box。

「跡部さん、俺の事、好き、なんですよね？」
驚いている俺の目の前で平然と日吉は言った。
日吉は、俗にいう“腐男子”と言うものらしい。
俺が告白したのが２週間前。
部活後に何気なく引き止めて思いを伝えた。
その時の反応は可もなく不可もなく。ハッキリとしないまま終わった。
翌日ＯＫの返答をもらった。
頬を少し染めて小さく「あの、俺でよければ。お付き合いお願いします。」
なんて、言っていたのが嘘のような目の前の彼の姿。
何処で転んだらそうなるのか教えて頂きたいものだ。
自分は、返事をもらったときに心に決めたのだ。
ゆっくりでもいい。
確実に二人で歩いて愛情を深めて行こうと。
一歩ずつの歩みも日吉となら楽しめる愛おしい時間になるだろうと思っていた。
だが、どうだ。
蓋を開けてみたら、日吉は腐男子という自分の予想もつかない無い生き物のようだ。
前々から、少し電波な奴だとは感じていたが、まさかココまで。
固まってしまった俺の思考回路、状況は未だ掴めない。
「最近流行ってるらしいので取り入れてみました」
と、何処で手に入れたのかセーラー服を着ていた。
休みの日に、初めて家に呼ばれて柄にもなく胸を膨らませてやって来てみれば。
「着替えるんで、待っててください」と、客人を置いて部屋を出て行ったと思ったら数分後、現れたのがこれだ。
こんな状況をスマートに乗りこなせる自信はこの俺にも無い。
日吉よ、どうしたんだ・・・。
「・・・・セーラー。嫌いでしたか？」
不安げに自分を見つめてくる日吉は可愛い。さすが俺が惚れただけはある。
もともと、キレイな顔の作りなので悪くは無いと思う、が。
所詮は男。骨格や声までは女にはなれない。いや、日吉は女になりたい訳ではないから別にいいのか？
女装癖？
先ほど聞かされた説明では性同一性とかは言っていなかったから女性に対する希望が行動させているのでは無さそうだが。
「いや、その、嫌いとかそういうんじゃ。なんでその。セーラー・・・。」
「男の娘ってのが最近流行ってるらしくて一度体験してみたかったんです。」
「・・・そ、うか。」
一言返すのでさえ一苦労。全く理解出来ない。
何がしたいんだ？？
「あの、男の娘なんで、下はボクサーのままなんですっ」
嬉しそうに言ってスカートの裾を少しだけまくり上げた。
普段、部活の時に着替える姿なんて見ているのに、少しだけ心拍数が上がった。
色気も無い濃いグレーのボクサーパンツなのに。
跳ねた心臓を押さえるように、そっと手を添えて自身の胸を撫でた。
何が嬉しいのかわからないが、日吉なりのこだわりなのだろう。
パンツは女性ものじゃないのがいいですよねっと同意を取るわけでもないつぶやきが聞こえた。
「それで、その格好を見せてどうしたいんだ？」
相手のペースに乗せられたら負けだっと気を入れなおし、率直な意見を投げかけた。
「えぇ、実は、俺の疑問を解明するのを手伝ってほしいんです。」
恥ずかしそうに俯いた姿を見て、小さく胸が弾んだ。
「何だ？」
「はい、その・・・・これなんですが」
と、手渡された一冊のマンガ。表紙はパッと見た感じでは男女が微笑ましく抱き合っているイラストが載っている。
ペラペラとめくってみると抱き合っている表紙の二人はどうやら男女でなく男同士っとわかった。
裸になり汗だくになって互いのものを擦りあっているページがあった。
自分は、いずれは日吉との性行為を期待している。
それが、バレたのか。それとも、日吉なりのOKサインなのか。
計り知れないが冷や汗と期待から来る熱なのか温度が変化した。不安定に揺れるのは気持ちも同様。
「これ、がどうしたんだ？」
「俺、これが本当に気持ちいいのか知りたくて・・・・」っと横からページをめくられた。
そこに見えるのは、喘ぎ声を上げながら男に挿入られるシーンだった。
紙の中の男性は嬉しそうな表情を浮かべている。
「・・・・・」
「駄目、ですか？」
こちらの出方を待っている日吉には悪いが、ページを見つめたまま戻りかけていた正常な思考も一気に止まってしまった俺は何の反応も出来ない。
これは、日吉からのセックスアピールなのか・・・？
挿入れる挿入れないの有無を問われている。
呼吸を整え、決断した。

今日俺は大人になる。



End
中途半端ですが、終わる。
日吉くんはやおい穴を信じてる口で行きましょう。気が向いたら続き書きます。