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跡→←日/さんかく

お互いに好きどうしだけど、付き合わないし、繋がらない跡部さんと日吉くんの話。
短いです。
ハッピーエンドじゃないし、解決もしないので、嫌ならスルー。


- さんかく -


「ねぇ、ヒヨ〜。跡部が、さっき、ヒヨの事好きだって!」
部室へ歩いていた俺の所に突然の衝撃。
肩にかけていた鞄ごと包むように抱きついてきた芥川さんに「そうですか」と答える。たいして気にも止めない。
俺はちゃんとお使いしましたよ!っと尻尾でもふりそうな勢いで俺に甘えてくる先輩に溜息が零れた。
「もぅ、離れて下さい。わかりましたから」
「全然わかってないんだってぇ〜!」
「わかってます、えらいです、伝言ありがとうございます」
言葉は丁寧なのに先輩を引きはがそうと頭をグイグイと押した。
俺の腰に手を回してガッチリとホールドされた腕が伸ばされて、痛い痛いと言いながらも顔が嬉しそうだ。戯れてくる犬みたいなんだから。
「お前ら、油売ってないで早くせんと跡部にドヤされるで」
そう声をかけてくれた忍足さんも顔が笑っている。俺をからかっても仕方が無いのに。

部活は変わらず順調とは、ならなかった。先ほどの部室前でのゴタゴタは結局怒られてしまった。
不本意な状況、ペナルティとして二人で走らされている。
一定のリズムで走りきろうと思っている俺に先輩がまた話しかけてくる。
言葉を発すると息づかいのタイミングがずれて苦しくなるのに、本当にわかってない。
ジロリと視線を向けると反省の色を全く感じさせない顔でニコニコしている。
この人は、へこたれたりって事がないんだろうか?
「ねぇ、ねぇ。聞いてるの?」
「聞いてますよ」
ハッハッと息が多く混ざった言葉が零れる。
「だからさ、俺がさっきから言ってるのは、お互い素直になれってことぉ〜」
それから走り終わる間中、素直になれや、ちゃんと伝えれば良いのにと言われた。案外、しつこい。
聞いてはいるが先輩が何を言っているのかわからない、時々、聞いているのかと確認されるが理解は出来てない。ただ耳に入ってくるだけの言葉。
そう言えば、この間、鳳にも言われた。あいつはしつこいんじゃなくて人が良いと言うか、おせっかいと言うか・・・。
鳳も同じように、本人に伝えないとわからないよ?っと眉を下げて言っていた。
隣では知るこの人も、同じ事を俺に言っているんだろうな。
はい、はいっと返事をしながらペナルティの距離は縮んでいくのに。

一つも変わってない。一つも変われないでいる。
俺と跡部さんは何かを介入してじゃないとお互いを見ない。相手を確認するすべは、他者や感情を挟んでのみ。
どちらとも好意を持っているのに踏み出せないのも、何かを通してじゃないと伝えられないのも同じ。
完璧すぎる跡部さんも、俺と同じように欠点があるんだな。踏み出せない距離は二人の臆病な心の大きさだ。
二人の気持ちが、他者を通して行き交う。だから周りは気づいてる。
互いに好きなら良いじゃないか。それは人ごとだから。越えられないんだ。
好きって言うだけ。違う。好きだけど、好きになっちゃいけない人なんだ。
跡部さんだって、好きだけど、好きになっちゃいけない。

この溝は周りがとやかく言おうと、深まる事はあっても浅くなる事はない。
芥川さんが、ギャーギャーおせっかいを焼こうが俺は変わらない。
ランニングを終え、コートに戻りタオルで汗を拭く。チラリと向けた視線が、跡部さんと交わされたが、コレは下克上の気持ちを込めた視線ですよっと自分を誤摩化す。
「ほら見てる!好きなのがいけない理由って何」っとタオルを芥川さんに横取りされたけど、答えるなら沢山あるよ。
それはね-----。



end.
好きだけど踏み込んじゃいけないのを知っているから、その距離や深さを自分が一番知っているから。
直線にはなりません。
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