レグリ「自転車」
レッドさんが子供の頃を思い出す話。
- 自転車 -
子供の頃、グリーンが泣いているのを見てしまったことがある。
基本的にはお喋りで明るい性格。その時の泣き方は普段見ているものと違ったから印象的だった。
僕は、何歳ごろだったか、誕生日祝いに自転車を買ってもらった。
子供用の小さな自転車で、でも、後ろに輪っぱの付いていないもの。当時の自分からしたら、随分と大人っぽいものをもらったと思った。
でも、そのとき僕は家の中でお菓子についてくるポケモンの指人形で遊ぶのが大好きだったので、プレゼントを貰ってすぐに自転車に乗れたわけじゃない。
ある日、いつものようにグリーンが僕の家に遊びに来て、玄関横に置いてある自転車を見て、「あれ、お前の?」と、聞いてきた。早く二人で指人形で遊びたかった僕は、素っ気なく答えただけだった。
各自持ち寄ったそれぞれの指人形が集まる。指にはめるには、指は細くぶかぶかの人形。人差し指と親指で「グリーン、これ貸して」と、黄色い人形をつまんだ。
「うん」と、返事をした時から彼は、心ここに在らず。僕が、一人で人形を並べたり倒したり、頭の中の物語を説明してもボンヤリとした返事ばかり。
彼は、その日、あまりははしゃいだり、笑ったりが少なかったように感じたのは、夕食時に母に「今日はグリーンくんと何して遊んだの?」と聞かれた時だった。
おや?っと思った。彼はなんで、あまり楽しそうじゃなかったんだろう?
気分が乗らなかったのか、指人形に飽きてしまったのか?
翌日、またいつものようにグリーンが僕の家に遊びにきた。
どこか落ち着かない雰囲気で、僕を前にして動かず言葉を探していた彼が「自転車貸して」と、握った手をズィッと差し出してきた。手を寄せ受け取ると、いつも僕が借りている黄色い人形が手の中に転がった。
「コレやるから」と、彼はモゴモゴと、口の中で喋る。
貰わなくったって、彼はいつも、「貸して」とお願いすれば貸してくれていた僕の大好きな黄色い人形。沢山の人形が混ざっても、面倒だろうときっちり、各自のを持ち帰っていた。
確かに彼の一番好きなお気に入りのものではないけど、買ってもらったものを大事にする彼にしては珍しく戸惑ってしまった。
「別に・・・」
曖昧な返事を返すと、彼は嬉しそうに「じゃぁ、借りるな!」と、急に元気になって外へ出て行ってしまった。え、指人形で遊ばないの?一緒に遊ばないの?と、びっくりと悲しいが混ざった僕は、少しの間、手の中の人形を見つめていた。
一人で遊んでも、グリーンがいないと、つまらない。
いつもお母さんが二人で遊びなさいって、言う。どこへ行くにも二人セットな僕らだと思っていた。彼は一人でも行ってしまうんだなっと、床に転がった指人形を見つめて、考えた。
やっぱり、この遊びに飽きちゃったのかな。僕が好きな遊びだから言いづらかったのかな。
普段の遊びだと、ポケモンたちの楽しそうな声が聞こえてくるような気がして、とても幸せな時間なのに、彼が居ないだけで、違うのか。
遊ぶこともせず、時間が過ぎ、外がオレンジ色になった。
慌てて彼を探しに行くと、裏の広場で自転車の練習をしていた。何度も転んだのか、両膝が擦り傷だらけで、服も土まみれだ。夕方の色に赤く照らされた彼の頰が濡れていた。
基本的にはお喋りで明るい性格の彼。一緒にいる時間が長いから、泣いている所も何度も見たことがあるのに、その時の彼は、悔しそうに静かに泣いていた。
僕も自転車に乗る練習した時に転んで、痛くてわーっと泣いた時を思い出した。自分の時は、泣いたら母が抱きしめてくれた。「痛かったね、でも、さっきより長く乗れてたよ」優しい声と手で撫でてくれた。
グリーンは、わーっと泣いても抱きしめてくれる人がいない練習時間だから、一人で泣いたんだと、思った。いつもの彼ではない、別人の彼を見た。
乱暴に顔中を袖で拭いた彼は、ぱっぱと、服を叩いて身なりを整え、こちらを振り向いた。
「なんだ、レッド? 一人じゃ寂しくなったか?」
僕に声をかけたグリーンはいつも通りの顔で、いつも通りの態度だった。
「もう、遅いから帰ろう」と、駆け寄って、ぎゅーっと、抱きつくと、「悪かったな一人にして」と、言い、二人で一緒に帰った。
家に着くと、土だらけのグリーンは僕の母に見つかり、服を脱がされ、二人でお風呂で遊んで夕食を食べ終わった頃に、彼の姉が迎えにきて帰って行った。
一緒に風呂に入って、夕食を食べている間も、変わらない彼だったので安心した。
翌日も自転車を貸してと言われ、僕は了解をして大好きな黄色い指人形を返した。
「また貸してくれれば良いから」
「何? お前、こいつ好きじゃん」
「グリーンと遊ぶからいつも、貸してくれるし、一人じゃ意味ないから…」
ふーん?と、返事をしてグリーンは今日も、自転車の練習をしに広場へ。僕も練習すると、一緒に行った。昨日だいたい、コツを掴んだのか彼はすぐに自転車に乗れるようになって、ほとんど僕の練習に付き合わせてしまった。
少し乗れるようになったからって、優位に立った口ぶりでコツを話す彼は、笑っていた。
外が夕方の色に包まれたので、家に帰る。自転車を引きながら、横を歩いている彼を見ると、昨日の泣いてた顔が嘘みたいだった。家に帰り、今日は僕の方が土だらけで、昨日同様、二人で風呂に入り、温かな夕食を食べ、彼のお迎えが来て。
---
すみません。終着点なく、書きたいとこだけ書いた。
いつものわーって泣くのって、他者がいる時の泣いてるアピールだから、一人の時のグリーンくんは静かに泣くんだろうなっと思ったのと、自転車の練習付き合ってくれる人いないだろうなって、ところで書いたので、ほんと、すみません;;;
- 自転車 -
子供の頃、グリーンが泣いているのを見てしまったことがある。
基本的にはお喋りで明るい性格。その時の泣き方は普段見ているものと違ったから印象的だった。
僕は、何歳ごろだったか、誕生日祝いに自転車を買ってもらった。
子供用の小さな自転車で、でも、後ろに輪っぱの付いていないもの。当時の自分からしたら、随分と大人っぽいものをもらったと思った。
でも、そのとき僕は家の中でお菓子についてくるポケモンの指人形で遊ぶのが大好きだったので、プレゼントを貰ってすぐに自転車に乗れたわけじゃない。
ある日、いつものようにグリーンが僕の家に遊びに来て、玄関横に置いてある自転車を見て、「あれ、お前の?」と、聞いてきた。早く二人で指人形で遊びたかった僕は、素っ気なく答えただけだった。
各自持ち寄ったそれぞれの指人形が集まる。指にはめるには、指は細くぶかぶかの人形。人差し指と親指で「グリーン、これ貸して」と、黄色い人形をつまんだ。
「うん」と、返事をした時から彼は、心ここに在らず。僕が、一人で人形を並べたり倒したり、頭の中の物語を説明してもボンヤリとした返事ばかり。
彼は、その日、あまりははしゃいだり、笑ったりが少なかったように感じたのは、夕食時に母に「今日はグリーンくんと何して遊んだの?」と聞かれた時だった。
おや?っと思った。彼はなんで、あまり楽しそうじゃなかったんだろう?
気分が乗らなかったのか、指人形に飽きてしまったのか?
翌日、またいつものようにグリーンが僕の家に遊びにきた。
どこか落ち着かない雰囲気で、僕を前にして動かず言葉を探していた彼が「自転車貸して」と、握った手をズィッと差し出してきた。手を寄せ受け取ると、いつも僕が借りている黄色い人形が手の中に転がった。
「コレやるから」と、彼はモゴモゴと、口の中で喋る。
貰わなくったって、彼はいつも、「貸して」とお願いすれば貸してくれていた僕の大好きな黄色い人形。沢山の人形が混ざっても、面倒だろうときっちり、各自のを持ち帰っていた。
確かに彼の一番好きなお気に入りのものではないけど、買ってもらったものを大事にする彼にしては珍しく戸惑ってしまった。
「別に・・・」
曖昧な返事を返すと、彼は嬉しそうに「じゃぁ、借りるな!」と、急に元気になって外へ出て行ってしまった。え、指人形で遊ばないの?一緒に遊ばないの?と、びっくりと悲しいが混ざった僕は、少しの間、手の中の人形を見つめていた。
一人で遊んでも、グリーンがいないと、つまらない。
いつもお母さんが二人で遊びなさいって、言う。どこへ行くにも二人セットな僕らだと思っていた。彼は一人でも行ってしまうんだなっと、床に転がった指人形を見つめて、考えた。
やっぱり、この遊びに飽きちゃったのかな。僕が好きな遊びだから言いづらかったのかな。
普段の遊びだと、ポケモンたちの楽しそうな声が聞こえてくるような気がして、とても幸せな時間なのに、彼が居ないだけで、違うのか。
遊ぶこともせず、時間が過ぎ、外がオレンジ色になった。
慌てて彼を探しに行くと、裏の広場で自転車の練習をしていた。何度も転んだのか、両膝が擦り傷だらけで、服も土まみれだ。夕方の色に赤く照らされた彼の頰が濡れていた。
基本的にはお喋りで明るい性格の彼。一緒にいる時間が長いから、泣いている所も何度も見たことがあるのに、その時の彼は、悔しそうに静かに泣いていた。
僕も自転車に乗る練習した時に転んで、痛くてわーっと泣いた時を思い出した。自分の時は、泣いたら母が抱きしめてくれた。「痛かったね、でも、さっきより長く乗れてたよ」優しい声と手で撫でてくれた。
グリーンは、わーっと泣いても抱きしめてくれる人がいない練習時間だから、一人で泣いたんだと、思った。いつもの彼ではない、別人の彼を見た。
乱暴に顔中を袖で拭いた彼は、ぱっぱと、服を叩いて身なりを整え、こちらを振り向いた。
「なんだ、レッド? 一人じゃ寂しくなったか?」
僕に声をかけたグリーンはいつも通りの顔で、いつも通りの態度だった。
「もう、遅いから帰ろう」と、駆け寄って、ぎゅーっと、抱きつくと、「悪かったな一人にして」と、言い、二人で一緒に帰った。
家に着くと、土だらけのグリーンは僕の母に見つかり、服を脱がされ、二人でお風呂で遊んで夕食を食べ終わった頃に、彼の姉が迎えにきて帰って行った。
一緒に風呂に入って、夕食を食べている間も、変わらない彼だったので安心した。
翌日も自転車を貸してと言われ、僕は了解をして大好きな黄色い指人形を返した。
「また貸してくれれば良いから」
「何? お前、こいつ好きじゃん」
「グリーンと遊ぶからいつも、貸してくれるし、一人じゃ意味ないから…」
ふーん?と、返事をしてグリーンは今日も、自転車の練習をしに広場へ。僕も練習すると、一緒に行った。昨日だいたい、コツを掴んだのか彼はすぐに自転車に乗れるようになって、ほとんど僕の練習に付き合わせてしまった。
少し乗れるようになったからって、優位に立った口ぶりでコツを話す彼は、笑っていた。
外が夕方の色に包まれたので、家に帰る。自転車を引きながら、横を歩いている彼を見ると、昨日の泣いてた顔が嘘みたいだった。家に帰り、今日は僕の方が土だらけで、昨日同様、二人で風呂に入り、温かな夕食を食べ、彼のお迎えが来て。
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すみません。終着点なく、書きたいとこだけ書いた。
いつものわーって泣くのって、他者がいる時の泣いてるアピールだから、一人の時のグリーンくんは静かに泣くんだろうなっと思ったのと、自転車の練習付き合ってくれる人いないだろうなって、ところで書いたので、ほんと、すみません;;;
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