box。

- うしろ -


いつも前を向いてる。
背筋伸ばして、気張って。そんなにも自分を強く見せて疲れちゃわないの？
大川が綾小路を好きなのって、その屈しない感じじゃないかな？
たまには、後ろを振り返ってみればいいのに。
後ろばかり見るのは良くないけどさ。

綾小路に伸ばした手が握り込まれた。
コチラが伸ばす事はあっても手を取られる事があるとは思ってなかったから、呆気にとられて、ただ、ジッと見つめてしまった。
彼は普段のピシッとした雰囲気もなく、縋るような弱い物になっていた。
腕に彼の重み、もう、自分一人では自立出来ないっとでもいうように。
近くには大川。もう逃げられないよっと言うように泣き言を口にして、僕に縋る。
耳元に口を寄せて、助けて。
強くあって欲しい、悪あがきをしてる姿がおもしろいと思っていたのに。
彼に手を伸ばし、取られたのが運の尽き。

僕は、綾小路を好きになったのかも。

これは、世に言うギャップってやつにやられたのかな。
「僕が、助けてあげる。だから、僕の物になってよ」
悪魔と同じような交換条件、声を出さないままコクリと頷いた綾小路の顔は、何処か幸せそうだった。
解放を望んでいるの？束縛を望んでいるの？
君の求める物は僕には読み取れないよ。
でも、それも全部含めて、今から僕の物だよ。
自然と口端が上がる。ニヤリと音でもしそうな程に、完璧な笑顔。

冗談でユッキーって呼んだら、君はどんな顔をする？



end.
雰囲気系・・・・