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宮牧/群青(title)

お題一つ目。「群青」(配布元:RUTH 様)

サイレンの宮牧です。

- 群青 -


冬になりかけの空を見た、冷たく透き通った空気が、空を青くうつす。
冷えた山道で、宮田さんの帰りを待つ。
腕に巻かれた時計は既に営業時間を越えている。
いつもなら、片付けが終わって、そろそろ来ていてもおかしくない数字を針が刺している。

「早く、きませんか?」

早く来ないかな?ではなくて、きませんか?
誰に問い掛けるでもなく零れた声も、青色な気がした。
ころころと転がって、目線を下げると、青く染まった宮田さんが、向かってくるのが見えた。
夜の青と、私がお落とした青に色づいた彼は、不機嫌そうだ。
彼が目の前に来て、演技がかった大きな溜息をついた。

「またですか」

呆れた声に、ふふふっと、笑いながら起ち上がる。
服に付いた砂埃を払いながら、目線が近づく。
また、です。っと、言葉を口の中で転がした。

「あなたも、飽きないですね。私を待っても何も得にならないでしょう」
「いいえ、得です」

小さい声で返事をした。自信がある回答なのに、自信あるように答えれない。
待つという、行為はとても幸せな時間なんですよ。
たとえ、この場所で落ち合いましょうと約束しなくとも。
本当は、別の道から行けば、少しだけ早く家に帰れるのに、ココを通ってくれる優しさも。
私は暇だから、いくらでも待てるんです。

「それにしても、少々薄着じゃないですか?まだ冬ではないにしても冷えます」
「そうですね」
「他人事みたいに言いますね」

私、案外丈夫なんです。
口の中でまた、言葉を転がす。
無言で差し出した手は青白い。

「ほら、冷えちゃってるじゃないですか」

そういって、手渡された、焦げ茶の手袋は、温かい色。
これは?っと疑問がそのまま顔に出て、彼を見つめる。

「やめろって言ってもやめないでしょ、あなたは。だから、対策です」
「・・・ありがとう、ございます。私も、宮田さんに手袋をプレゼントしても良いですか?」
「深い色のものが欲しいです」

そう言った彼に、今日の夜の色みたいな手袋を買おうと思った。



end.
宮牧でも、牧宮でも、どっちでもいいな。
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