box。

- 俺だって -


僕の部屋に戻ると綾小路が不機嫌そうにソファに座ってた。
なんだかんだと理由を付けて家に連れてきたけど、納得してきたんじゃなかったの？
さっきお茶を用意しに席を外すまでは機嫌いいとまでは言わないけど、確実に不機嫌ではなかったはずなのに。
山の天気みたいにコロコロ変わり過ぎだよ。
気まぐれな女性は許せるけど、気まぐれな綾小路ってのは許せないな。なんでだろ。
「なに、どうしたの？」
一応、聞いてやる。僕って本当に天使みたいに心の広い男だ。
前の机にお茶を置いて彼の隣に座り込んだ。
膝上の手がギュッと握り込まれてる。ホントなんなの？
怒ってるのかどうなのかも読み取れない。もっと感情をハッキリと示して欲しい。
「もう、よくわかんないんだから。あ、気分変えてテレビでも見る？今の時間は何やってるっけなー」
机に置かれたリモコンに手を伸ばすと、僕の手を遮るように掴まれた。
「ちょっとなに？」
顔を覗き込むと、綾小路直々にキスをされた。
マスクもちゃんとズラして、僕への態度を改めてサービスしてくれるの？
突然の行動に思考が付いてこない。驚いて綾小路の顔を見つめる。
何も言わずに綾小路がまた顔を寄せてキスをしてくる。
んー、綾小路からってのは珍しいし、好きにさせとくか。
ちゅっと可愛らしい音をさせて離れたと思うと、シャツのボタンに手をかけてきた。
「盛ってんの？」
「黙れ」
僕の一言に鋭い目で睨んでくる。ホントなんなの？

シャツを脱がせ終わると首元にキスマークがつけられる。
「ちょっと」
痕なんか付けたら、可愛らしい女の子が寄ってこなくなっちゃうじゃん。
僕は綾小路の事好きだけど、自由で居たいんだけど。
特定の人物に束縛されるのは苦手なんだって。
まぁいいけど、珍しい君の姿が見れてるわけだし。
キスマークの有る辺りを手で撫でると少し下へ向かった綾小路がぺろりと僕の胸をなめる。
ホントどうしたんだか。猫みたいにペロペロなめられても。
「ねぇ、僕、胸は感じないんだけどさぁ。どうせならこっち舐めてよ」
と、ベルトを緩めて前をくつろげると苦々しげな顔を浮かべながらも素直に綾小路は立ち上がり始めたソレに指を絡めて先っぽをくわえた。
ぬるりとして熱い口内。うん、いいね。気持ちいい。
「んっ、・・・ふ・・・」
苦しそうにくわえながら舌がソレを撫でる。合間に零れた声も凄く感じる。
「ホント、今日の君は・・・」
ソッと柔らかな髪を撫でてやると下半身に顔を埋めていた綾小路が上体を起こした。
目の前に口元がイヤラシく濡れた綾小路がニヤリと口元を歪めた。
なにそれ、エロい顔しちゃって。
口端に零れた唾液か何かを赤い舌で舐めとり、ギリギリまで僕の顔に近づいて、
「早くそのぶっ太い、お注射頂戴」

「・・・・・・・・・・・・へ？」
間抜けな顔で綾小路を見返すとおでこを思い切り叩かれた。
「いっ、て！！！・・・・ちょ、どうして君が昨日見たAVのセリフを・・・！？」
殴られた事にも驚いたが、何故、そのセリフを。昨日見たAVは淫乱ナースモノだったはず。
「るさい！」
「いつ見たの！？人のプライバシーを！」
「偶然だ！見たくてみたんじゃない」
「偶然て何！？僕の部屋の盗聴でもしてたわけ？」
「そんな犯罪みたいな事するか！」
僕に釣られたのか珍しく声を荒げた綾小路が指さしたのはテレビのリモコン。
「待ってる時に座り直したら、下にそれがあって、テレビがついて・・・」
それで見てしまった、と。それは不可抗力だけど、だからってAVと似たような事しなくても・・・。
盗み見た表情は恥ずかしそうで、ちょっと可愛いな、おい。
ふぅっと大きく息を吐いて髪を撫でてやろうと手を伸ばしたら振り払われた。
前言撤回、可愛くない！僕のこの手の可哀想な事！
「怒ってるの？」
僕の問いかけに答えないで唇を噛んだ綾小路の顔、それって、
「妬いたのかい？」
今度は予想に反して、僕の問いかけに驚いた顔をして「そんなことない」と力なく答えた。
君ってば、その反応は反則でしょ。

ふぅっと再度大きく息を吐いて、口には出さないけど可愛いなっと。
「そっかそっか・・・・ふーん」
「その顔やめろ、キモイ」
「キモイって何よ、僕の顔は美しいだろ？それよりさ、続きしてよ。僕、勃ったままなの」
嫌そうな顔をしたので、ソッと耳打ちしたら、さっきより痛い拳が飛んできた。
もう少し素直になりなよ・・・・。


end.
風間くんが耳打ちしたのは「どうせならナースごっこ続ける？」です。
デリカシーねぇ！