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跡→←日/夏の端っこ

跡→←日で二人とも距離を縮めれないときの話。
の、つもりです。
みんなと夏まつり行こう!


- 夏の端っこ -


レギュラーメンバーで夏祭りに行くことになった。
鳳から誘われたときは、宍戸さんと鳳、そして俺の三人だけで行くはずだったのに、
どこで漏れたのか気づいたらレギュラーメンバーが行くことになっていた。
こんな派手な人たちと行動を共にするなんて、人が多くて、それだけでも疲れそうなのに、余計に面倒だ。
一緒に行くメンバーが増えたことに対して鳳は「大勢で行くの楽しみだね」っと能天気に笑ってた。
お前は宍戸さんと一緒なら何でも良いんだろうが。
どうせ、三人で行っても俺は傍観者であり、同行者ではないのだろうなってのはわかっていた。

あー、面倒だなっと思っていても家族に「祭りに行く」と伝えたら張り切った母に浴衣を着せられた。
普段は三歩引いた場所に居るような母が嬉しそうに浴衣の柄の話をして、アレやコレや見せてきた。
そんなキラキラした目で見られたら「着たくない」や「面倒」の言葉が言えなかった。
家を出るときは、見送る母の顔が嬉しそうだったので笑顔で玄関を出れた。
夕方の涼しくなった時間に集合なのに、張り切って2時ぐらいには着せ替え人形のように扱われて、実はもう疲れてる。
腕時計をチラリと見れば今からなら集合時間にちょうど着くぐらい。
計算されてるなぁっと感心した。
でも、母が楽しんでたから良しとしよう。

本当は浴衣を着る予定でなかったので自分の今のサイズの下駄がなかった。
兄が昔使っていたのを履いて、少し大きめだが支障はないと思った。
履き慣れない下駄をカラコロと言わせて歩いていたら後ろから走ってきたジローさんに抱きつかれた。
もうすぐ集合場所ってところでバランスを崩して軽く転んだのを他のメンバーにも見られてしまった。
「ひよ、ごめん〜〜」
少し汚れた浴衣を払いながら心配するジローさんはラフな服装で動きやすそうだ、羨ましい。
「大丈夫か?」と声をかけてくれる宍戸さんに、鳳。
「だっせぇ〜」と笑う向日さんをやんわり嗜める忍足さん。
みんな普段着だ。
集合場所の方へ顔を向けると普段着の樺地と、跡部さんは浴衣を着ていた。
よかった、仲間が居て。
「ねぇ〜、どっか痛いの?大丈夫?」
「はいはい、いいですよ。ケガしてませんから」
ジローさんが俺の浴衣を引っ張って伺ってきたので掌についた砂を払いながら言った。
「ひよ、シャンと、しててカッコいいね」
大丈夫って事が伝わった途端に、俺の姿をまじまじと見て会話が転がる。
ホント、ジローさんて・・・。

集合場所ですこし、それぞれお喋りをした。
祭りってこともあってか気持ちが浮き足立っている。
俺と跡部さんだけが浴衣を着ている。
「浴衣持ってたんですね」と声をかけると「祭りは浴衣を着るもんだろ?」と逆に聞かれてしまった。
うん、まぁ、決まりではないだろう・・・。
チラリと周りを見回しても、女性はファッションとして好んで浴衣を着ている人は居るが男性で浴衣を着ているのは、ほんのわずかだ。
簡単な甚平姿の人は見かける。
返事に困ってたら俺の横に居たジローさんが「二人ともカッコいいし〜」と言った。
「お前も着てこれば良かっただろ?」
「持ってないから着れません〜」
跡部さんが、そうかっと言ったタイミングで集合場所での会話が終わり歩き始めた。

団体で歩くとしてもお喋りする組が自然と出来て微妙な距離を開けている。
履き慣れない下駄と服装で俺と跡部さんがなんとなく最後尾になった。
花火が上がる前に何か食べたいなっと今日もらった臨時のお小遣いの事を考えた。
歩きながらも美味しそうな匂いや元気のいい声が腹ぺこな俺たちを誘ってくる。
隣を歩く跡部さんはワイワイしたものが好きだからなのか、どこか嬉しそう。
下げられた提灯の温かい光に照らされて、そんな横顔を見て自分も少しだけ嬉しくなった。
普段から完璧な所しか見てないけど、普通に一つ上の先輩なんだなっと思った。
今日は特別だけど、特別じゃない。
そんな感じに思いながら跡部さんと話をした。

一通り見て回り、一旦解散してそれぞれに食べたいものの出店へ、食べものを買ってまた集合の約束をした。
花火を見る場所へ早めに行って、そこで食べながら待とうと言うことだ。
どうせ歩くペースも遅いので跡部さんと同じものを買いにいけば良いかと考えた。
色々見て食べたいものも一杯ある。欲しいと言えば他のメンバーがわけてくれるし。
チラリと隣の跡部さんを見る。
「お前は何食べるんだ?」と逆に先に聞かれてしまった。
「そうですねぇ」
合わせれば良いと考えてたから一つに絞ってなかったので悩む・・・。
他のメンバーは既に離れていった。いつも跡部さんと一緒の樺地も。
「じゃぁ、来い」
そう言って俺の手を掴んでズンズンと歩みを進めていく。
「随分楽しそうですね」
歩みに遅れないようにキレイに着ていた浴衣が少しだけ崩れてしまったけど、
「まぁな」っと言った跡部さんの顔をみて文句は言わない事にした。

結局、お好み焼きを買った。
歩いてるときから感じていた香ばしいソースの匂いに釣られるようにして。
豚玉とイカ玉のパックが入ったビニール袋をガザガサと言わせて他メンバーとの約束の場所へ急いだ。
その間もずっと手を繋いだまま。
人が多いからはぐれないためだ、なんとでも言い訳になる。
誰に弁解する訳でもない、沢山の人の中で自分たちを気にしている人なんて居ないのに。
皆、お祭りを楽しむ事に夢中だ。もちろん、自分たちも。

そんな折角のお祭りなのに、無理に大股で歩いたせいなのか、下駄の紐が擦れて靴擦れを起こしてしまった。
とても、申し訳ない・・・・。
言い出しづらかったが「すいません、足が痛いです」と言うと跡部さんの方が「悪かった」と謝るので驚いた。
道の端に寄って、「ハシャイで連れ回したからだ」
「そんな、楽しくて、こんななるまで気づきませんでしたから・・・」
肩を落とす跡部さんだけど、携帯を取り出して誰かに集合場所に行けないと伝えるのは流石だ。
「あぁ、俺たちは合流出来ない、適当に帰るからこっちの事は気にするな。あぁ、ここからも見えるから」
見えるとは花火の事だろう。
今居る所は道の両脇に木が生い茂ってる広場に通じる道の途中だ、正直花火は見えない。
上を見上げる俺を見て跡部さんは「ちょっとだけ我慢してコッチ」とまた手を引いた。
俺を気遣って遅い歩みで広場へ通じる道から逸れる階段に連れて行かれた。
みんな花火を見るために、コッチの道は人が全然居ない。
通っても家に帰る人がぽつぽつと居るぐらいだ。
階段の端に並んで座り、下駄の紐にハンカチを縛ってくれた。
「すいません、ハンカチ汚れちゃいますね」
頭を下げると、「ケガさせたのは俺だ、ハンカチぐらい気にするな」と。
黙り込むのが居心地悪く「お好み焼き、食べましょう」
取り出した温かいパックを手渡し、二人とも食べ始めた。
本当ならこんなはずじゃなかったのに。楽しそうだったのに俺が水を差しちゃったんだ。
なのに、俺に合わせて跡部さんも花火見れないのに。
気を利かせて一緒にココに居てくれるのに謝るのは違う気がしてなんと言えば良いのかわからない。
気が反れて美味しいはずのお好み焼きの味もよくわからない。
美味しいなっと笑う跡部さんの顔をまともに見れないでいる。

グズグズと食べ進めていると途端パッと空が明るく輝いた。
見上げても道の両サイドにある木の葉に遮られて花火の端が見えるぐらいだ。
「おい、もっとコッチ寄れ」
何でと返事を出す前に肩を跡部さんの方に引き寄せられた。
ほらっと促されるままに見上げた先には、そこだけ切り取られたように葉がなく花火が見えた。
「わぁっ」と二人とも空の花に感嘆の声を上げた。

夏の終わり、肩を寄せ合って見えないと思っていたけど二人で見上げた同じ花火。
空を照らす花に二人の笑顔も照らされた。



end.
夏ももう終わりだけどー!
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