おはよ」
 眠たそうに目を擦るノリが、普段は可愛い分類だなって思うけど、昨日から頼もしく見える。
「おはよ、昨日はありがとうな。今日、恋人のふりをを頼んでみる予定、早々に。口先だけ併せてもらえれば野球にも学業にも忙しい人だし、何もしなくても大丈夫でしょ」
「そうだね」と、歯ブラシを加えながら二人で笑っていたら、沢村、降谷、春市と、三人が現れた。
「おはようございます」と、挨拶をしていると、クリス先輩もやってきた。
「あっ、御幸一也!」
「御幸先輩」と、おっきい目で二人して俺の横に陣取ろうとするので、喧嘩になる前にクリス先輩を呼んだ。
「おはよう、よく眠れたか?」
「あ、はい、でも先輩にお話がありまして、朝練の後で良いので少し時間もらえませんか?」
「?、今じゃダメなのか?」と、クリス先輩の問いかけに、「そうだぞ、師匠は忙しい人なんだからな!」と、沢村が口にして、「ねっ、師匠!」と、クリス先輩に向かって言う。
「言いづらいので、後で・・・」
「そうか、わかった」と、快くOKしてくれて、ホント、良い先輩だ。ありがとうございますっと、言って、身なりを整え、朝練男準備に向かった。

 朝練を無事に終えた。汗を拭きながら、先輩と二人でこっそりと話をするつもりだったのに、お荷物が一緒になってついてきた。
 と、言っても、建物の陰から上手く隠れ切れていない頭が見えている。
 顔を洗っているときに言いづらいから二人が良いと言っていた時、沢村、降谷は聞いていたはずなのに、何なんだ。
 クリス先輩に時間を取らせてしまっていることが、申し訳なく、さっさと終わらせてしまいたいので、「先輩、実は、俺と付き合ってほしいんです」と、言う。
 はじめは、訳を話して、恋人のふりをしてもらえばいいかと思っていたけど、俺が別の人に恋をしていると思えば二人も諦めるかもしれないと瞬時に判断して、言った。
 あれは、こういう理由での言葉ですっと、後で伝えればいい。とにかく、俺は二人に俺の告白現場を見せれればいい。常識人のクリス先輩だ。きっと、上手に告白を断ってくれるはずだっと、思っていた。
 お願いしますと、頭を下げたときに横目で沢村と降谷の表情が見えた。もう、太刀打ちできない。御幸はクリス先輩を追ってこの学校に入ったと言うのは皆が知っていることだ。
 当然、二人も知っているんだろう。一瞬ショックを受けている顔を見て、成功したっと、心の中でガッツポーズをする。
 あとは、クリス先輩にやんわりと断っていただいて、そのまた後に、事情を説明すればいい。
 顔を上げて、先輩の顔を見た。
「えっ」
 見た先には、顔を赤くしたクリス先輩が立っていた。
「・・・俺で良いのか?」
「えっ」
「御幸・・・・」と、先輩の手が伸びて、俺をぎゅっと抱きしめた。驚いたのと恥ずかしいので抵抗できなかった。
 厚い胸板に頭を押しつけられ、相手の心拍が早いことを耳にして、俺もドキドキし始めた。
 な、なんだこれ、ヤバい・・・!
「御幸、俺も好きだ」と、思いもかけぬ返事をいただいて、俺は混乱と、ドキドキから、「これからよろしく頼む」の言葉に、「はい」と、返事をしていた。
 胸から解放されて、赤い顔をしたクリス先輩から離れたのに、俺の心拍数は上がったままで、本気でときめいてしまっている自分に驚きつつも、今更嘘とも、ふりとも言えない状況に、苦くも嬉しい笑顔を浮かべるしか出来なかった。

 思いも寄らない告白だったけど、俺と先輩は晴れて恋人同士になりました。



end.
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