跡日/立場 前
跡日ホスト(?)パロです。苦手な方はスルーしてください。
設定は話の中に、ネタバレ(?)になっちゃうので・・・。
あと、長くなったので前編後編でわけます。
- 立場 -
俺が働いてる所はとても華やかな場所だ。
スーツで着飾って、女性を楽しませる。
女性に合わせるのも大事だけど、本人の個性も大事だ。
売り込む部分がないと、なんの面白みもなくなってしまう。
でも、それはココのホストの仕事。
俺は彼らの仕事が円滑に行われるように酒を用意したりグラスを出す。
殆どのホストクラブにはボーイは存在しない。普通は手の空いたホスト自身がやるから。
でも、ここの店は仕事をきっちりと分担して、よりお客様に楽しんでもらえるようにボーイが居る。
俺はマネージャーの親戚で丁度アルバイトを捜していた所に湧いてきた割のいいバイトとして働いている。
そろそろ、半年になるのだろう。21歳の大学生と言う事で前半の夕方17時から夜0時過ぎまで。0時以降は後半の部には顔を出さない。
「日吉ぃ」
声のする方へ顔を向けると厨房のカウンターからフワフワ頭のジローが呼んでいた。
「もう、何ぼーっとしてるの。いつもはキビキビ働いてるのに」
「いや、一番奥の団体のお客様の羽振りが良くてビックリしてるんです」
「えー?ひよ、会うの初めてだった?」
会話を続けたかったが、出来上がった料理を冷ますのも良くないと思い中断して皿を持ってお客の元へ運ぶ。
ここはお客様を満足させるのは最高のサービスと最高の料理とお酒と、うたっているだけあって、料理もきっちりコックが居る。
コックのジローは少し俺をかまいすぎる所が有るが、付き合いやすい良い人だ。もちろん、料理の腕も最高。
料理を運び、足りないグラスを出し、氷の追加や客が帰った後の机の片付け。
普段通り仕事をしているけど、明らかに今日は仕事が多い。
先ほどから羽振りの良い団体様が色々と頼むので周りも釣られるように高い酒をあけたりしているからだ。
ホストたちも高揚してるのがよくわかる。
売り上げを引っ張る団体さんはキレイな女性が3人とホストクラブには場違いな男性が1人。
ちょうど氷の追加を入れようと机に近づいて、ホストには目配せして黒子のように存在間を消してソッと手を伸ばした。
すると突然、氷のバケツを掴むはずの手は逆に掴まれ驚いて顔を上げると暗がりの中でもわかるキレイな目をした男だった。
「あ、申し訳ありません、氷の追加をしようと思ったのですが」
俺が謝罪と共に頭を下げようとするとアゴを掴まれて顔を上げさせられてしまった。
全てが突飛で付いて行けない。ジッと見据えられ強い瞳に見つめられる。
「あの・・・」と、小さく声をあげると、フッと口端を上げた男が、
「お前、キレイな顔してるな」と言った。
「・・・・・・・」
俺がなんと返せば良いのかわからなくて黙っていると女性の隣に座っていた宍戸に手を小突かれてしまった。
「表舞台には出てこないのか?」
それはつまりホストにはならないのかって事で・・・。
「愛想笑いが出来ないので、俺にはホストは無理です。お声ありがとうございます」
ふーんっと男の声、手も外れたのでペコリと頭を下げて厨房の方へそそくさと引っ込んだ。
笑顔のジローが「なんか絡まれてたね」っと何故か嬉しそうに言ってくる。
面倒なので氷の追加を黙って用意し、今度は掴まれないようにっと思ったら優しい宍戸が近寄ってきた俺の手から氷のバケツを受け取ってくれた。
ありがとうございますっと小声で言って次の仕事に取りかかる事に。
チラリと盗み見えた男の目が忘れられない。
忘れられないも何も、忘れるほど期間も空けずに男はまたやってきた。男一人だけで3日に一度は顔を出している。
今日も男は来てホストと酒を飲んでいる。
何が楽しくて男に囲まれて酒なんか飲んでんだか、実に理解出来ない。それとも、そう言った嗜好の持ち主なんだろうか?
今日は料理を頼む客が少ないからなのかジローが俺の定位置であるフロアと厨房の中間の壁際に一緒に居る。
「ねぇ、ひよは跡部の事嫌いなの?」
跡部とは、あの男の事だ。
ホストに呼ばれているのを聞いて俺は名前を知っているが、普段厨房に居るジローが何故名前を知っているんだろう。
疑問に思っていると彼は言葉を続けた。
「俺さ、跡部はひよの事気に入ってんの、だから来るのって思うんだぁ」
「どう気に入ってるってわかるんですか?」
「えぇー?」
勿体つけるようにジローは俺を見てニヤニヤした表情を浮かべた。
「だって、ひよに会いにこの時間に来てるんだろうしぃ」
「なんで、それで」
「だって、今までは後半の部でしか来なかったのに、最近は早い時間に来てるんだもん。前半と後半でこの場所の違いは日吉が居ない事しかないよ」
俺を気に入っているというジローの推測があっていないとは思うが。彼が言う事が本当なら跡部は今までも何度か午後の部には顔を出していたということか。
なら、何故、前半に来て、その上ジローが跡部の事を知っているかだ。
問いかけようと口を開いたが、その前に目の端に見えてしまった机を片付けに足を向けた。
結局、その日ジローがなんで跡部の事を知っているのかは聞き出せなかった。
まぁ、いい。俺には関係ない事だ。ただいつも通り仕事をまっとうするのみ。
いつだって黙々と片付けや掃除をする。
今日は何故かホストをつけずに独り酒をしている、ホストクラブでホストをつけないなんて、果たしてそんな事が許されるのかわからない。
でも、現に跡部はやっている、席に酒の追加はないかとのぞきに行くと跡部に「ちょっと座れ」と促された。
「俺の、仕事じゃないんですみません」と頭をさげた。
そのタイミングを狙って手を引っ張られて結果的に言われた通りに席についてしまった。
無理矢理で驚いたが、客を睨むわけにも行かないのでしかたがなく大人しく座った。
早く用件を聞いて終わらせた方が良いと判断しての事だ。
「お前、愛想笑いできるじゃないか」
「・・・・」
予想してないことを言われてジッと顔を見返してしまった。
「いつもお客に愛想笑いしてるだろ」
「・・・・まぁ、ホストではないけど一応お客様なんで少しぐらいは・・・」
客商売なんだから、ムスッとした顔で仕事をするわけにもいかないのが普通だ。
それとも、跡部は俺が愛想笑いも出来ない奴だと思っていたんだろうか。なんだかとても舐められているような気になった。
口には出さないがムッとした顔を浮かべていたのか跡部の指が眉間に触れた、まるで眉間のしわを伸ばすように触れられる。
「もぅ、なんですか」
咄嗟に普段の砕けた言葉遣いが零れてしまった、しかも手を払いのけてしまった。
謝ろうとしたら先に跡部の方から「悪かったな」っと言われてしまって、どうすれば良いのかわからない。
勝手に席を外れるのも変な気がして黙って座ったままで居ると跡部の手が伸びてきて俺の手をつかみあげた。
びくりと身体を強張らせると、また跡部が「ごめん」言い戻るように言ってくれた。
なんだか跡部の反応が気になって後ろ髪引かれるが、またもどうすれば良いのかわからないので言われるままに席を立った。
どこか浮かない顔を浮かべた跡部はいつもの自信に満ちた顔とは掛離れていて、とても、気になった。
end.
長くなったので続きます。
設定は話の中に、ネタバレ(?)になっちゃうので・・・。
あと、長くなったので前編後編でわけます。
- 立場 -
俺が働いてる所はとても華やかな場所だ。
スーツで着飾って、女性を楽しませる。
女性に合わせるのも大事だけど、本人の個性も大事だ。
売り込む部分がないと、なんの面白みもなくなってしまう。
でも、それはココのホストの仕事。
俺は彼らの仕事が円滑に行われるように酒を用意したりグラスを出す。
殆どのホストクラブにはボーイは存在しない。普通は手の空いたホスト自身がやるから。
でも、ここの店は仕事をきっちりと分担して、よりお客様に楽しんでもらえるようにボーイが居る。
俺はマネージャーの親戚で丁度アルバイトを捜していた所に湧いてきた割のいいバイトとして働いている。
そろそろ、半年になるのだろう。21歳の大学生と言う事で前半の夕方17時から夜0時過ぎまで。0時以降は後半の部には顔を出さない。
「日吉ぃ」
声のする方へ顔を向けると厨房のカウンターからフワフワ頭のジローが呼んでいた。
「もう、何ぼーっとしてるの。いつもはキビキビ働いてるのに」
「いや、一番奥の団体のお客様の羽振りが良くてビックリしてるんです」
「えー?ひよ、会うの初めてだった?」
会話を続けたかったが、出来上がった料理を冷ますのも良くないと思い中断して皿を持ってお客の元へ運ぶ。
ここはお客様を満足させるのは最高のサービスと最高の料理とお酒と、うたっているだけあって、料理もきっちりコックが居る。
コックのジローは少し俺をかまいすぎる所が有るが、付き合いやすい良い人だ。もちろん、料理の腕も最高。
料理を運び、足りないグラスを出し、氷の追加や客が帰った後の机の片付け。
普段通り仕事をしているけど、明らかに今日は仕事が多い。
先ほどから羽振りの良い団体様が色々と頼むので周りも釣られるように高い酒をあけたりしているからだ。
ホストたちも高揚してるのがよくわかる。
売り上げを引っ張る団体さんはキレイな女性が3人とホストクラブには場違いな男性が1人。
ちょうど氷の追加を入れようと机に近づいて、ホストには目配せして黒子のように存在間を消してソッと手を伸ばした。
すると突然、氷のバケツを掴むはずの手は逆に掴まれ驚いて顔を上げると暗がりの中でもわかるキレイな目をした男だった。
「あ、申し訳ありません、氷の追加をしようと思ったのですが」
俺が謝罪と共に頭を下げようとするとアゴを掴まれて顔を上げさせられてしまった。
全てが突飛で付いて行けない。ジッと見据えられ強い瞳に見つめられる。
「あの・・・」と、小さく声をあげると、フッと口端を上げた男が、
「お前、キレイな顔してるな」と言った。
「・・・・・・・」
俺がなんと返せば良いのかわからなくて黙っていると女性の隣に座っていた宍戸に手を小突かれてしまった。
「表舞台には出てこないのか?」
それはつまりホストにはならないのかって事で・・・。
「愛想笑いが出来ないので、俺にはホストは無理です。お声ありがとうございます」
ふーんっと男の声、手も外れたのでペコリと頭を下げて厨房の方へそそくさと引っ込んだ。
笑顔のジローが「なんか絡まれてたね」っと何故か嬉しそうに言ってくる。
面倒なので氷の追加を黙って用意し、今度は掴まれないようにっと思ったら優しい宍戸が近寄ってきた俺の手から氷のバケツを受け取ってくれた。
ありがとうございますっと小声で言って次の仕事に取りかかる事に。
チラリと盗み見えた男の目が忘れられない。
忘れられないも何も、忘れるほど期間も空けずに男はまたやってきた。男一人だけで3日に一度は顔を出している。
今日も男は来てホストと酒を飲んでいる。
何が楽しくて男に囲まれて酒なんか飲んでんだか、実に理解出来ない。それとも、そう言った嗜好の持ち主なんだろうか?
今日は料理を頼む客が少ないからなのかジローが俺の定位置であるフロアと厨房の中間の壁際に一緒に居る。
「ねぇ、ひよは跡部の事嫌いなの?」
跡部とは、あの男の事だ。
ホストに呼ばれているのを聞いて俺は名前を知っているが、普段厨房に居るジローが何故名前を知っているんだろう。
疑問に思っていると彼は言葉を続けた。
「俺さ、跡部はひよの事気に入ってんの、だから来るのって思うんだぁ」
「どう気に入ってるってわかるんですか?」
「えぇー?」
勿体つけるようにジローは俺を見てニヤニヤした表情を浮かべた。
「だって、ひよに会いにこの時間に来てるんだろうしぃ」
「なんで、それで」
「だって、今までは後半の部でしか来なかったのに、最近は早い時間に来てるんだもん。前半と後半でこの場所の違いは日吉が居ない事しかないよ」
俺を気に入っているというジローの推測があっていないとは思うが。彼が言う事が本当なら跡部は今までも何度か午後の部には顔を出していたということか。
なら、何故、前半に来て、その上ジローが跡部の事を知っているかだ。
問いかけようと口を開いたが、その前に目の端に見えてしまった机を片付けに足を向けた。
結局、その日ジローがなんで跡部の事を知っているのかは聞き出せなかった。
まぁ、いい。俺には関係ない事だ。ただいつも通り仕事をまっとうするのみ。
いつだって黙々と片付けや掃除をする。
今日は何故かホストをつけずに独り酒をしている、ホストクラブでホストをつけないなんて、果たしてそんな事が許されるのかわからない。
でも、現に跡部はやっている、席に酒の追加はないかとのぞきに行くと跡部に「ちょっと座れ」と促された。
「俺の、仕事じゃないんですみません」と頭をさげた。
そのタイミングを狙って手を引っ張られて結果的に言われた通りに席についてしまった。
無理矢理で驚いたが、客を睨むわけにも行かないのでしかたがなく大人しく座った。
早く用件を聞いて終わらせた方が良いと判断しての事だ。
「お前、愛想笑いできるじゃないか」
「・・・・」
予想してないことを言われてジッと顔を見返してしまった。
「いつもお客に愛想笑いしてるだろ」
「・・・・まぁ、ホストではないけど一応お客様なんで少しぐらいは・・・」
客商売なんだから、ムスッとした顔で仕事をするわけにもいかないのが普通だ。
それとも、跡部は俺が愛想笑いも出来ない奴だと思っていたんだろうか。なんだかとても舐められているような気になった。
口には出さないがムッとした顔を浮かべていたのか跡部の指が眉間に触れた、まるで眉間のしわを伸ばすように触れられる。
「もぅ、なんですか」
咄嗟に普段の砕けた言葉遣いが零れてしまった、しかも手を払いのけてしまった。
謝ろうとしたら先に跡部の方から「悪かったな」っと言われてしまって、どうすれば良いのかわからない。
勝手に席を外れるのも変な気がして黙って座ったままで居ると跡部の手が伸びてきて俺の手をつかみあげた。
びくりと身体を強張らせると、また跡部が「ごめん」言い戻るように言ってくれた。
なんだか跡部の反応が気になって後ろ髪引かれるが、またもどうすれば良いのかわからないので言われるままに席を立った。
どこか浮かない顔を浮かべた跡部はいつもの自信に満ちた顔とは掛離れていて、とても、気になった。
end.
長くなったので続きます。
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