box。

- おやすみなさい -


別れを告げる時に、「さようなら」でなく、「おやすみなさい」と、牧野さんは言う。
夕方などの、日の沈みつつある時間帯でなくとも、午前中にあって、別れる時も。
いつも以上に困った顔を浮かべ、手を少しだけ挙げて。
自分も言われれば、「はい、おやすみなさい」と、別れを告げる。
そのせいなのか、夜、布団に潜り、目を閉じた時に自然と、彼に向けて、「おやすみ」を言っている事がある。
口には出さなくとも、想像の中で困った顔の彼もお休みを言うように感じる。

おやすみなさい。

別れを告げる時に、宮田さんに「おやすみなさい」と、言うようにしてる。
そうすると、彼も同じように、返してくれる。
夜、目を閉じると、あの声を思い出して、また「おやすみなさい」と、声をかける。
本当は、「また明日」と言いたい。
次を期待したい。僕の最後の悪あがきで「さようなら」は言わない。
いつか、「また明日」と、笑って言いたい。

おやすみなさい。



end.
宮牧は、互いに意識してるけど、踏み出せない。