(沢+降)→御/しろいろ
あかいろの続編。
下ネタ苦手な御幸くん。
- しろいろ -
この頃、夜の自由時間に御幸先輩が隠れんぼをしている。全体の練習後も球を受けてもらいたくて探してたら、今日もコソコソと倉庫裏に隠れていた。
「御幸、先輩?」
しゃがんだ体勢で壁にへばりついて、角から表の方を覗き込んでいる先輩の後ろに回って声を掛けた。わぁっと、声をあげて、慌てて振り向いた先輩は目を真ん丸にして俺を見上げた。なんだか可愛い表情だなっと思ったけど、口には出さずに、手元のボールを前に出す。受けて下さいのポーズ。
コロリとボールを手渡す。すんなりと受け取ってもらえて期待の目で見ると、「んな、キラキラした顔で見んなよなぁ、照れんだろ?」と、しおらしい事を口にしておきながら、俺の期待はあっさりと壊された。先輩は、犬にでも言うように「ホラ取ってこーい!」と、ボールを投げた。
まだ、ライトのある場所へ投げたのは、彼なりの優しさからだろうか・・・?
ションボリしながら、ボールを拾って振り返ると同時に、「あっ!!見つけたぞ、御幸!!」っと、五月蝿い奴が姿を現した。そちらを見るなり、先輩は、あからさまな態度を隠しもせず、「げっ」と、声をあげると、直ぐに駆け出していった。
あの早さは、倉持先輩にも引けを取らない程、俊敏に見えた。
「逃げんな、このやろー!!」と、大きな声をあげて続くように走り出した沢村は俺の横をかけてゆく。せめて、声をあげながら走ればいいのに。
そして、その後に、自分も続く。やっぱり、ボール投げたい・・・。
走っていくと、沢村が立ち止まってキョロキョロと辺りを見ている。彼の元に辿り着いて、「先輩は?」と、訪ねると、「見失った、くそーっ」と、とても悔しそうに言い、手に持っていた丸めた雑誌でバシッと、もう片方の手を叩いた。
「それ何?」
「あ?降谷も読むか?先輩から回ってきたエロ本」
「先輩から借りてきたのに、そんなに雑に扱っていいのか?」
「いいんだよ、使い古しだもん」
手元の雑誌は水着の女性が数人並んでいる表紙だった。
「・・・御幸先輩のお古?」
「ちげぇ、御幸はこの手の雑誌苦手なんだって。だから、からかってる」
「・・・・怒られる」
「・・・・」
俺の指摘に、ふんっと押し黙った彼は、一応、自身も思っているのか、そうだけど・・・っと珍しく煮え切らない返事をして、再度、手元の雑誌でバシッと手を叩いた。
「でもさ、降谷も、見たいだろ?いつも自信たっぷりの強気な御幸が照れて慌てふためく姿。見物だぜ?」
にししっと、悪戯っ子は笑ってみせた。確かに、先輩の慌てる姿って想像付かない。前にクリス先輩らの前で照れている顔は見た事あるけど。少しだけ興味が引かれる。ふーんっと、わざと気の無い返事をした。沢村は、「まぁ、折角だし、コレを授ける」と、グローブを持ってない方の手にエロ本を渡してきた。
「んじゃぁな、ヤリすぎんなよ」と、また悪戯っ子が笑った。
「御幸せんぱーい」と、薄暗い食堂で声を掛けてみた。さっきから手当り次第に声を掛けて、ウロウロと探し歩いている。なんだか、ネコを探している気分だ。ちょっぴり面白い。
「おまえも、しつこいなぁ」と、机の影から御幸先輩が現れた。
パッと、表情が明るくなるのが自分でも分かる。「おうおう、そんな尻尾振るなよ」と、笑いながら俺の頭を撫でてくる。さっきまでネコを探してる気分だったのに、先輩ったらネコってより飼い主みたい。って、俺が動物だった?
少しムッとした顔で先輩の方を見ると、「機嫌悪いなぁ」と、頬を軽く抓られた。ヘラヘラとなんでも回避してしまう身軽な先輩へ、再度、ボールを握ったグローブを突き出すと、「ダメ、今日はもう終わり。お前、今日の練習で沢山投げたじゃん。多く投げれば良いって訳じゃないって」と、頭をかいて、手を押しやられる。
ションボリして、溜息をついた。下を向いた所、手に持っていたエロ本が視界に入る。フッと、沢村の悪戯な笑みを思い出した。「いつもの自信たっぷりの強気な御幸が照れて慌てふためく姿」と、声付きで。
「みゆき、せんぱ」俺が呼び止めたことで振り返ったタイミングで、またも沢村が「みつけたぞぉ!」と現れた。「げっ」と、さっきと同じ繰り返しで、先輩が声をあげた、次に「降谷
!!」と、名前を呼ばれて、俺は咄嗟に、先輩の手を掴んでいた。
今度は予想もしていなかった俺の行動に「えっ!!」と、声をあげて、真ん丸な目がコチラを見る。「でかした、降谷!」と、不敵に笑う沢村が、エロ本を取り出す。あ、持ってたのは一冊だけじゃなかったんだ、と、思っていると、バッと雑誌を広げて「みゆきぃ、どれが好き?」と、にんまりと笑いかけた。
先輩は、余程、そう言う物が苦手なのか、逃げ場を求めて咄嗟に俺に抱きついてきた。「わっ!」と、今度は俺が先輩の予想もしていなかった行動に驚いて声をあげる。ギュウッと顔を押し付けて、目を背けようとする先輩が、可愛い・・・!カァーッと、顔が熱くなる。
「御幸せんっ」
「おい、降谷、うらぎんのか!?お前も御幸の慌てた顔、見たいだろ?」
そう、悪魔の囁きのような言葉だが、俺は、今現在、俺の胸にギュウッと抱きついてきてる先輩の耳が赤くなっているのを見て、言い表せれない気持ちで一杯だ。
別に、沢村側に付く訳でも、先輩側に付く訳でもないけど、「ご、ごめん」と、謝って、手に持っていた雑誌を沢村に返した。グッと押しやって気分が削がれたのか、「なんだよぉ」なんて、文句を言いつつ引き下がってくれた。
「せ、せんぱい?」と、顔を胸から離して覗き込むと、今までに見たことが無いくらいに真っ赤になってる御幸先輩が居た。「あーゆーの、苦手なんだよっ、悪いか!」と、急に怒ってきて、「べっ、別に悪くないです」と、慌てて返事をした。
小さな声で「この裏切り者、お前は俺の味方だと思ったのに、手ぇ掴みやがって・・・明日、覚えてろよ」
そう言って、「扱いてやるからな」っと、言う先輩はもう、いつもの自信たっぷりな先輩の顔だった。明日の練習内容が怖いのと同時に、さっきまでの言いあらわせれない気持ちが少し落ち着いた。
ソッと胸に手を当ててみると、トクトクと、普段よりも早くリズムを打っている。
end.
下ネタ苦手な御幸くん。
- しろいろ -
この頃、夜の自由時間に御幸先輩が隠れんぼをしている。全体の練習後も球を受けてもらいたくて探してたら、今日もコソコソと倉庫裏に隠れていた。
「御幸、先輩?」
しゃがんだ体勢で壁にへばりついて、角から表の方を覗き込んでいる先輩の後ろに回って声を掛けた。わぁっと、声をあげて、慌てて振り向いた先輩は目を真ん丸にして俺を見上げた。なんだか可愛い表情だなっと思ったけど、口には出さずに、手元のボールを前に出す。受けて下さいのポーズ。
コロリとボールを手渡す。すんなりと受け取ってもらえて期待の目で見ると、「んな、キラキラした顔で見んなよなぁ、照れんだろ?」と、しおらしい事を口にしておきながら、俺の期待はあっさりと壊された。先輩は、犬にでも言うように「ホラ取ってこーい!」と、ボールを投げた。
まだ、ライトのある場所へ投げたのは、彼なりの優しさからだろうか・・・?
ションボリしながら、ボールを拾って振り返ると同時に、「あっ!!見つけたぞ、御幸!!」っと、五月蝿い奴が姿を現した。そちらを見るなり、先輩は、あからさまな態度を隠しもせず、「げっ」と、声をあげると、直ぐに駆け出していった。
あの早さは、倉持先輩にも引けを取らない程、俊敏に見えた。
「逃げんな、このやろー!!」と、大きな声をあげて続くように走り出した沢村は俺の横をかけてゆく。せめて、声をあげながら走ればいいのに。
そして、その後に、自分も続く。やっぱり、ボール投げたい・・・。
走っていくと、沢村が立ち止まってキョロキョロと辺りを見ている。彼の元に辿り着いて、「先輩は?」と、訪ねると、「見失った、くそーっ」と、とても悔しそうに言い、手に持っていた丸めた雑誌でバシッと、もう片方の手を叩いた。
「それ何?」
「あ?降谷も読むか?先輩から回ってきたエロ本」
「先輩から借りてきたのに、そんなに雑に扱っていいのか?」
「いいんだよ、使い古しだもん」
手元の雑誌は水着の女性が数人並んでいる表紙だった。
「・・・御幸先輩のお古?」
「ちげぇ、御幸はこの手の雑誌苦手なんだって。だから、からかってる」
「・・・・怒られる」
「・・・・」
俺の指摘に、ふんっと押し黙った彼は、一応、自身も思っているのか、そうだけど・・・っと珍しく煮え切らない返事をして、再度、手元の雑誌でバシッと手を叩いた。
「でもさ、降谷も、見たいだろ?いつも自信たっぷりの強気な御幸が照れて慌てふためく姿。見物だぜ?」
にししっと、悪戯っ子は笑ってみせた。確かに、先輩の慌てる姿って想像付かない。前にクリス先輩らの前で照れている顔は見た事あるけど。少しだけ興味が引かれる。ふーんっと、わざと気の無い返事をした。沢村は、「まぁ、折角だし、コレを授ける」と、グローブを持ってない方の手にエロ本を渡してきた。
「んじゃぁな、ヤリすぎんなよ」と、また悪戯っ子が笑った。
「御幸せんぱーい」と、薄暗い食堂で声を掛けてみた。さっきから手当り次第に声を掛けて、ウロウロと探し歩いている。なんだか、ネコを探している気分だ。ちょっぴり面白い。
「おまえも、しつこいなぁ」と、机の影から御幸先輩が現れた。
パッと、表情が明るくなるのが自分でも分かる。「おうおう、そんな尻尾振るなよ」と、笑いながら俺の頭を撫でてくる。さっきまでネコを探してる気分だったのに、先輩ったらネコってより飼い主みたい。って、俺が動物だった?
少しムッとした顔で先輩の方を見ると、「機嫌悪いなぁ」と、頬を軽く抓られた。ヘラヘラとなんでも回避してしまう身軽な先輩へ、再度、ボールを握ったグローブを突き出すと、「ダメ、今日はもう終わり。お前、今日の練習で沢山投げたじゃん。多く投げれば良いって訳じゃないって」と、頭をかいて、手を押しやられる。
ションボリして、溜息をついた。下を向いた所、手に持っていたエロ本が視界に入る。フッと、沢村の悪戯な笑みを思い出した。「いつもの自信たっぷりの強気な御幸が照れて慌てふためく姿」と、声付きで。
「みゆき、せんぱ」俺が呼び止めたことで振り返ったタイミングで、またも沢村が「みつけたぞぉ!」と現れた。「げっ」と、さっきと同じ繰り返しで、先輩が声をあげた、次に「降谷
!!」と、名前を呼ばれて、俺は咄嗟に、先輩の手を掴んでいた。
今度は予想もしていなかった俺の行動に「えっ!!」と、声をあげて、真ん丸な目がコチラを見る。「でかした、降谷!」と、不敵に笑う沢村が、エロ本を取り出す。あ、持ってたのは一冊だけじゃなかったんだ、と、思っていると、バッと雑誌を広げて「みゆきぃ、どれが好き?」と、にんまりと笑いかけた。
先輩は、余程、そう言う物が苦手なのか、逃げ場を求めて咄嗟に俺に抱きついてきた。「わっ!」と、今度は俺が先輩の予想もしていなかった行動に驚いて声をあげる。ギュウッと顔を押し付けて、目を背けようとする先輩が、可愛い・・・!カァーッと、顔が熱くなる。
「御幸せんっ」
「おい、降谷、うらぎんのか!?お前も御幸の慌てた顔、見たいだろ?」
そう、悪魔の囁きのような言葉だが、俺は、今現在、俺の胸にギュウッと抱きついてきてる先輩の耳が赤くなっているのを見て、言い表せれない気持ちで一杯だ。
別に、沢村側に付く訳でも、先輩側に付く訳でもないけど、「ご、ごめん」と、謝って、手に持っていた雑誌を沢村に返した。グッと押しやって気分が削がれたのか、「なんだよぉ」なんて、文句を言いつつ引き下がってくれた。
「せ、せんぱい?」と、顔を胸から離して覗き込むと、今までに見たことが無いくらいに真っ赤になってる御幸先輩が居た。「あーゆーの、苦手なんだよっ、悪いか!」と、急に怒ってきて、「べっ、別に悪くないです」と、慌てて返事をした。
小さな声で「この裏切り者、お前は俺の味方だと思ったのに、手ぇ掴みやがって・・・明日、覚えてろよ」
そう言って、「扱いてやるからな」っと、言う先輩はもう、いつもの自信たっぷりな先輩の顔だった。明日の練習内容が怖いのと同時に、さっきまでの言いあらわせれない気持ちが少し落ち着いた。
ソッと胸に手を当ててみると、トクトクと、普段よりも早くリズムを打っている。
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