亮御/中間報告
キスの味のつづき。途中経過。
- 中間報告 -
「哲、また負けたんか」
純さんが呆れた声をあげて、将棋盤の前でガクリと頭を垂れる哲さんに声を掛けた。短く、あぁっと、声が聞こえて、負けを認めたらしいことが分かった。野球はめっぽう強いのに、将棋はからっきしダメ。腕を組んで、うーんっと、低く唸って、敗因を考えてるらしい表情。
哲さん、最初の方から、負けへと向かっていましたよ。なんて、口には出せない。将棋の本でも買ってきてプレゼントしたら嫌みになるかな、などと考えていると、沢村が「みゆきぃ〜」っと、俺の背に体重をかけてきた。
「重いよ、やめろ」と、床にひっくり返してやる。最初からひっくり返されることを想定していたのか、あまり抵抗も無く転がされた沢村がケラケラと笑って、転がった先に居た倉持の背にぶつかった。
春市と一緒に対戦ゲームをしていたらしい倉持は突然のことでコントローラーの操作をミスして、あえなくK.O.
「ぐあああ!!笑えねぇぞ、沢村ぁ!!!」
沢村の胸ぐらを掴み上げた倉持が目を吊り上げるのを春市が、まぁまぁっと、宥める。横でゲーム画面を見て居た降谷が、「おぉっ」と、小さく驚いた声をワンテンポ遅く零した。
ぎゃあぎゃぁ騒ぐ奴らを「うるせぇ!!」と、純さんが騒ぐ。知らぬ顔で哲さんは、未だ将棋の駒を見つめてうーんっと、言っている。まとまりがないし、よくもまぁ、この狭い部屋にこの人数が居るもんだよ。
溜息ではないけど、大きく息を吐いた。
「馬鹿みたいに野球に打ち込んで、ソレ以外のことも馬鹿って、救いようが無いね」と、後ろから声がした。あ、亮さん。
そう思ったら「おいで」と、手招きされたので、俺は狭苦しい自分の部屋から外へ出た。亮さんが、付いて来いとでも言うように黙って歩いていくのに付いていく。
自販機の横のベンチに座り、横をポンッと叩いたので、促されるままに横に腰を下ろした。
「あーっと、さっき、騒がし過ぎましたか?」
「ん?別に?」
亮さんは表情が読めない。可愛らしい顔をして、案外厳しいことをズバッと言う。なんか怒られるのかなっとか、考えてもソレらしい事はなかった気がする。予想も立たない状態に少し心が落ち着かない。好きな相手と一緒に居るってことも落ち着かない部分ではある。
急に先日の亮さんにされたキスがフラッシュバックして、カァッと、頬を染めた。顔を見せないように反対側を見ながら、「そう言えば、随分涼しくなってきましたねぇ」と、どうでも良い事を口にする。
亮さんの「そうだね」から、どのぐらい黙っていたんだろう。何か話した方が良いのかっとか、考えても、あらぬ事ばかり頭に浮かんで言葉にならない俺。
「・・・ねぇ、御幸」
「はい、なんすか?」
「俺のこと、どのぐらい好き?」と、唐突に問いかけられて、不意をつかれて、「へっ!?」と、大間抜け顔をさらしてしまった。
「どっ、どのぐらい・・・・」
この間の会話と同じ道をたどっているように感じる。クッと口端を上げて俺を見ている亮さんには叶いません。なんと言えば見逃してもらえるのか。態度で示せと表情に書いてある。また触れるだけの臆病なキスをしたら怒るだろうか。
でも、自分にはグイグイ行く勇気も無い。挑戦的に俺を見ている、いや、からかってる・・・?
「ほら」と、促される。中間報告してみたら?と、語尾は誘導するようだけど、絶対の意味が含まれている口ぶりに俺は困った顔を浮かべる。
正直な所、あんなキスをしたのは先日が初めて。むしろ、キス自体初めてだった訳で、どうにもこうにも・・・・。
だけど、男として、立ち向かいたいと思います。チャンスかもしれないから。少々の不安を抱えながら、
「亮さん!目、とじて下さい」
はいはいっと、楽しんでる風に返事をして、目を閉じた亮さんの肩を引き寄せて、キスをする。まずは触れるだけ、そして、ソッと舌を忍ばせた。少しだけ前歯を舐めてみた。逃げるように直ぐに身を引いた。
「どっ」
どうですかっと、言うよりも早く、亮さんに引き寄せられてキスをしていた。驚いた俺の口の中に相手の熱い舌が入ってくる。うわっ、うわっと、心の中で叫んでも意味がない。
前歯、歯茎となぞられ、俺の舌をスルリと誘ってくる。息の仕方を忘れた俺は酸欠状態になって、そのキスに溺れそうになる。ドキドキして、頭が回っていない。
上顎を舐められて、唇を軽く挟むようにしてから離れていく先輩を、ホゥッと見つめる。
「御幸、また涎足れてる」
指摘されて、慌てて手で口元を拭った。ソレを見て、笑う亮さん。い、イジメだ。絶対楽しんでる。
「このぐらいこないと、満足しないよ?もう一回やってあげようか?」
練習っと、言われても、もう、恥ずかしさが振り切って、なにがなんだかわからない俺は、首を振った。
「御幸、目、閉じて?」
「あっ、はいっ」
ギュゥッと、強く目を閉じたらオデコにチュッとキスをされた。上げられた前髪がすぐにパサっと落ちてくる。ビックリして目を開けると、「キスするときは目を閉じるんだよ」と、先輩は笑って、またも俺を置いて、その場を去っていった。
なっ、何だったんだ・・・・。
キスされたオデコに手を当てて、ズルいっと一言零した。
end.
- 中間報告 -
「哲、また負けたんか」
純さんが呆れた声をあげて、将棋盤の前でガクリと頭を垂れる哲さんに声を掛けた。短く、あぁっと、声が聞こえて、負けを認めたらしいことが分かった。野球はめっぽう強いのに、将棋はからっきしダメ。腕を組んで、うーんっと、低く唸って、敗因を考えてるらしい表情。
哲さん、最初の方から、負けへと向かっていましたよ。なんて、口には出せない。将棋の本でも買ってきてプレゼントしたら嫌みになるかな、などと考えていると、沢村が「みゆきぃ〜」っと、俺の背に体重をかけてきた。
「重いよ、やめろ」と、床にひっくり返してやる。最初からひっくり返されることを想定していたのか、あまり抵抗も無く転がされた沢村がケラケラと笑って、転がった先に居た倉持の背にぶつかった。
春市と一緒に対戦ゲームをしていたらしい倉持は突然のことでコントローラーの操作をミスして、あえなくK.O.
「ぐあああ!!笑えねぇぞ、沢村ぁ!!!」
沢村の胸ぐらを掴み上げた倉持が目を吊り上げるのを春市が、まぁまぁっと、宥める。横でゲーム画面を見て居た降谷が、「おぉっ」と、小さく驚いた声をワンテンポ遅く零した。
ぎゃあぎゃぁ騒ぐ奴らを「うるせぇ!!」と、純さんが騒ぐ。知らぬ顔で哲さんは、未だ将棋の駒を見つめてうーんっと、言っている。まとまりがないし、よくもまぁ、この狭い部屋にこの人数が居るもんだよ。
溜息ではないけど、大きく息を吐いた。
「馬鹿みたいに野球に打ち込んで、ソレ以外のことも馬鹿って、救いようが無いね」と、後ろから声がした。あ、亮さん。
そう思ったら「おいで」と、手招きされたので、俺は狭苦しい自分の部屋から外へ出た。亮さんが、付いて来いとでも言うように黙って歩いていくのに付いていく。
自販機の横のベンチに座り、横をポンッと叩いたので、促されるままに横に腰を下ろした。
「あーっと、さっき、騒がし過ぎましたか?」
「ん?別に?」
亮さんは表情が読めない。可愛らしい顔をして、案外厳しいことをズバッと言う。なんか怒られるのかなっとか、考えてもソレらしい事はなかった気がする。予想も立たない状態に少し心が落ち着かない。好きな相手と一緒に居るってことも落ち着かない部分ではある。
急に先日の亮さんにされたキスがフラッシュバックして、カァッと、頬を染めた。顔を見せないように反対側を見ながら、「そう言えば、随分涼しくなってきましたねぇ」と、どうでも良い事を口にする。
亮さんの「そうだね」から、どのぐらい黙っていたんだろう。何か話した方が良いのかっとか、考えても、あらぬ事ばかり頭に浮かんで言葉にならない俺。
「・・・ねぇ、御幸」
「はい、なんすか?」
「俺のこと、どのぐらい好き?」と、唐突に問いかけられて、不意をつかれて、「へっ!?」と、大間抜け顔をさらしてしまった。
「どっ、どのぐらい・・・・」
この間の会話と同じ道をたどっているように感じる。クッと口端を上げて俺を見ている亮さんには叶いません。なんと言えば見逃してもらえるのか。態度で示せと表情に書いてある。また触れるだけの臆病なキスをしたら怒るだろうか。
でも、自分にはグイグイ行く勇気も無い。挑戦的に俺を見ている、いや、からかってる・・・?
「ほら」と、促される。中間報告してみたら?と、語尾は誘導するようだけど、絶対の意味が含まれている口ぶりに俺は困った顔を浮かべる。
正直な所、あんなキスをしたのは先日が初めて。むしろ、キス自体初めてだった訳で、どうにもこうにも・・・・。
だけど、男として、立ち向かいたいと思います。チャンスかもしれないから。少々の不安を抱えながら、
「亮さん!目、とじて下さい」
はいはいっと、楽しんでる風に返事をして、目を閉じた亮さんの肩を引き寄せて、キスをする。まずは触れるだけ、そして、ソッと舌を忍ばせた。少しだけ前歯を舐めてみた。逃げるように直ぐに身を引いた。
「どっ」
どうですかっと、言うよりも早く、亮さんに引き寄せられてキスをしていた。驚いた俺の口の中に相手の熱い舌が入ってくる。うわっ、うわっと、心の中で叫んでも意味がない。
前歯、歯茎となぞられ、俺の舌をスルリと誘ってくる。息の仕方を忘れた俺は酸欠状態になって、そのキスに溺れそうになる。ドキドキして、頭が回っていない。
上顎を舐められて、唇を軽く挟むようにしてから離れていく先輩を、ホゥッと見つめる。
「御幸、また涎足れてる」
指摘されて、慌てて手で口元を拭った。ソレを見て、笑う亮さん。い、イジメだ。絶対楽しんでる。
「このぐらいこないと、満足しないよ?もう一回やってあげようか?」
練習っと、言われても、もう、恥ずかしさが振り切って、なにがなんだかわからない俺は、首を振った。
「御幸、目、閉じて?」
「あっ、はいっ」
ギュゥッと、強く目を閉じたらオデコにチュッとキスをされた。上げられた前髪がすぐにパサっと落ちてくる。ビックリして目を開けると、「キスするときは目を閉じるんだよ」と、先輩は笑って、またも俺を置いて、その場を去っていった。
なっ、何だったんだ・・・・。
キスされたオデコに手を当てて、ズルいっと一言零した。
end.
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