風→綾/ランチをご一緒に
学怖で、学生のお弁当の話。
短いです。モグモグするの可愛い。
綾小路くん素っ気ないです。
- ランチをご一緒に -
先日、席替えをして嬉しいことが一つ。窓際の前から二つめ。
チャイムを待っていた空腹の学生たち、ガヤガヤと教室が五月蝿くなる。
開けられた一杯の弁当箱で臭いが充満するのも早い。
僕の前に顰めっ面の綾小路が無言でやってくる。
「やぁ」と声をかけて、毎度不在の前の席をチラリと見て律儀に「彼は?」と聞かれた。
「居ないよ、いつも部活の子の所にいってるからね」
僕の前に座る男子は運動部で昼時間が来るのが待ち遠しくって30分前から時計を見上げている。
一番前なのに、欲望に一直線の彼はガタイも良く厳ついけど少しだけ可愛らしい。
それを先生に注意されてるのを眺めたりもする。
「そう」っと短く言って窓を少しだけ開ける。スルリと空気が滑るように入ってきた。春先の温かい風が髪の毛を弄んだ。
椅子を反対側に向けて綾小路が腰を下ろすのを見てから、僕も自分の弁当箱を取り出す。
席替えをして嬉しいことは綾小路が呼ばなくても窓際の席に寄ってくること。
鼻の良い彼は混ざり合う昼食の時間を僕と過ごしてくれる。
ご飯を口に運びながら、気まぐれに僕の話に耳を寄せて興味なさそうな声だけどたまに返事を返してくれる。
声に出さなくても綾小路は慣れた相手には表情に出すので会話は成立する。
「ね、おいしぃ?」
口の中にちょうどご飯を入れた綾小路は口をモグモグさせながら僕の方をチラリと見た。
声には出さないけど、返事を表情から読み取って「へぇ」と言った。
綾小路は弁当を食べ終わるのが遅い。いつまでも咀嚼してるので僕が食べ終わっても半分も片付いていなかったりする。
少しずつ減る弁当箱の中を覗き込んで僕は休み時間にかっておいた生温いパックジュースを飲む。
百円のパックジュースなんてすぐに飲み終わって、最後のゴクリからいつまでもズズズッと音を立てると嫌そうな顔を向けられる。
「ねぇ、それ頂戴?」
それ頂戴と言ったが、別に何でも良い。食べかけの物を指差して、お願いをする。
「・・・・お前、いつも人の物欲しがるな」
「成長期だからぁ?」
人の物が欲しいんじゃなくて、綾小路の物が欲しいんだってとは言わない。
顔に卑しいなって書いてあるけど、気にしない。
僕は君に対してはとても卑しく、貪欲なんだ。
無言で差し出された弁当箱。
「いやー、いつも悪いねぇ」と口を開けて待っても一向に何も入ってこない。
あーんっと声に出してやったけど、眉を寄せて僕を見る。
「自分で食え」
「えぇ、お箸、もう箸入れに入れちゃった」
「じゃあ、食うな」
逃げて行く弁当を追い「ごめんー」っと摘みやすいオカズをヒョイッと口に入れる。
噛みながら「ありがとう」っと言ったら「食べながら喋るな」と怒られた。
end.
こう、どうでもいい空気感の話は心地よい。
短いです。モグモグするの可愛い。
綾小路くん素っ気ないです。
- ランチをご一緒に -
先日、席替えをして嬉しいことが一つ。窓際の前から二つめ。
チャイムを待っていた空腹の学生たち、ガヤガヤと教室が五月蝿くなる。
開けられた一杯の弁当箱で臭いが充満するのも早い。
僕の前に顰めっ面の綾小路が無言でやってくる。
「やぁ」と声をかけて、毎度不在の前の席をチラリと見て律儀に「彼は?」と聞かれた。
「居ないよ、いつも部活の子の所にいってるからね」
僕の前に座る男子は運動部で昼時間が来るのが待ち遠しくって30分前から時計を見上げている。
一番前なのに、欲望に一直線の彼はガタイも良く厳ついけど少しだけ可愛らしい。
それを先生に注意されてるのを眺めたりもする。
「そう」っと短く言って窓を少しだけ開ける。スルリと空気が滑るように入ってきた。春先の温かい風が髪の毛を弄んだ。
椅子を反対側に向けて綾小路が腰を下ろすのを見てから、僕も自分の弁当箱を取り出す。
席替えをして嬉しいことは綾小路が呼ばなくても窓際の席に寄ってくること。
鼻の良い彼は混ざり合う昼食の時間を僕と過ごしてくれる。
ご飯を口に運びながら、気まぐれに僕の話に耳を寄せて興味なさそうな声だけどたまに返事を返してくれる。
声に出さなくても綾小路は慣れた相手には表情に出すので会話は成立する。
「ね、おいしぃ?」
口の中にちょうどご飯を入れた綾小路は口をモグモグさせながら僕の方をチラリと見た。
声には出さないけど、返事を表情から読み取って「へぇ」と言った。
綾小路は弁当を食べ終わるのが遅い。いつまでも咀嚼してるので僕が食べ終わっても半分も片付いていなかったりする。
少しずつ減る弁当箱の中を覗き込んで僕は休み時間にかっておいた生温いパックジュースを飲む。
百円のパックジュースなんてすぐに飲み終わって、最後のゴクリからいつまでもズズズッと音を立てると嫌そうな顔を向けられる。
「ねぇ、それ頂戴?」
それ頂戴と言ったが、別に何でも良い。食べかけの物を指差して、お願いをする。
「・・・・お前、いつも人の物欲しがるな」
「成長期だからぁ?」
人の物が欲しいんじゃなくて、綾小路の物が欲しいんだってとは言わない。
顔に卑しいなって書いてあるけど、気にしない。
僕は君に対してはとても卑しく、貪欲なんだ。
無言で差し出された弁当箱。
「いやー、いつも悪いねぇ」と口を開けて待っても一向に何も入ってこない。
あーんっと声に出してやったけど、眉を寄せて僕を見る。
「自分で食え」
「えぇ、お箸、もう箸入れに入れちゃった」
「じゃあ、食うな」
逃げて行く弁当を追い「ごめんー」っと摘みやすいオカズをヒョイッと口に入れる。
噛みながら「ありがとう」っと言ったら「食べながら喋るな」と怒られた。
end.
こう、どうでもいい空気感の話は心地よい。
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