忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

古キョン/あなたの星の下

キョンくん視点。
秋と引き寄せる力の話。
黒板消しの煙たさは異常。

- あなたの星の下 -


引力は地球の中心部に向かっているんだ。と、教師は当たり前のことを口にした、確か学校の備品の扱いがあまりに良くないと注意の延長線で出た話の中で言っていた気がする。
どういう流れで引力の話になったか忘れたが、そうだよな、なんて全く話を聞いていないくせに内心で頷いて外を眺めた。秋晴れで目を引き寄せるような綺麗な青空を見つめ、眩しさに目を細めた。
妹の学校では今週が運動会だ。年の離れた妹は態となのか知らんが「組体操やるから絶対に来てね」と甘えた声で俺に言っていたな、まぁ、行ってやらないこともない。
未だブツブツとお経のように諄い教師の言葉、壁掛けの丸時計が時刻を指すと灰色のスピーカーがチャイムを鳴らした。お疲れさまです。
言い足りなさそうな顔をした教師は時計を見てから説教から解放された生徒達のを睨みつけて教壇を降りた。
ガヤガヤと放課後のざわめきが起き、引いたら押すように散々と散らばっていく、部活、バイト、デートに学習塾。目的は様々だ。かく言う俺も背後に立つ五月蠅い奴と一緒に活動不明の出鱈目な部活動へ足を運ぶ。
「行くわよ、キョン!!」
まるで犬を呼ぶように俺を呼んで鎖みたいにネクタイを引っ張る、谷口や国木田が困った顔なのか諦めた顔なのか微妙な顔をしてこちらを見ている。おいおい、お前等もこいつを止めてくれ。
「ハルヒ、待て待て!か、鞄がまだ机の横にっ、それに俺は今日掃除当番だ…!」
教室を出る前に鎖から解放を。入り口のど真ん中で腰に両手を当てて仁王立ち。主人と言うよりも王様。
「もぅ!!ノロマなんだから!!まぁいいわ、私は先に行くから!!」
じゃぁ始めから一人で行けよと口にするほど俺もバカじゃなかった、顔だけは正直に呆れつつ片手を上げて返事をしてやると「早くくるのよ!」っとゼリフを投げて去っていった。
即座に箒を持ちニヤツく谷口が寄ってくる、猫撫で声で俺の名前を呼ぶ。あぁ、気持ちが悪いな、ハルヒの次は何だ。
「キョーン、お前、掃除当番なんだってぇ?」
「涼宮さんだもん。いくら逃げ出したかったからって、すぐにバレる嘘なんかついて大丈夫?」
同じようにチリトリを手にした国木田が寄ってくる。確かに逃げるための嘘の口実、同じクラスだから隠してもすぐにバレるだろう。
「でも、あいつも鬼じゃない。バレても大層なことは言ってこないだろう、…多分な」
「ふ、ふふふっ。甘いな、キョンよ。おおいに甘いぞ!……あいつは鬼だ。きっとネチネチとしつこいぞー」
勿体つけて話すお前の方が余程ネチっこいと思うのだがな。というか、鬼なんてハッキリというこいつは…。
「まぁ、僕らが困り果てた所を助けようと。……と、言うわけで」

差し出された掃除用具を両手にぼんやりと立ち尽くす。あいつら良いように利用しやがって…。怒りと情けなさが同時に俺を包む。
だが、二人が掃除当番の時にあんな嘘をついた時点で俺の敗北は決まっていたんだろうな。今日の星占いは最下位か?それとも血液型占いか?
盛大なため息を一つついて気になるところと自分がよく使う所を重点的に毛先がボサボサな箒で掃いていく。撫でるような掃き方ので一人でも割と早く事は済んだ、手早く溜まったゴミを回収して白掠れた黒板に取りかかる。
黒板消しを音ばかりうるさく綺麗になる気がしない機械にかける、うぅーん!!!!っとスイッチを入れた瞬間から酷い唸り声が上がる。同時に舞い上がる白い粉。
コホンッと咳がこぼれた、目が少しゴロゴロする。機械を止めて目を擦ろうとしたが指全体が粉っぽい感覚に諦め、そのまま黒板の文字を消す作業に移った。
擦っても擦っても白く尾を引くばかりで綺麗になっているのだろうか、根気なんて持ち合わせていない俺には拷問だな…。
「ちくしょう…」
知らず声が漏れていた、誰もいない教室に呟きは地割りと溶け込んで俺を包んだ。虚しいったらない。
そこへ、「失礼します。」と礼儀正しい挨拶が聞こえ、覚えのある声に振り返ればやはり古泉が入り口の所に立っていた。いつもの作り笑いを顔に張り付けている。俺しか見てないんだから普通にしてればいいのに、無駄に顔の筋肉使って疲れないのかね、こいつは。
「おぉ…。」
「涼宮さんが心配してましたよ?」
それで偵察とはご苦労様、ハルヒ専用のイエスマンはニコニコと絶えず笑顔を浮かべている。無言でいけ好かない顔を見つめてため息を吐いた。
「人の顔を見て溜息とは、僕でも少し傷つきます。…掃除は終わりそうですか?」
傷ついたなんて言って傷ついているようには見えない、やれやれと首を振って言葉を続ける古泉は何処か演技じみている。
「あー、黒板で終わりだ。」
「そうですか、それでは少し待っていましょうか…。」
言い終わる前に古泉はつかつかと近づいてくる、なんだよ?と睨みを利かせても距離は縮まるばかり。後ずさろうにもすぐに黒板が有って引くに引けない状態、制服が粉まみれになるのは避けたい。
近すぎる距離にたじろいで、少し上の位置に来る顔を見た。にっこりと笑いかけてくる。俺は気恥ずかしさに負けて目をそらした。
「おっ、おい、古泉っ。人が…」
来たらどうするんだ。言えない言葉はお互いの唇に飲まれてしまった。ぎゅっと目と口を閉じた。
少し触れ合っただけの簡単なものだった、近づけられた顔を押さえて止めようとしたのに手が汚いのを思い出して止めてやった。
「…バカ。場所考えろよ。」
「顔、赤いですよ?」
「うるさい、元々赤いんだよ。お前と違って俺は掃除に奮闘していたんだからな…。」
またしょうもない嘘をついた。ハッキリとは形容したくないが、これは照れ隠しか何かの類だ。そして、俺が少しだけ饒舌になると古泉はペーストの笑顔でなく本当に嬉しそうに笑った。
まぁ、悪くない。
「お前も手伝え、早くしないと次は朝比奈さんか長門が偵察に来るかもしれんからな。」
「はい、喜んでお手伝いします。」
言って古泉は五月蠅い機械に黒板消しをかけて、俺同様に全身を粉っぽくして小さくクシャミをした。


PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード

カウンター

プロフィール

HN
ナオ太。
連絡先
kuroyagi_yuubin☆yahoo.co.jp
(☆→@に変更)

リンク