box。

- 16：30 -


夕方だ。部活終了だ。
三年生は引退したら五時以降は受験勉強の邪魔になるという理由で残っちゃいけない規則になってる。
だから、４時半を時計が指したら終了の時間。
教室で、引退後も部活熱心な綾小路を待ってる。
待ってる間、携帯を弄って沢山の人と楽しいメールや通信携帯ゲームの遣り取りをしていたのに、この時間になれば、ばたりと返信しない。
強制ログアウトー！現実にログインー！
鞄を肩にかけて、軽い足取りで、靴箱の所へ向かう。
タラタラと歩いてると、だいたい、彼が来るのと同じタイミング。
顔を見て、「お疲れ〜」っと、声をかける。
「あぁっ」って、素っ気ない返事をする彼と並んで門をくぐる。
待っている間に手に入れた情報で今日の寄り道を決める。
新商品出たらしいから、食べに行こうよっと、買い食いのお誘い。
彼は鼻が良いけど、美味しいものに対しては拒否反応を起こさないから、前に言って美味しいと言っていた、パン屋へ向かう。
本当は米派なんだっと、前に連れて行った時、言ってたけど、食べちゃえば。美味しさを知っちゃえば。
「あぁっ」って、口答えせずに買い食いルートへ足を踏み入れる。
向かう途中、さっきまでやってた、ゲームの話をする。
モンスターがどうだとか、アイテム入手だとか。
言ったって、綾小路はゲームは守備範囲外だから、全然分かってない。
「うん」って、返事したりするけど、絶対分かってないでしょ。
愛想はないけど、相槌は上手いんだから。
だから僕もよく喋る。
女の子と、帰り道を一緒にしてたときは女の子が殆ど喋って、僕が適当に返事をするのがパターンだったのに。
相手が変わっただけで、こんなにも変わるんだな。
立場が変わっても、全然嫌じゃない。
夏の間は出来なかったけど、最近は日が落ちるのも早いからって、理由つけて、手を繋いだりもする。
冷えた指先を擦りあわせて、でも、ユルく繋いで。
誰かが来たらすぐ放せるように。
僕がこんな風に回りを気にしたりって、人間変わるもんだ。
ふふふっと、笑った。

あと何回、一緒に帰れるかな。
学生なんて今のうち。冬になったら寒いと言って、もう少し近づいて歩こう、全然問題ないよ。寒いからね。
理由をつけて。



end.
卒業したら、こんな時間に一緒に帰る事なんてない。