box。

- 君の横顔 -


（H side）
跡部さんが、俺の方を見てくる。
いや、見ると言うよりも鑑賞しているような目に感じるのは俺の気のせいか？
目の前では黄色い球を打ち合う仲間たち。
何ら変わりない日常の中のはずなのに・・・。
彼の方を見れば目が合ってしまうから、気恥ずかしくて顔が動かせない。
ただ真っ直ぐに目だけでボールの動きを追ってる。
早く跡部さんの気がそれないかな。
キュッとラケットを持つ手に力が入った。

（A side）
日吉を見てる。見るってより鑑賞に近いのかもしれない。
こいつはあまり自分の良さをわかってない。
特に俺は日吉の横顔を見るのが好きだ。
や、正面から見られるのも好きだけど、横顔がキレイだなって。
おでこから鼻筋にかけてのラインが良いな。
あと、さらさらの髪の毛で覆われててもわかる、頭の形が。
それから、俺の視線に気づいて恥ずかしくて頬を少し染めてるのが。
いつも通りの毎日の中で知って行く日吉の一つ一つが愛おしい。
パーンッとボールが高く跳ね上がる音がして交替を知らせる。

（H side）
なんだか、今日はいつも以上に見られてる気がする。
俺が自意識過剰なのか？
部活中もずっと見てたのに今も横から視線がささる。
何かしたのかな、別に普通だったと思うんだけど、部活も真面目に・・・。
「ひよ、顔赤いよ？」
「・・・・なんでもないです」
ジローさんが俺の顔を隣から覗き込んでくる。
くそう、今日は寝てても起こさないから黙っててくれ。
「ホントだー、なんだよ、言えよ」
ニヤニヤと向日さんまで・・・・。

（A side）
今日はいつも以上に見ていたい。気にしてるのがよくわかる。
普段を装ってるつもりだろうけど、俺以外のメンバーにもバレバレ。
ジローと岳人が日吉をからかってる。
この二人は日吉の事を気に入ってるみたいだからよく絡んでる。
別にやめろとは言わないけどな。
日吉もなんだかんだ言ってもこの二人の事は嫌いじゃないみたいだし。
「おまえら、早く着替えて帰れ」
俺の一声で「へーい」と気のない声が返ってきた。

（H side）
みんな帰って行った。俺は自然と最後に残るように。
跡部さんと二人の部室で意を決して話かけた。
「あの、なんか今日、ずっと見られてるような気がしてるんですけど、俺の・・・・気のせいですか？」
そう言うとなんだか嬉しそうに彼が「見てたぞ」と。
あっさり認めたけど、何が理由で・・・やっぱ俺なにかしたのか？
考えてる俺の所に跡部さんが近づいてきてロッカーを背に挟まれた。
「え？」
顔を上げると彼の顔が近くに・・・！

（A side）
戸惑ってる日吉に触れるだけのキスをした。
緊張が触れた唇から伝わってくる。
顔をはなすと、目の前の赤い顔が何か言おうと口を開いてすぐに閉じた。
「なんだ？聞けよ」
「っ、なんか今日の跡部さんよくわからないです。見てきたり突然キスしてきたり」
「好きな奴見ちゃいけないのか？あと、好きな奴にキスしたいなって思ったからしたんだ、悪いかよ」
顔を隠すように俯いた日吉の手が俺の手をつかんで「悪くないです」と小さな声で言った。
嬉しくて笑って前髪にキスをした。
驚いてパッと顔を上げた日吉に、
「ごめん、もう一回キスしていいか？」と聞けば掴まれてた手に力が入った。

（H side）
俺の反応に嬉しそうに笑って、また顔が近づいてくる。
あ。目を閉じた時の跡部さんの睫毛、長い、キレイだな。
自分もソッと目を閉じた。



end.
はずっ