忍鳳/ずっとずっと
テニスで日吉受けではありませんが、忍足さんと鳳くんの話。
高等部卒業から10年後です。パロ苦手な人はスルーしてください。
宍←鳳前提の忍足×鳳です。
- ずっとずっと -
華やかな会場、ここに居る皆が幸せそうに笑ってる。
僕だけが心の中でコッソリと泣いている。
今日は宍戸の結婚式。
配慮で割り振られた席は学生のときのテニス部のメンバー。
隣に座ってる日吉が僕の方をチラリと見て一瞬だけ顔を歪めた。
折角のめでたい席でそんな顔を浮かべちゃ駄目だよ。
笑い返すと日吉も笑った。
彼は僕の気持ちを知っているから無理にでも顔を作った。
日吉の隣に座ってる芥川が出された料理を「美味しいね」っと言うので「ですね」と返した。
本当は結婚式に出席なんかしたくなかった。
僕の初恋、今も好きな人。
見つめる先のお嫁さんが皆を見回してから、慈しむような愛に満ちた眼差しで隣の宍戸を見てる。
僕もずっとそんな目で彼を見てたのに。
学生の頃から好きだった。
好きで好きで仕方が無かった。
でも、隠した。
宍戸に告白したって拒絶はしないにしろ、距離を置かれたはず。
僕は隠す事で彼の友人であり後輩、同じテニスメンバーとして一番近い居場所を手に入れたから。
苦しくても幸せだった。
例え、宍戸から付き合ってる彼女の話を聞いても。
一度、「お前良い奴なのに彼女つくらねぇの?」と言われたときは「僕なんてモテませんよ」と俯いて小さな声で言うのが精一杯だった。
すごく酷い顔をしていたとおもう。
「お前なら選びたい放題だろ」と。
その言葉には返事は出来なかった。
選べるのなら僕はあなたを選びたかった。
パチパチと温かい拍手でが場を包む。
花嫁さんが家族に向けての手紙を読み上げた所だ。
大分ボンヤリとしていたみたいで日吉とは反対側の隣に座ってる忍足が肘で小突いて気づかせてくれた。
慌てた拍手をする。暗くして花嫁と家族にだけあてられたスポットライト。
暗がりの中、涙がこぼれた。
それは感動の場面で流したように周りには見えたはずだった。
だから隠さなかった。
無事に式が終わった。
僕はちゃんとした顔で「おめでとう」や「お幸せに」が言えただろうか。
息苦しさで早くこの場から離れたかった僕は「最近疲れてるんだ」と逃げた。
実際、仕事で今日の休みをとる為に残業してたので嘘ではない。
このあとの二次会にいく日吉と少し言葉を交わして会場をはなれた。
タクシーで予約してあるホテルへ向かっても良かったけど、早く部屋についた所で色々と考えてしまいそうだったので歩く事にした。
今日の為に新調した服が窮屈でネクタイを緩める。
途端に息が抜けた。溜息みたいに深い息が。
息と一緒に涙も出てきそうだったけど、「鳳」と名前を呼ばれたので顔を引き締め振り返ると忍足が手を振って歩いてきた。
「鳳、ホテル帰るんやろ?俺も。だから一緒に行こう」
「あ。二次会は参加されないんですか?」
「うん、まぁ。実は夜勤で寝てなくってなぁ。騒ぐ元気はないんよ」
「そうですか」
「なぁ二人で飲みに行こか」
「えっ、疲れてるんじゃないんですか?」
「疲れてる時に軽く飲みたくならん?」
断る理由も見つけられなくて曖昧に頷いた。じゃぁ行こうかと肩を押された。
バーに行こうかと提案されたのを断ってガヤガヤと五月蝿い居酒屋に入った。
静かで落ち着いたバーに行ったら自分の心の音が聞こえてしまう気がしたから。
嫌な顔しないで忍足は居酒屋の席に座って「ビール二つ」と指を二本立てて注文した。
「軽くつまみも頼もうか」
促されるままに開いたメニューを覗き込む。式場で食べたからお腹はすいていない。
正直にあまりお腹はすいてないと言うと、店員を読んで彼は「厚焼き卵」を頼んだ。
「卵焼き好きなんですか?」
「好き、甘い奴は特に」
「へぇ、お母さんの味ですか?僕の家の卵焼きも甘いんですよ」
ヘラリと笑顔を浮かべ、見つけた会話の糸口を掴んだ。
「や、俺の家はダシの味なんだけど、甘いのは思い出の味。初恋の味かな」
「そうなんですか、初恋の味って可愛いですね」
言いながら自分の初恋の味を思い出した、あれは宍戸からもらったジュースの味。
パチパチと弾けるサイダー。この気持ちも泡みたいに弾けてなくなれば良いのに。
いけない、すぐに感傷的になる。
ハッと気づいて目の前の忍足を見た。
一瞬浮かべてしまった暗い顔を見られてないだろうか。
ビールが来て「乾杯」とグラスを合わせた。
すぐに厚焼き卵も運ばれてきて、大根おろしが添えられたダシの卵焼きだった。
「残念でしたね」
「んー、甘い卵焼きって不人気なんかなぁ」
「そんな事ないですよ、甘いの美味しいですよ。お酒のつまみだから塩気のあるダシや醤油なんじゃないですか?」
「かもなー」と忍足は卵を食べてビールをあおった。
僕も酒は強くないが付き合うようにグラスに口を付けた。
お酒が進んで頭の中がぼんやりとしてきた。
このまま帰って何も考えずに寝てしまおう。
目を覚ましたらいつもの日常が待ってる。
今までだって宍戸とは殆ど会わずに生活してきたんだ、何も変わらない。
居酒屋の扉の前で立っていると会計をすませた忍足が出てきた。
「ごちそうさまです」
頭を下げると雑な手つきで頭を撫でられた。
「えぇよ。俺が付き合わせたんやし。・・・帰ろか」
そう言って誘うときと同じように肩を押された。
もうすぐホテルにつく、宍戸が泊まりの招待客用として手配してくれてた所だ。
二次会に行ったメンバーは戻ってきてるんだろうか。
黙って歩いていたらいきなり忍足に手を掴まれた。
「なんですか?気持ち悪くなりましたか?」
飲み過ぎてしまったんだろうか?
そんなにも飲んでた記憶はないが、疲れてる身体にはこたえたのかもしれない。
顔を覗き込んだら、案外ハッキリした目が僕をとらえた。
「鳳、お前、今日の式で泣いてたやろ?」
息を飲んだ、見られてたのか?
「・・・・泣きますよ、だって感動しちゃって」
ヘラリと無理に笑顔を作る。今日一日ずっと作り笑いをしてるから変に力が入って顔が痛い。
このまま作り笑いしか出来なくなったらどうしよう。
「誤摩化さんで」
「・・・・・・・・・・・」
黙り込む事でイエスと答えているような物だ、でも、言葉が出てこなかった。
忍足の手が僕の肩に触れる。
「わかるよ、だって俺、ずっとお前の事見てたんだから」
抱きしめられて驚いて身体が動かせない。
「え・・・?」
「だから、お前さんが宍戸ん事見てたように俺もお前の事見てたんだ。な、俺じゃ駄目なん?」
「・・・・・それって、変わりって事ですか?」
「せや、宍戸の変わりで良いから俺にしとき」
「・・・忍足さんと宍戸さんは違いますよ」
「わかっとる。でも、俺にしとき。俺に愛されてそのうち宍戸の事なんか忘れさしたる。今は変わりでも良い」
ギュッと腕に力が込められる、背中に回された手が冷たい。
緊張してるんだ。
「僕なんかで良いんですか?」
「お前は素直で良い奴や、可愛くって大事にしたいってずっと思っとった」
「思ってる以上にズルくて嫌な奴ですよ?」
「えぇよ。俺はお前が好きなんだ」
「利用、するかもしれませんよ?」
「利用してくれても良い。いつか俺にメロメロにさせたるから」
夜といっても人が歩いてる道ばたで、僕は忍足の背中に腕を回した。
end.
甘い卵焼きは鳳君からもらってから忍足さんの初恋の味なんです。
て、地味ネタ。わかりづらくってすみません。
コレから彼らには幸せになって欲しいな。ずっと片思いだったからね。
高等部卒業から10年後です。パロ苦手な人はスルーしてください。
宍←鳳前提の忍足×鳳です。
- ずっとずっと -
華やかな会場、ここに居る皆が幸せそうに笑ってる。
僕だけが心の中でコッソリと泣いている。
今日は宍戸の結婚式。
配慮で割り振られた席は学生のときのテニス部のメンバー。
隣に座ってる日吉が僕の方をチラリと見て一瞬だけ顔を歪めた。
折角のめでたい席でそんな顔を浮かべちゃ駄目だよ。
笑い返すと日吉も笑った。
彼は僕の気持ちを知っているから無理にでも顔を作った。
日吉の隣に座ってる芥川が出された料理を「美味しいね」っと言うので「ですね」と返した。
本当は結婚式に出席なんかしたくなかった。
僕の初恋、今も好きな人。
見つめる先のお嫁さんが皆を見回してから、慈しむような愛に満ちた眼差しで隣の宍戸を見てる。
僕もずっとそんな目で彼を見てたのに。
学生の頃から好きだった。
好きで好きで仕方が無かった。
でも、隠した。
宍戸に告白したって拒絶はしないにしろ、距離を置かれたはず。
僕は隠す事で彼の友人であり後輩、同じテニスメンバーとして一番近い居場所を手に入れたから。
苦しくても幸せだった。
例え、宍戸から付き合ってる彼女の話を聞いても。
一度、「お前良い奴なのに彼女つくらねぇの?」と言われたときは「僕なんてモテませんよ」と俯いて小さな声で言うのが精一杯だった。
すごく酷い顔をしていたとおもう。
「お前なら選びたい放題だろ」と。
その言葉には返事は出来なかった。
選べるのなら僕はあなたを選びたかった。
パチパチと温かい拍手でが場を包む。
花嫁さんが家族に向けての手紙を読み上げた所だ。
大分ボンヤリとしていたみたいで日吉とは反対側の隣に座ってる忍足が肘で小突いて気づかせてくれた。
慌てた拍手をする。暗くして花嫁と家族にだけあてられたスポットライト。
暗がりの中、涙がこぼれた。
それは感動の場面で流したように周りには見えたはずだった。
だから隠さなかった。
無事に式が終わった。
僕はちゃんとした顔で「おめでとう」や「お幸せに」が言えただろうか。
息苦しさで早くこの場から離れたかった僕は「最近疲れてるんだ」と逃げた。
実際、仕事で今日の休みをとる為に残業してたので嘘ではない。
このあとの二次会にいく日吉と少し言葉を交わして会場をはなれた。
タクシーで予約してあるホテルへ向かっても良かったけど、早く部屋についた所で色々と考えてしまいそうだったので歩く事にした。
今日の為に新調した服が窮屈でネクタイを緩める。
途端に息が抜けた。溜息みたいに深い息が。
息と一緒に涙も出てきそうだったけど、「鳳」と名前を呼ばれたので顔を引き締め振り返ると忍足が手を振って歩いてきた。
「鳳、ホテル帰るんやろ?俺も。だから一緒に行こう」
「あ。二次会は参加されないんですか?」
「うん、まぁ。実は夜勤で寝てなくってなぁ。騒ぐ元気はないんよ」
「そうですか」
「なぁ二人で飲みに行こか」
「えっ、疲れてるんじゃないんですか?」
「疲れてる時に軽く飲みたくならん?」
断る理由も見つけられなくて曖昧に頷いた。じゃぁ行こうかと肩を押された。
バーに行こうかと提案されたのを断ってガヤガヤと五月蝿い居酒屋に入った。
静かで落ち着いたバーに行ったら自分の心の音が聞こえてしまう気がしたから。
嫌な顔しないで忍足は居酒屋の席に座って「ビール二つ」と指を二本立てて注文した。
「軽くつまみも頼もうか」
促されるままに開いたメニューを覗き込む。式場で食べたからお腹はすいていない。
正直にあまりお腹はすいてないと言うと、店員を読んで彼は「厚焼き卵」を頼んだ。
「卵焼き好きなんですか?」
「好き、甘い奴は特に」
「へぇ、お母さんの味ですか?僕の家の卵焼きも甘いんですよ」
ヘラリと笑顔を浮かべ、見つけた会話の糸口を掴んだ。
「や、俺の家はダシの味なんだけど、甘いのは思い出の味。初恋の味かな」
「そうなんですか、初恋の味って可愛いですね」
言いながら自分の初恋の味を思い出した、あれは宍戸からもらったジュースの味。
パチパチと弾けるサイダー。この気持ちも泡みたいに弾けてなくなれば良いのに。
いけない、すぐに感傷的になる。
ハッと気づいて目の前の忍足を見た。
一瞬浮かべてしまった暗い顔を見られてないだろうか。
ビールが来て「乾杯」とグラスを合わせた。
すぐに厚焼き卵も運ばれてきて、大根おろしが添えられたダシの卵焼きだった。
「残念でしたね」
「んー、甘い卵焼きって不人気なんかなぁ」
「そんな事ないですよ、甘いの美味しいですよ。お酒のつまみだから塩気のあるダシや醤油なんじゃないですか?」
「かもなー」と忍足は卵を食べてビールをあおった。
僕も酒は強くないが付き合うようにグラスに口を付けた。
お酒が進んで頭の中がぼんやりとしてきた。
このまま帰って何も考えずに寝てしまおう。
目を覚ましたらいつもの日常が待ってる。
今までだって宍戸とは殆ど会わずに生活してきたんだ、何も変わらない。
居酒屋の扉の前で立っていると会計をすませた忍足が出てきた。
「ごちそうさまです」
頭を下げると雑な手つきで頭を撫でられた。
「えぇよ。俺が付き合わせたんやし。・・・帰ろか」
そう言って誘うときと同じように肩を押された。
もうすぐホテルにつく、宍戸が泊まりの招待客用として手配してくれてた所だ。
二次会に行ったメンバーは戻ってきてるんだろうか。
黙って歩いていたらいきなり忍足に手を掴まれた。
「なんですか?気持ち悪くなりましたか?」
飲み過ぎてしまったんだろうか?
そんなにも飲んでた記憶はないが、疲れてる身体にはこたえたのかもしれない。
顔を覗き込んだら、案外ハッキリした目が僕をとらえた。
「鳳、お前、今日の式で泣いてたやろ?」
息を飲んだ、見られてたのか?
「・・・・泣きますよ、だって感動しちゃって」
ヘラリと無理に笑顔を作る。今日一日ずっと作り笑いをしてるから変に力が入って顔が痛い。
このまま作り笑いしか出来なくなったらどうしよう。
「誤摩化さんで」
「・・・・・・・・・・・」
黙り込む事でイエスと答えているような物だ、でも、言葉が出てこなかった。
忍足の手が僕の肩に触れる。
「わかるよ、だって俺、ずっとお前の事見てたんだから」
抱きしめられて驚いて身体が動かせない。
「え・・・?」
「だから、お前さんが宍戸ん事見てたように俺もお前の事見てたんだ。な、俺じゃ駄目なん?」
「・・・・・それって、変わりって事ですか?」
「せや、宍戸の変わりで良いから俺にしとき」
「・・・忍足さんと宍戸さんは違いますよ」
「わかっとる。でも、俺にしとき。俺に愛されてそのうち宍戸の事なんか忘れさしたる。今は変わりでも良い」
ギュッと腕に力が込められる、背中に回された手が冷たい。
緊張してるんだ。
「僕なんかで良いんですか?」
「お前は素直で良い奴や、可愛くって大事にしたいってずっと思っとった」
「思ってる以上にズルくて嫌な奴ですよ?」
「えぇよ。俺はお前が好きなんだ」
「利用、するかもしれませんよ?」
「利用してくれても良い。いつか俺にメロメロにさせたるから」
夜といっても人が歩いてる道ばたで、僕は忍足の背中に腕を回した。
end.
甘い卵焼きは鳳君からもらってから忍足さんの初恋の味なんです。
て、地味ネタ。わかりづらくってすみません。
コレから彼らには幸せになって欲しいな。ずっと片思いだったからね。
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