box。

- 裏側 -


風間程、表裏がある奴も珍しいと思う。
相手によって、ころころと表情を変えて、自分が優位にたてる場所ではきらびやかに見せる。
反対に、自分の見せ場じゃない所では、今日見なさそうな顔でシレッとしている。
彼にとって、表情を変える価値があるかないか。
自分はどの位置に居るのか分からない。
なんとなくで、風間と一緒に居る事が多くなった。
何がキッカケだったかなんて、わかってる。大川だ。
あいつのせいで、風間とよく一緒に居る。
でも、別に得でもないし、そんでもない。居心地が言い訳でもなんでもないのに。
風間は、本当に興味がないと、スイッチが切れるみたいに見もしない。
俺のことは半々ぐらいで見てる。
スゴく構いたがる事もあるくせに、どうでもいいよっと、突き放す。
俺としては、スイッチの切れた時の風間の方が好きだな。

入ってる時の彼は、嘘みたいだ。
切れてる時の彼は、生きてるみたいだ。

放課後に、教室でダラダラしてた。
別に約束したわけでもないのに、俺と風間だけになった部屋で、
俺は文庫を読んで、風間はボンヤリと壁の時計を見ていた。
「風間」と、呼んでも無視。
今は何も興味がない、スイッチの切れた時の風間。
プラスとマイナスで言えば、マイナスな部分。
もう一度名前を呼ぶと、面倒くさそうに動いた目がこちらを見る。
スゴく冷えきってる。
でも、彼は生きている。嘘をついていない。
「なに」っと、声を出さずに、口を動かした風間に、
「今のお前が好き」
そう、自分も声に出さずに口を動かした。

「え、何？わかんなかった」
言って、コチラに向き直った時の風間は、興味を俺に向けて、一瞬に顔を変えた。
何々？っと、無垢な子犬みたいな表情でコチラを見てくる。
だから、嘘の風間は嫌いなので、
「今のお前が・・・・」
口だけを動かした。


end.
綾小路君は、歪んだ所に愛情を求める気がする。