風綾/背中
学怖の風綾です。
美術部の風間くん。普通の美術部ですよ。癖のない。
別人過ぎるのでパロみたいです(滅)
- 背中 -
授業中に後ろから見た背中がキレイだったから、絵のモデルになってってお願いした。
軽い気持ちで言った。
そしたら、少し引きつった顔をして「嫌だ」と言われた。
何考えてんの、モデルになるぐらい良いじゃないか。
あの時の彼の顔を思い浮かべてイライラと手を動かした。
うろ覚えで彼の背中を紙に描いた。
クラスの殆どが猫背。みんな悪い姿勢で本読んだり、ゲームしたり、パソコンしたりしてるんだろうね。
なのに、その中で彼はシャキッと背を伸ばしてた。
怠い授業も真っ直ぐに黒板を見てる、真面目だね。
断られてから何故か目が離せない。
授業の間は真っ直ぐに綾小路の背中を見てる。
楽器とかやってるからなのかな。
吹奏楽も基礎体力つける為に走ったりしてるらしいし。
ぼんやりと頬杖をついて眺める。
先生の話なんて全く耳に入ってこない。
ま、頭のいい僕は教科書を見れば大半を理解出来るから、少しぐらい手抜きしたって良いんだ。
今はとにかく、見ていたい。
彼の背中を。
移動教室の時も見てる。
少しだけ距離を置いて、クラスの奴らと話しながらも前を歩く彼を。
体育の時も見てる。放課後は互いに部活に行くので見てない。
でも、僕は紙に彼の後ろ姿を描いて見てる。
最近は背中だけじゃなくて彼の事全部見てる。
足も手も、マスクに隠れた顔も、柔らかそうな髪の毛も。
鉛筆で描いてるのに紙の中の彼がどんどん息づいて本物に近づいてる気がする。
指でなぞると鉛筆の線が延びて画面が汚くなってしまった。
ガッカリだ、溜息が一つ零れた。
もう一度、ちゃんとお願いしてみようと思った。
もとから綾小路とはソコまで仲良くないから。
たまたま同じクラスになっただけって感じだった。
でも毎日見て毎日描いてる。彼は僕の特別になった。
「ねぇ」と教室で声をかけた。
何、と見返された目。警戒した猫みたいに鋭い。
「前にも言ったんだけどさ、絵のモデルになってくれない?」
前回は軽い感じに話かけたから拒否されたのかもしれない。
お願いします。自分でも驚いたけど素直に頭を下げてた。
僕を見上げる目が驚きに見開かれた。
「お前でも頭下げたりするんだな」
なんだい、その感心は。
真面目にお願いしてるのに。馬鹿にしてるのか。
見るとなんか知らないけど笑ってた。
彼の事を見続けてるけど、考えてる事はあまり関心がなかったから考えた事もなかった。
何で笑ってるの?
結局、また絵のモデルになってくれって頼みは断られた。
前みたいに「嫌だ」の一言ではなくて、理由も添えて。
「モデルなんかした事ないからどうしてれば良いのかもわからない、それに、俺なんか描いても楽しくないと思うから」
楽しいかどうかなんて、毎日飽きもせずに君を描いてる僕は・・・・。
その時、「残念だ」と零しただけで僕は引き下がらなかった。
本当は彼が描きたくて仕方が無かったけど。
僕に申し訳なさそうな顔を向けた彼を見て僕まで申し訳ない気持ちになった。
なんでかわからない。
自分の感情がこんなにもコントロール出来ないのなんて初めて。
彼の前だと、自分のペースが保てない。
崩されても居ないのに。ドキドキと胸が軋んで悲しくなった。
その日も僕はやっぱり、彼の絵を描いた。
彼の背中の絵を。
今日は顧問の先生が用事で美術室を開けないらしい。
最近は絵具も出さずにずっと鉛筆で彼を書いてる僕は紙と鉛筆があれば良いから教室で生徒が皆帰ってから絵を描き始めた。
ペラペラの紙にザックリとしたアタリ線を描いてから、描き込んでいく。
いつも描き始めは彼の首元から腰に書けてのラインから。
時計と鉛筆の音だけがする。
集中して周りが見えなくなる。
今までなんとなく、形だけの部員だったのに。
真面目に描いてる自分が不思議だ。
鉛筆の粉で黒くなった利き手。
気づいた時には、そろそろ下校時間だ。
早く片付けをして帰る準備をしなきゃ行けないのに、描き上げた達成感でぼんやりと時計を見上げる。
汚れた手で髪の毛を撫でた。
パタパタと足音がする。
顔を廊下の方に向けると開いていた扉から綾小路が入ってきた。
目が合ったので反射的ににっこりと笑いかけた。
「誰もいないと思った」
自身の机に寄って中からノートを一冊取り出した彼が僕の方に歩いてきた。
「何描いてるんだ?」覗き込まれた紙には彼の後ろ姿。
「後ろばっかりだな。前とか表情とかは描かないのか?」
言われて彼を見上げた。
どうやら顔をかいてないから僕が誰を描いてるかはわからないみたいだ。
「背中が描きたいんだよ。キレイなんだ、背中が」
「ふーん、相当好きなんだな」
「え?」
聞き返したけど、彼の言葉はしっかりと聞こえていた。
好き。
そうだな。抜けていた何かを埋めるよう。酷く納得してもう一度お願いをしてみた。
「絵のモデルになってくれないか。これ、君なんだ」
end.
知らなかったけど知ってた。
ちょっと反れてる感じ好き。
美術部の風間くん。普通の美術部ですよ。癖のない。
別人過ぎるのでパロみたいです(滅)
- 背中 -
授業中に後ろから見た背中がキレイだったから、絵のモデルになってってお願いした。
軽い気持ちで言った。
そしたら、少し引きつった顔をして「嫌だ」と言われた。
何考えてんの、モデルになるぐらい良いじゃないか。
あの時の彼の顔を思い浮かべてイライラと手を動かした。
うろ覚えで彼の背中を紙に描いた。
クラスの殆どが猫背。みんな悪い姿勢で本読んだり、ゲームしたり、パソコンしたりしてるんだろうね。
なのに、その中で彼はシャキッと背を伸ばしてた。
怠い授業も真っ直ぐに黒板を見てる、真面目だね。
断られてから何故か目が離せない。
授業の間は真っ直ぐに綾小路の背中を見てる。
楽器とかやってるからなのかな。
吹奏楽も基礎体力つける為に走ったりしてるらしいし。
ぼんやりと頬杖をついて眺める。
先生の話なんて全く耳に入ってこない。
ま、頭のいい僕は教科書を見れば大半を理解出来るから、少しぐらい手抜きしたって良いんだ。
今はとにかく、見ていたい。
彼の背中を。
移動教室の時も見てる。
少しだけ距離を置いて、クラスの奴らと話しながらも前を歩く彼を。
体育の時も見てる。放課後は互いに部活に行くので見てない。
でも、僕は紙に彼の後ろ姿を描いて見てる。
最近は背中だけじゃなくて彼の事全部見てる。
足も手も、マスクに隠れた顔も、柔らかそうな髪の毛も。
鉛筆で描いてるのに紙の中の彼がどんどん息づいて本物に近づいてる気がする。
指でなぞると鉛筆の線が延びて画面が汚くなってしまった。
ガッカリだ、溜息が一つ零れた。
もう一度、ちゃんとお願いしてみようと思った。
もとから綾小路とはソコまで仲良くないから。
たまたま同じクラスになっただけって感じだった。
でも毎日見て毎日描いてる。彼は僕の特別になった。
「ねぇ」と教室で声をかけた。
何、と見返された目。警戒した猫みたいに鋭い。
「前にも言ったんだけどさ、絵のモデルになってくれない?」
前回は軽い感じに話かけたから拒否されたのかもしれない。
お願いします。自分でも驚いたけど素直に頭を下げてた。
僕を見上げる目が驚きに見開かれた。
「お前でも頭下げたりするんだな」
なんだい、その感心は。
真面目にお願いしてるのに。馬鹿にしてるのか。
見るとなんか知らないけど笑ってた。
彼の事を見続けてるけど、考えてる事はあまり関心がなかったから考えた事もなかった。
何で笑ってるの?
結局、また絵のモデルになってくれって頼みは断られた。
前みたいに「嫌だ」の一言ではなくて、理由も添えて。
「モデルなんかした事ないからどうしてれば良いのかもわからない、それに、俺なんか描いても楽しくないと思うから」
楽しいかどうかなんて、毎日飽きもせずに君を描いてる僕は・・・・。
その時、「残念だ」と零しただけで僕は引き下がらなかった。
本当は彼が描きたくて仕方が無かったけど。
僕に申し訳なさそうな顔を向けた彼を見て僕まで申し訳ない気持ちになった。
なんでかわからない。
自分の感情がこんなにもコントロール出来ないのなんて初めて。
彼の前だと、自分のペースが保てない。
崩されても居ないのに。ドキドキと胸が軋んで悲しくなった。
その日も僕はやっぱり、彼の絵を描いた。
彼の背中の絵を。
今日は顧問の先生が用事で美術室を開けないらしい。
最近は絵具も出さずにずっと鉛筆で彼を書いてる僕は紙と鉛筆があれば良いから教室で生徒が皆帰ってから絵を描き始めた。
ペラペラの紙にザックリとしたアタリ線を描いてから、描き込んでいく。
いつも描き始めは彼の首元から腰に書けてのラインから。
時計と鉛筆の音だけがする。
集中して周りが見えなくなる。
今までなんとなく、形だけの部員だったのに。
真面目に描いてる自分が不思議だ。
鉛筆の粉で黒くなった利き手。
気づいた時には、そろそろ下校時間だ。
早く片付けをして帰る準備をしなきゃ行けないのに、描き上げた達成感でぼんやりと時計を見上げる。
汚れた手で髪の毛を撫でた。
パタパタと足音がする。
顔を廊下の方に向けると開いていた扉から綾小路が入ってきた。
目が合ったので反射的ににっこりと笑いかけた。
「誰もいないと思った」
自身の机に寄って中からノートを一冊取り出した彼が僕の方に歩いてきた。
「何描いてるんだ?」覗き込まれた紙には彼の後ろ姿。
「後ろばっかりだな。前とか表情とかは描かないのか?」
言われて彼を見上げた。
どうやら顔をかいてないから僕が誰を描いてるかはわからないみたいだ。
「背中が描きたいんだよ。キレイなんだ、背中が」
「ふーん、相当好きなんだな」
「え?」
聞き返したけど、彼の言葉はしっかりと聞こえていた。
好き。
そうだな。抜けていた何かを埋めるよう。酷く納得してもう一度お願いをしてみた。
「絵のモデルになってくれないか。これ、君なんだ」
end.
知らなかったけど知ってた。
ちょっと反れてる感じ好き。
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