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ウメソメ/垂らした糸

メインジャンルでは無いけど、書いちゃいました。
337のウメソメです。ホストなウメさんの時で、フクちゃん視点。
短い話で意味ないですが・・・。

- 垂らした糸 -


団長の部屋にはよく知らない人が居る。
部屋の住人なのか、流れ着いた先がたまたま団長の部屋だったり。
俺もそんな漂流者の一人ではあるんだけど。たまに意外な客人が来る。

昼間の明るい光の射す窓際のソファ腹を上にして寝転んでる。
明るい場所で見るソイツは、怒っているのか真剣に手の中の携帯ゲーム機を睨みつけている。
小さく電子音も聞こえてたけど、ゲームの音だったんだ。
あれ、おこ、怒ってる・・・・?
声をかけるべきなのか悩む。玄関で「ただいま」と言ったが、声は返ってこなかった。
気配があったからリビングに来たのに、なんで、何で居るんだ。ソウメイが。
よりによって、彼と二人きりって。なんの仕打ちだ。
自分の置き場に困って突っ立ったままの俺。いや、ただいまって言ってガン無視してんのはソウメイだから、ココは気にせず、見なかったふりをして別の誰かが来るのを何処かで・・・。
下手に刺激して怒ってる風のソウメイの暴力スイッチを入れたくない。
コソコソとその場を逃げるように玄関の扉に手をかけるよりも早く、目の前でガチャンッと開いた先には団長が立っていた。
俺に気づいた団長は「ただいま」と、目元を少しだけ細めた。手にはスーパーのビニール袋とケーキの箱。
ケーキなんてお祝いの時しか食べない俺としては、団長は日常で甘い物食べるんだっと。
「あ、おかえりなさい」
「フク、どっか行くの?」
「え、いや、中にソウメイが居て居心地が・・・・」
団長に隠しても仕方が無いから、不機嫌そうなソウメイが部屋に居る事を告げた。
俺の言葉に「うん」と、だけ答えてサンダルを脱いで部屋に入ってきた。
敵対視してる団長とソウメイがあったらどうなるんだろう。
ここで、喧嘩を始めたとしても俺には止める自信が・・・。
でも、何かあってからじゃいけないので、俺はソッと団長の後をついていった。
団長は俺の心配をよそに、冷蔵庫に買ってきた物を入れ始め、そして、ソウメイに話しかけた。
「ケーキ、ありますよ」と。
まるで、客人にお茶を振る舞うように。ソウメイは長い前髪から鋭い目がチラリとこちらを見て、ダルそうに身体を起こした。
ガシガシと頭を掻いてゲームのスイッチを切った、密かに聞こえていたポップな音が聞こえなくなる。
横で団長がお茶を入れる準備をする音がするぐらい。
き、気まずい。この空間は何だ。ソウメイも何で黙ってココに。というか、どうやってココに入ったんだ。
「コーヒー、飲みますよね?」
「カフェオレ」
短い会話に、優しい団長はどことなく嬉しそうに応えた。
「フクは?」
「あ、すみません、いただきます」
「ケーキ一杯買ってきたから一緒に食べようか」
「あ、準備します!」
すぐに小皿と、フォークを持ってソファの前の机に準備をする。ケーキの箱も忘れずに。
ソウメイがイライラした風に俺を睨みつけて「声でけぇよ、うっせ」と言われた。
なんかスゴくイライラしてる人が居るんですけど!やっぱり、逃げれば良かった。
こわい、威圧感がこわい。この異空間がこわい。
泣いてしまいそうだけど、団長も居るし、大きな被害は出ないはず。
しかし、ソウメイが何しにきたのか・・・?
チラリと視線を向けると「んだよ」と低い声に背筋が自然と縮こまる。
そこに、良い香りのするカップが運ばれてきた。
「ケーキ、何食べます?」
ソウメイに向かい合うように団長が座り、俺は右側にソウメイ、左側に団長のポジションだ。しまった、殴られる距離が近い。

ビビりながらも、団長のケーキの配給が終わった。
「いただきます」との声に合わせて自分も「いただきます」と復唱した。
ソウメイは口には出さなかったけど、俺たちがフォークを持つのを待ってたみたい。可愛い所あるじゃない。
行儀悪く膝を立てた体勢でソウメイがいちごのタルトを食べた。
「砂糖は?」
「二つ」
「フクは?」
「俺はいいっス、ありがとうございます」
ショートケーキにフォークを入れて、一口食べる。
美味しい。ケーキなんて久しぶりだし。最後にイチゴを食べようと避けたら横から手が伸びて横取りされた。
「俺の!」と声を上げたがソウメイの睨みつけに続きが出てこなかった。
団長の方に目を向けると、やっぱりどことなく嬉しそう。
「ソウメイ、何しに来たの?」
「あぁ?」
応える義務など無いっとでも言うようにチラリと向いた視線がすぐにケーキに。
「ゲームやりにきたんだよ」
助け舟は左からやってきた。
「ゲーム?」
「そ、パズルゲーム、フクも知ってるでしょ、テトリス」
「え、そんなのやりに?」
自然に零れた疑問が気に食わなかったのか残っていたケーキを半分程とられた。
「ちょっ」
「おせぇよ。早く食え」
既にソウメイの口の中に消えた俺のケーキ。憎い。久々のケーキだったのに。
「まだあるよ」と出された箱の中をのぞく。中にはまだ色々な種類のケーキが沢山入っている。
「団長って、甘い物好きだったんですね」
「好きでも嫌いでもないよ」
「え、だって・・・あ、後で帰ってくる皆のためですか?」
「違うよ」
そう言って指差す先にはソウメイがいる。え、ソウメイのため?
驚いて見てると鋭い目に睨まれた。蛇に睨まれたカエルのように見を硬くしてる俺を気にせず、団長は喋った。
「聡明さんが、来るように色々とエサを垂らしてるんだよ」
まるで、野良猫を愛でるような目で団長は微笑んだ。
「うっせぇな、俺はその辺の野良じゃねぇぞ、ウメ!」
「知ってます、まだあるんで沢山食べて下さい。クリアも出来てないでしょ」
ソウメイも団長の微笑みに含まれた意味を感じ取ったみたいで、イライラとしてる。けど、新しいケーキを選んで食べた。


「全く、ムカつくヤロウだよ」っと文句を言いながら一つ、また一つと箱の中のケーキが無くなるまでソウメイは帰らなかった。



end.
聡明さんを餌付けしたい願望。
色々とエサを垂らして、家に呼ぶ団長。
初めてそんなウメとソメに遭遇したフク。
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