忍者ブログ

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

古キョン/今日という日。

キョンくん視点。
社会人の未来設定。30歳ちょい過ぎぐらい。
意を決し、告白してみた。
若干、事後描写あり(ヤってるところは書いてません。)
隣でグースカ眠る彼の寝顔は穏やかだ


- 今日という日 -


薄いカーテン越しに日差しが零れ入ってくる
布の青を身に纏った光が部屋を落ち着いた雰囲気に見せる
昨夜は雨が降ったから少しだけ湿っぽい空気を漂わせている
静止した物たちも眠っているのだろう、その中でしっかりと働く時計や冷蔵庫のモーター音がする
外から朝刊の配達と思われるバイクの音、ぶくっぶっぶっ……
隣の彼は穏やかに寝息をたてた
枕に半分ほど顔を埋めて苦しくないのだろうか
長い前髪を払ってやる、学生のときから変わらないサラリと垂らした前髪。
腰が怠い、言い難い気持ちと痛みがぐるりと取り囲むような重みが残っている
でも、イヤではない
何年も良き友人を演じ続けてきたが昨夜それも簡単に崩れてしまった
十代の無鉄砲さでもない、二十代の気まぐれや好奇心でもない
もしかしたら、三十代の諦めだったのかもしれない
自分たちの友好関係が崩れてしまいそうな焦りもあったのだろう


酒に酔った勢いで一線を越えてしまおうと思った俺はズルい奴だ
話がしたいっと段取りして普段から行く飲み屋のカウンターに腰を下ろした
でも、いざ大量に飲んだ酒も目の前の緊張のせいか、全く役に立たなかった
あのとき、酔った振りをすれば恥ずかしさは半減したのかもしれない
結局はバカ正直に「好きだ」なんて、使い古された台詞を吐いていた
声に出した瞬間、あぁ、やっぱり自分は好きなんだと再確認して彼からの返事を聞く前になんだか嬉しくなった
拒絶される恐怖が無かったわけではないが、この伝えられたという幸せを噛みしめていたかった
照れ笑いのような、いや、苦笑いみたいな微妙な顔を浮かべてグラスに入ったぬるいビールを飲んだ
のどを通ったビールと不安が一緒に身体に回る、幸せなんて一瞬のうちに消え去ってしまった
不安にとりつかれてしまえば早い、ドッと後悔の念が押し寄せ今にも押しつぶされそうになる
目の奥がツンとする、誤魔化す為に鼻をすすって指でかいた
目の前の彼は間抜けな顔で俺を見つめていた
「…………き、気持ち悪いよな。すまん。返事はいい、忘れろ。ホント……すまん。」
逃げるように席を立った
周りのお客は他人に興味ないのだろう、普通だ
いまだに気の抜けた顔をする彼を見下ろす形で「これで足りなかったら払っといて」とお金を机においた
こんな時でさえ律儀に会計を気にする自分がうっとおしい
店から出ると曇っていて星なんて一つも見えず肌寒く感じた
携帯の電源を切って歩き出す
ヒュルリと通りの道を風が吹いていった、肩を落とし視線も下げる
抵抗もなく簡単に涙がこぼれた、服にシミを作り、ポツポツと面積を広げていく
最後にみた彼はやはりぼんやりと状況のつかめない表情をしていた
考えれば考えるほど涙がでた、ついには嗚咽もこぼれだした
「うっ……」
なんてバカなことをしてしまったのだろう
彼の顔を見る前から答えなんかわかっていたはずだ
何年も友人を続けてきた、それを否定してでも気持ちを伝えたいだなんて…
「バカだなぁ……」
今度は言葉になってでた言葉に余計に打ちのめされる

どれほどブラブラと歩いていたのだろう?
重い足取りだったから時間の割には距離が全く稼げていないと思う
携帯の電源を切っているので時間をみることもできない、雨だけは降り出さなかったのはラッキーだ
ぐずりと痛む胸を撫でて点滅する街灯の下にさしかかった所を急に後ろから手を捕まれ、息が止まり、振り返って相手をみたら再度息が止まった
「こ、いずみ……」
走っていたのか、はぁはぁと息荒く彼はじっと見据えてくる
「……ちょっ、放せっ!」
掴まれた手を振って逃れようとした、押しのけようと伸ばしたもう片方の手も掴まれた
「っ!ホント、放せ!!やめろっ!」
自分にしてはヒステリックに声を上げて拒む、モガくが手をあげれば彼の手も一緒にあがる
「ヤめ……っ!!やめろって……」
引いたはずの涙がこぼれだした、無気力にだれた両腕
「キョンくん…」
放された片方の手で涙を拭った、もう、逃げる気も起きない
ボヤケた視界で彼が間近に迫ってきているのがわかった
あっ、と思ったら触れた唇
ゆっくりと距離をあけた彼に「なんで?」と声が裏がえる
「僕もあなたが好きだから」っと苦笑いみたいな変な顔をした、キレイな顔がもったいない。

「…………冗談かよ?」
「……バカにしてるんですか?本当です、泣きやんでください」
ね?と情けない彼の声は本物だろう
未だ泣きやまない俺の涙を親指の腹で優しく拭ってくれる彼の温もり
「う…」
「だから、何が不満なんですか、両想いだったからいいじゃないですか。お願いですから泣き止んでください。僕が困ります」
「古泉っ、…」
「……なんですか?」
「嬉しくて…涙が、止まらなっ……」
「………そうですか。僕も嬉しいですよ」
そう言った彼も嬉しそうに顔を崩して笑った


床に落ちていた携帯のアラームが静かに鳴り出した
「う、んっ……」
うなる声、手探りで携帯を探している彼に携帯を渡してやった
ディスプレイを開き、眠そうな顔でアラームを止めた彼は欠伸をしながら身体をこちらに転がしてくる
大きな目で俺を見つめて「おはようございます。冗談じゃなくてよかった」っと悪戯っぽく笑った
「あぁ。」
「出来れば、僕から告白が出来た方が格好良かったのですが、残念です。」
自分もつられるように笑った



end.
PR

この記事にコメントする

お名前
タイトル
メール
URL
コメント
絵文字
Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
パスワード

カウンター

プロフィール

HN
ナオ太。
連絡先
kuroyagi_yuubin☆yahoo.co.jp
(☆→@に変更)

リンク