古キョン/明日
両思いだけど、自信の無い古泉くん。
キスしてるけど、まだ恋人同士じゃない。
古泉くん視点。
- 明日 -
彼のせいにした。
卑怯な僕は逃げた。
距離が開いて、見えなくなって。
うしろで彼が呼んでる気がする。
振り向いてはいけない。
「おーい、古泉?寝てんのか?お前の番だぞ」
向かい合わせに座って間に白と黒のゲームをやっていた。
ぼんやりと空を見つめる僕を気遣ってか、彼が目の前で手をひらひらと振った。
苦笑いを浮かべながら、
「すみません、ぼんやりしていました」
「ぼんやりすんな、負けかけてるんだから、たまには俺を驚かすような華麗な逆転勝利をしてみてくれ。勝つばかりでは詰まらないってことを俺はこの年にして知ったよ」
はっと、ため息とも笑い声ともつかない音が彼の口から零れた。
彼に冷たいと言われても、熱い視線を向けてしまったら僕らの関係は終わる。
友人でもない、恋人でもない、家族でもない。
理不尽と言う空気を杯一杯に吸い込んで、
窮屈と言う壁に潰され、道徳と言う型にはめ込まれる。
僕らはただの脇役でしかない。
そんな配役。
決して、世界を救うヒーローにはなれない。
「あなたは、勝ちにこだわらないんですね」
「いや、お前が執着してなさすぎだろ、勝つ気があったら成長するだろ。同じ手順で進めれば同じ結果だぞ、俺よりよく回る頭でしっかりと考えてくれ」
彼は頬杖をついて、まつげを少しだけ伏せた。
ぐうーんっとパソコンの回転音がした。
目線を向けると齧り付く勢いで凉宮さんがパソコンを見つめていた。
大きなヘッドホンをつけている。
彼は鍵。
僕はその辺に転がってる葉っぱ程度。
自分を低く見積もるのは得意だ。
過大評価は己が一番疲れるから。
普段はニコニコと笑顔を貼付けていれば誰も気づかない。
笑ってても心は荒れて、そんなデリケートな部分に彼は入ってくる。
彼は僕にとっても鍵なのかもしれない。
鍵を開け、入り込む。
鍵(大事なもの)を持っていると言う、安心感で。
少しだが心が癒えた。
少しだけ、強くなった。
ぱちっと新たな陣地拡大のため盤面へ石を打った。
自分の石は終盤戦を迎えた今も数えるぐらいしか並んでいない。
そこへ、彼も石を置いた。
ひっくり返されて行く。
あぁ、しまったっと考えながらも次の事はあまり考えていない。
指先で石を撫でた。
彼はお茶をすすった。
朝比奈さんが「おかわり要りますか?」っと言う。
「いえ、今日はもういいです、ありがとうございます」
互いに笑い、彼女は椅子に座り直してやりかけの課題に手をつけた。
引き止めて、閉じ込めてしまいたいときもある。
鍵は共有するものではない。
個人のものだ、オールマイティーな鍵はセキュリティー上よくない。
でも、彼は誰の懐にも気づいたら居る。
居場所が多い。
僕の隣、本を読む彼女の隣、可憐で可愛らしい彼女の隣、そして、破天荒なわがままな彼女の隣。
他にも。
自分みたいに作った居場所でなく、自然と出来た居場所。
本を読んでいた長門さんが、分厚い本を閉じた。
パタンと音がしたのでパソコンを見ていた凉宮さんへ視線を向けた。
「さぁて!そろそろ今日は帰りましょうかね」
背中を伸ばしながら彼女は立ち上がり、鞄を抱えると、
「ゆき、みくるちゃん帰りましょう!」っと赤く光る夕日を背に言った。
扉へ歩き始めた彼女を追うように二人が鞄を持って歩く。
扉の前で振り返り、彼女は笑った。
「キョン、古泉くん。それじゃぁ、また明日ね。キョン、鍵閉めておいてよね」
「へーへぇ。わかってますよ、ハルヒさん」
嫌みっぽい発音で言うと「生意気っ!」と言って強く扉を閉めて帰って行った。
バタンッと揺れるふるい扉と怒っている足音に続く二人の足音を聞いた。
「ふふ、ホント、好かれてますね。今度、凉宮さんとの自然な会話のレクチャーをしてください」
雰囲気で彼女が本当に怒っているようには感じなかった。
「嫌みかよ。つか、自然って何だ。お前のまんまでいいだろ」
そうですね、とは言えなかった。
そろそろ帰るかっとオセロの石を集め始めた彼の手を振れ、キスをした。
「・・・・おまえ、ホント、突然なんだよ」
「そうですか?」
「そうだよ、なんか言えよ」
「では、もう一度キスしていいですか?」
覗き込んだ彼の顔が赤く、可愛らしかったので返事も聞かずにキスをした。
明日、思いを告げる。
キスしてるけど、まだ恋人同士じゃない。
古泉くん視点。
- 明日 -
彼のせいにした。
卑怯な僕は逃げた。
距離が開いて、見えなくなって。
うしろで彼が呼んでる気がする。
振り向いてはいけない。
「おーい、古泉?寝てんのか?お前の番だぞ」
向かい合わせに座って間に白と黒のゲームをやっていた。
ぼんやりと空を見つめる僕を気遣ってか、彼が目の前で手をひらひらと振った。
苦笑いを浮かべながら、
「すみません、ぼんやりしていました」
「ぼんやりすんな、負けかけてるんだから、たまには俺を驚かすような華麗な逆転勝利をしてみてくれ。勝つばかりでは詰まらないってことを俺はこの年にして知ったよ」
はっと、ため息とも笑い声ともつかない音が彼の口から零れた。
彼に冷たいと言われても、熱い視線を向けてしまったら僕らの関係は終わる。
友人でもない、恋人でもない、家族でもない。
理不尽と言う空気を杯一杯に吸い込んで、
窮屈と言う壁に潰され、道徳と言う型にはめ込まれる。
僕らはただの脇役でしかない。
そんな配役。
決して、世界を救うヒーローにはなれない。
「あなたは、勝ちにこだわらないんですね」
「いや、お前が執着してなさすぎだろ、勝つ気があったら成長するだろ。同じ手順で進めれば同じ結果だぞ、俺よりよく回る頭でしっかりと考えてくれ」
彼は頬杖をついて、まつげを少しだけ伏せた。
ぐうーんっとパソコンの回転音がした。
目線を向けると齧り付く勢いで凉宮さんがパソコンを見つめていた。
大きなヘッドホンをつけている。
彼は鍵。
僕はその辺に転がってる葉っぱ程度。
自分を低く見積もるのは得意だ。
過大評価は己が一番疲れるから。
普段はニコニコと笑顔を貼付けていれば誰も気づかない。
笑ってても心は荒れて、そんなデリケートな部分に彼は入ってくる。
彼は僕にとっても鍵なのかもしれない。
鍵を開け、入り込む。
鍵(大事なもの)を持っていると言う、安心感で。
少しだが心が癒えた。
少しだけ、強くなった。
ぱちっと新たな陣地拡大のため盤面へ石を打った。
自分の石は終盤戦を迎えた今も数えるぐらいしか並んでいない。
そこへ、彼も石を置いた。
ひっくり返されて行く。
あぁ、しまったっと考えながらも次の事はあまり考えていない。
指先で石を撫でた。
彼はお茶をすすった。
朝比奈さんが「おかわり要りますか?」っと言う。
「いえ、今日はもういいです、ありがとうございます」
互いに笑い、彼女は椅子に座り直してやりかけの課題に手をつけた。
引き止めて、閉じ込めてしまいたいときもある。
鍵は共有するものではない。
個人のものだ、オールマイティーな鍵はセキュリティー上よくない。
でも、彼は誰の懐にも気づいたら居る。
居場所が多い。
僕の隣、本を読む彼女の隣、可憐で可愛らしい彼女の隣、そして、破天荒なわがままな彼女の隣。
他にも。
自分みたいに作った居場所でなく、自然と出来た居場所。
本を読んでいた長門さんが、分厚い本を閉じた。
パタンと音がしたのでパソコンを見ていた凉宮さんへ視線を向けた。
「さぁて!そろそろ今日は帰りましょうかね」
背中を伸ばしながら彼女は立ち上がり、鞄を抱えると、
「ゆき、みくるちゃん帰りましょう!」っと赤く光る夕日を背に言った。
扉へ歩き始めた彼女を追うように二人が鞄を持って歩く。
扉の前で振り返り、彼女は笑った。
「キョン、古泉くん。それじゃぁ、また明日ね。キョン、鍵閉めておいてよね」
「へーへぇ。わかってますよ、ハルヒさん」
嫌みっぽい発音で言うと「生意気っ!」と言って強く扉を閉めて帰って行った。
バタンッと揺れるふるい扉と怒っている足音に続く二人の足音を聞いた。
「ふふ、ホント、好かれてますね。今度、凉宮さんとの自然な会話のレクチャーをしてください」
雰囲気で彼女が本当に怒っているようには感じなかった。
「嫌みかよ。つか、自然って何だ。お前のまんまでいいだろ」
そうですね、とは言えなかった。
そろそろ帰るかっとオセロの石を集め始めた彼の手を振れ、キスをした。
「・・・・おまえ、ホント、突然なんだよ」
「そうですか?」
「そうだよ、なんか言えよ」
「では、もう一度キスしていいですか?」
覗き込んだ彼の顔が赤く、可愛らしかったので返事も聞かずにキスをした。
明日、思いを告げる。
PR
この記事にコメントする
カウンター
カテゴリー
プロフィール
HN
ナオ太。
連絡先
kuroyagi_yuubin☆yahoo.co.jp
(☆→@に変更)
(☆→@に変更)